老人とヒロシと

老人「少年よ」



ヒロシ「なんですか、見知らぬ年老いた男性」



老人「わしにはわかる。ウヌは龍騎士ドルヴァンと聖羽姫ルルカーンの子供である、聖龍子じゃ」



ヒロシ「な、なんだって! そうか。なんの変哲もない男と女と思っていた僕の両親は、龍騎士と聖羽姫だったのか」



老人「聖龍子であるウヌにはすさまじい能力が秘められている。その能力を開花させるには、まとまった金が必要だ」



ヒロシ「すぐに貯金を下ろしてまいります、老師!」



 しばらくたって、帰宅してきたヒロシが、テレビを観ていたマルぼんに泣きついてきました。



ヒロシ「僕は全てを失った」



マルぼん「もう貴様は、漫画もおもちゃもDVDも買えないわけだな」



ヒロシ「ちくしょう! あんな老い先短い男のことをまるで疑いもしなかった、純真無垢な己が憎い! 死なせたい!」



マルぼん「『疑心アン肝』。みらいのせかいのとある生き物の肝で、こいつを食すと心が汚れ、ありとあらゆるものを疑わずにはいられなくなるんさ」



ヒロシ「わーい、これで現代社会でも生きていけるよ」



 と、その時、テレビの画面が急に変わりました。



テレビ『番組の途中ですが、ニュースをお伝えします! 微笑小学校にテロリストが立てこもっている模様です!』



ヒロシ「僕の通っている小学校だ。あーよかった。登校拒否で」



テレビ『立てこもっているテロリストを撮影するのに成功しましたので、映像をご覧ください』



 テレビには、マシンガンを片手に小学校の教室に立てこもる女テロリストの姿が。



ヒロシ「こ、このテロリスト……お母さんじゃないか!」



 カメラに気づいたテロリストママさん、とびっきりの笑顔でピースサインをして



ママさん『ヒロシー、ママ、がんばってるよー!』



ヒロシ「なんでお母さんが。なんてお母さんが。そんなバカな」



 信じられないという表情でテレビを観るヒロシ。マルぼんは、ヒロシが我が目を疑うようにまでしてしまった『疑心アン肝』の効果は絶大だと思いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る