ゲームのような人生をの巻

ヒロシのクラスメイトである金歯はいわゆる金持ちキャラで核戦争の時に「悪いなヒロシ。このシェルター3人用なんだ。帰ってくれ」とか言ってくるいやみなやつ。その趣味も「死刑囚が獄中で書いたピエロの絵」だとか「過去に惨劇があったアメリカ・ペンシルベニア州にある古びた民家」といったシリアルキラーグッズを集めるという金持ちらしいものなのですが、庶民的な趣味もあったりするのです。


 それはゲーム。ゲームであります。


「ゲームはすばらしいでおじゃる。そこには冒険があり、友情があり、恋があり、夢があり、悲しみがあり、笑いがあり、愛があり、恐怖があるのでおじゃる。恵まれた境遇の朕でおじゃるが、ゲームのような人生を送りたいと常々思っているのでおじゃる」


 と、在りし日の金歯はよく語っていました。なぜ在りし日かというと、今死んだからです。


「えらいこっちゃでマルぼん」


「えらいこっちゃでヒロシ」


「うぬら、朕の馬になれ。朕を背に乗せて大地を駆けよ。そしたら2千円くれてやるでおじゃる」という金歯の申し出を二つ返事で受けたヒロシたちだったのですが、金歯の鞭打ちのあまりの痛さ我を失い、彼を振り落としてしまったのです。落ヒロシした金歯は打ちどころが悪く、波乱に満ちたその生涯を終えたのです。


 金歯の両親はその残虐性に定評があります。なんかこう、邪魔する奴は指先ひとつでダウンさせてしまうような残虐の権化夫妻の愛する息子を星にしてしまったヒロシたち。よくてロケットランチャーで粉々、悪くて「人体のワンダフル展」の展示物といった未来しか待っていないことでしょう。


「マルぼん、機密道具で生き返らすことはできないの?」


「それだけは無理なんだ。どんな便利な道具でも命だけは取り戻すことはできない。だから、だから命は尊いんだ……!」


「こうなったら、いちかばちか。あの手段しかないか……! ちょっと知り合いに連絡してくる!」



                 ※


金歯のダディ「おいなんだ、このおばあさんは」


おばあさん「ただいまでおじゃるダディ。そしてマミィ」


金歯のマミィ「は?」


ヒロシ「見ての通り金歯くんです」


おばあさん「あたしゃ金歯だよダディ」


金歯のダディ「いや、だからどこからどうみてもおばあさんじゃろがい」


マルぼん「たしかに見た目はおばあさんですが、中身は金歯くんなのです」


金歯のマミィ「?」


ヒロシ「このおばあさんは名うてのイタコで、今現在、金歯くんの霊をその身に降ろしているのです。だから心は金歯くんなのです」


おばあさん「あたしゃ金歯だよぉ」


金歯のダディ「イタコ!? 死んだの、my dear son!?」


ヒロシ「いや、だから、死んでないです。霊がイタコのばあさんに降りてきている状態なので……体はばあさんだけど心だけは生きている状態といいますか」


金歯のマミィ「すなわち死んでるってことじゃない!」


マルぼん「落ち着いて聞いてください。生前の金歯くんは、ゲームのような人生を送りたいと己の夢を語っていました。今の状態はある意味その夢がかなっているのようなものなのです。なぜなら、最近のゲームは」


ヒロシ「ダウンロード版が当たり前なんですから」






 

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