仕事奪いロボの巻
しばらく入院していたヒロシが久しぶりに帰宅すると、マルぼんが変わり果てた姿で横たわっていた。幸いにも人の死とかに詳しかったのでヒロシには死因がすぐわかった。
「餓死だ!!」
近くには事切れる前にマルぼんが書いたと思われる手記が残されていた。そこには仕事がなくなり収入が尽きたこと、未来から来た不法滞在者であるゆえに行政からの支援も受けられないことなどか書き連ねていた。
この手記は後にNHKで取り上げられたことがきっかけで社会問題と化し、未来から来た不法滞在者への公的支援の充実につながるっぽい雰囲気が一瞬だけ漂うことになるのだがそれはまた別の話。
「なぜマルぼんは仕事がなくなったんだろう」
ヒロシがいぶかしんでいると
「それは私が仕事を奪ったからですよ」
「何者ぞ!?」
「私は仕事奪いロボ。たまに『AIが仕事を奪う』みたいな話があるを知っていると思うのだけれど、その仕事奪いAIが搭載されたロボだ! あらゆる人々から仕事を奪って代わりに働くロボなのだ! 仕事を奪われた者は仕事を失い収入が途絶える!! 手始めにマルぼんの仕事を奪ってやったのさ!! マルぼんの『便利な道具でヒロシのあんな夢こんな夢をみんなみんなみんなかなえてあげる』という仕事をな!」
「!!」
ヒロシは気づく。この間、ガキ大将のナウマン象に仕返ししてもらうために「硝煙反応のでない拳銃」という道具を出してくれたのがマルぼんではなくロボだったことに。
ヒロシは気づく。この間、金持ち自慢をしてきた金歯への仕返しのために「お手軽国税通報機」という道具を出してくれたのがマルぼんではなくロボだったことに。
ヒロシは気づく。この間、あからさまなねずみ講をしつこく勧めてくるルナちゃんへの仕返しのために「お手軽被害者の会設立機」という道具を出してくれたのがマルぼんではなくロボだったことに。
※「マルぼんと暮らす」開始以来、開運グッズとか健康になる水とかを高値で売り付けてくる系女子という設定だったルナちゃんですが、時節柄そういうのもどうかと思い始めたので、今回からねずみ講とかマルチ商法を勧めてきたりツィッターでお金を配ると称して個人情報集めちゃう系女子という設定にしていきたいと思います。
いつの間にか、ヒロシの仕返しライフを支えていたのは仕事奪いロボになっていたのだ! 気づかぬ間に意外な人に支えられている。それが社会……!
「おまえさんが嫌な相手に『ざまぁw』しているうちにマルぼんは仕事を失い餓死したってわけなのさ。さ、次は貴様の仕事を奪ってやるぞ大沼ヒロシィ!! どんな仕事なのかワクワクしてきたぞ大沼ヒロシィ!! くらえ、仕事サーチ光線!!」
仕事奪いロボは仕事サーチ光線を放つことで対象の職を瞬時に察知し、奪う。その光線がヒロシに放たれたのだ。ヒロシはこの瞬間、無職となった! ヒロシの仕事は仕事奪いロボのものとなった!!
「今からお前のものだった仕事をしてきてやるぞ、大沼ヒロシ! 額に汗して働いてきてやるぞ、大沼ヒロシ!!」
そう叫ぶと仕事奪いロボは部屋から飛び出していった。しばらくすると激しい衝撃音がしたのでヒロシも続いて外へと飛び出した。
家の前にはダンプカーが止まっていた。運転手らしき人が「いきなりとびだしてきたんだ! 避けきれなかった!!」と周囲の人に話をしている。ダンプカーの前には機械の残骸が、仕事奪いロボの残骸が散らばっていた。
「当り屋でメシ食っててよかった」と思うヒロシであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます