裏切りは君の味

ヒロシ「この間、家族旅行してきたんだ。ほら、あの有名な『斉木しげるロード』。きたろうグッズがたくさん売っているとこ」



ナウマン象「ふん。旅行がなんだい」



ヒロシ「ちなみに列車の旅でさ、なんとあの『エクスタシーエクスプレス』をつかったの!」



ナウマン象「エクスタシーエクスプレスだって?!」



『エクスタシーエクスプレス』は、ゆったりした客席、豪華な車内レストラン、様々なことに使用できる多目的室、清潔なトイレ、天然温泉の露天風呂、映画館、図書室、コンサート会場、病院、墓、体育館、結婚式場、レース場、火葬場、駅、バス停、大阪城、釣堀、森、海など、たくさんの設備がある超豪華列車で、予約を取るのも難しいのですが、たまたま運よくとることができたのです。



ヒロシ「いやー楽しい旅行だったよう」



ナウマン象「それは、どこへも旅行できない俺へのあてつけか! エクスタシーエクスプレスに恋焦がれて、よごと枕をせつなさの涙で濡らす俺へのあてつけか! もう怒った、おまえを死なす! いでよ、我が下僕ども」



 ナウマン象が叫ぶと、なんということでしょう。電信柱の影から、マンホールの中から、草むらから、川の中から、民家の軒下から、ナウマン象のズボンのポケットのなから、空から、あなたの家の中から、机の引き出しの中から、過去から、未来から、地下から、海から、空間を捻じ曲げて発生した怪しい穴から、次々と屈強な男たちが現れたではありませんか。



ナウマン象「こいつらは、俺に仕える666人の下僕たちだ。俺の怒りは頂点に達したので、こいつら全員の力を

もって、キサマを死なす!」



ヒロシ「なンだってー!? 助けてー!!」



ヒロシ「いやー死ぬかと思ったよ、ほんと」



マルぼん「しかしまぁ、666名の下僕に襲われながら、よく助かったもんだな」



ヒロシ「とっさに保護色の術を使って、地面と同化したからね。でも、次はうまくいくかどうか」



マルぼん「そういう時こそ機密道具の出番だよ。『裏霧散布機』。この機械は、起動すると裏霧という特殊な気体を辺りに散布する。その気体を吸い込んだ人は、性格が捻じ曲げられて強烈な反骨精神が身につき、仕えている者や自分を信じてくれている者を裏切ってしまうようになるんだ」



マン象の666名の下僕が総集合しているときにこいつを使えば」



マルぼん「666名の下僕は一斉に裏切り、その牙をヤツにむけることになるのさ」



ヒロシ「そりゃあ、最高だ。666名に一斉襲いかかられて、ナウマン象は無残な肉片と化すんだね」



 ヒロシは『裏霧散布機』を持って、ナウマン象と666名の下僕がたむろする、

近所の空き地へと向かいました。



ヒロシ「こいつなら、『裏霧散布機』ならばきっと、ナウマン象をぎゃふんと言わせることができるぞ。うふふふ」



ナウマン象「なんだヒロシ、逝きにきたのか」



下僕ども「ぶひひひひ。この前は殺せなかったから」



下僕ども「ぐふふふふ。今度こそ死なせちゃいますよ」



下僕ども「心臓はオラが食らうズラ」



下僕ども「目玉はワシじゃ」



下僕ども「爪を食うのはアタシよ」



ナウマン象「ハハハハ。ケツの穴は俺に置いておけよ」



ヒロシ「ふん。今に見ていろよ、『裏霧散布機』、起動!」



 起動ボタンを押すヒロシでしたが、『裏霧散布機』はウンともスンとも言いません。故障でした。悲しい事故でした。



ヒロシ「あれ、あれ、あれ」



ナウマン象「なんだかしらんが、者どもかかれえ」



下僕ども「うおー」



ヒロシ「ひょえー!!」



 マルぼんは、自らもヒロシの期待を裏切った『裏霧散布機』の効果は絶大だと思いました。

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