第10話 竹取物語 承
どうしよう。
俺はなおも悩んでいた。
あれからかぐや姫の姿がないか探してみた。
よっぽど大事にされているのか、どこにいるのかわからない。
俺の視界に入らないとは相当だ。
だが、あいつは俺のものだ。人間たちの下に置くなんてとんでもない。
確かかぐや姫の物語の最後は天人とかいう連中がやって来て月に連れ去ってしまうのだった。
それをなぞろう。そうしよう。森人作成だ。
顔設定
耳設定
体設定
技能設定
「ランダム」
「ランダム」
「ランダム」
名前「」
性別「」
成長設定(成長速度up)
場所(竹林)
なんか場所が追加されている。竹林で生まれるという意味だったのか。
そりゃかぐや姫になっちゃうや。仕方ない。
この前の反省を生かし、顔と耳と体は適当にする。
天人というくらいだし、日本人と違う感じでも問題ないでしょう。
技能は軍勢召喚を確定で。天人の軍勢という記述があった気がするから。
大丈夫大丈夫。俺の想像力の及ぶ限りの技能はもらえるはず。
あとは空から行くのだから雲乗りと天皇の軍勢の動きを止めたんだから全体麻痺付与で。
名前は小太郎。俺の名前っぽいこれを授けよう。
性別は男。今回は回収がメインだからな。
成長設定は成長速度upが強そうだったけど、成長させてる暇はないので固定にした。
スキルだけでやっていけるさ。
そして忘れちゃいけない場所設定。大和杉樹上にしておいた。
これで俺の上に出現するはず。
頼むぞ、小太郎。
俺は確定を押した。
輝夜を生み出した時よりは消費したエネルギーが少ない。
ランダムでやるといい技能がもらえる代わりに消費エネルギーが増えるらしい。
なるほど。どちらにしても気軽にできるとは思えない。
人一人作るんだから当然だろうけれど。
俺の樹上は地上からは見えない。完全なブラックボックスとなっている。
人が現れたところで誰も気づかないだろう。
「小太郎。参上しました。ご用命を。」
彼はそう言って膝をついた。紅毛碧眼こうもうへきがんの美丈夫。どうみても外国人だ。
キャラメイク適当にしすぎたか。男キャラだから仕方ないね。
それはそうとなんだか挙動がおかしい気がする。
もっと戸惑ってもいいと思うんだが。
だって、ついさっき生まれたんだよ。言うなれば赤ちゃんだよ。
どうなってるんだ。
「あー。俺の声は聞こえているか?」
「もちろんでございます。」
忠誠心高い系だこれ。
俺、木なんだけどいいんだろうか。
まあ、敬ってくれるならありがたい。
「えーと。お前には輝夜の奪還を任せたいのだが。」
「かしこまりました!」
いい返事だ。いい返事すぎて若干不安だ。こいつ生まれたばっかだろ。
そんな高度なことできるのか。
「じゃあ、行って参りますね!」
小太郎は跳ねるように降りて行った。
「あ、うん。頑張ってね。」
呆気にとられてそのまま見送ることしかできなかった。
本当に大丈夫だろうか。不安だ。
もう一人くらい諜報系の森人を作っておいたほうがいい気がする。
まあ、とりあえず見守っておこう。
流石に声は聞こえてこないが、俺のいる高所からは小太郎が悪戦苦闘している様子がよく見えた。
道で行きあった人に頭を下げて教えてもらえないかと頼んでいる。
だが、相手は腰を抜かしたり逃げ出したりと小太郎を化け物扱いだ。
紅毛碧眼なんて見たことがないのだろう。鬼と勘違いされている。
小太郎はなおも頑張っていたが、全ての相手に逃げられていた。
討伐隊らしき集団がやってきたのを上空から見つけた。
仕方ない。俺は戻るように指示を出した。
悪かった。俺のキャラメイクが適当すぎた。謝ろう。
「いえ。私の実力が至らないせいです。」
俺の謝罪にも関わらず、小太郎は首を振った。なにこの子、いい子すぎる。
美丈夫なのに少年的面影があるぞ。偉そうな天人になんてなれるんだろうか。
「精進いたします。」
まっすぐな目で見つめられるたびに俺に罪悪感という名のダメージが入る。
くっ。
貯蓄エネルギーの量的にはやりたくないけど、早いとこ諜報系の森人を作らなくては。
〜
貴公子たちはバラバラに戻ってきた。
やってきたものたちはそれぞれ知恵や財を用いてかぐや姫の難題に答える準備は万全だった。
今度は大和杉に立ち寄ることなく、まっすぐにかぐや姫の家に向かう。
大和杉が聞いたら激怒して葉っぱを飛ばしていたはずだ。彼らは幸運だった。少なくともいまは。
かぐや姫の家で彼らは散々な目にあう。
やり込められる安倍のみうし。
偽物と看破されるもそれでも言い寄ろうとする石つくりの皇子。
真に迫る作り話で騙すことに成功しかけた蔵持皇子も、偽物を作らせた職人たちへの給料未払いがばれてしまう。
かくして5人の貴公子によるかぐや姫への求婚は失敗に終わった。
既定路線である。
これから天皇との文通が始まるのだが、割愛する。
まとめるとなんやらかんやらあって、天皇の
天皇は再三宮中にくるように言うが、かぐや姫は拒み続けた。
最高権力者の誘いを断るなど考えもしなかった時代のことで、竹取の翁は必死で彼女を説得した。
それでも彼女の意思は固く決して参内さんだいしようとはしなかった。
天皇は
彼もまた一国の権力者たるにふさわしい人物だったのだ。
だが、せめて文通だけはと言われてはかぐや姫も拒みきれない。
和歌のやりとりを交わすのだった。
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