新鮮組
ヒロシ「マルぼんに、橋本さんという人からハガキが来ているよ」
マルぼん「橋本さん! 懐かしいなぁ。マルぼんが前に勤めていた職場の先輩だよ! たしか5年前に結婚して、太郎君という息子さんも出来て、マイホームも買って、順調極まりない人生を歩んでいたハズ」
ヒロシ「ご名答。ハガキにも『今幸せです』とか書いてあるよ。あ、『また家に遊びに来てください』だって」
マルぼん「そういえば、マイホーム購入直後に遊びに行ったっけ。久しぶりに行ってみるかな」
そんなワケでマルぼんは、橋本さんの家に遊びに行くことに。お土産にケーキを持って、橋本さん宅に向かう道すがら。
マルぼん「そういえば5年前も、お土産にケーキを持って行ったっけ。5年かぁ。あの時赤ん坊だった太朗君も今は幼稚園にでも通っているかもしれないな」
そうこうしているうちに、橋本さんの家に到着。
橋本「やぁ、しばらくだな、マルぼん」
マルぼん「先輩、ご無沙汰しております」
橋本「まぁあがりなよ」
応接間に案内されるマルぼん。しばらくの間、思い出話を肴に酒など飲んでいると、橋本さんがニヤニヤしながらなにか持ってきました。
橋本「ほら、このケーキを見ろよ。5年前にお前が土産で持ってきたやつだ」
マルぼん「からかうのは止めて下さいよ。5年前のケーキが腐らずに残っているわけないじゃないですか」
橋本「いや、それが腐らないんだよ。ほら、ケーキをよく見てみろ。中に人間の指のようなものが入っているだろ。これに見覚えないか!」
マルぼん「!」
忘れもしません。当時、橋本さんのことを「あんなやつ、バナナの皮で滑って転んで地面に頭をぶつけて死した後、魂が天に召されることなく、永遠に地上をさまよい、苦しみ続ければいいんだ」と憎んでいたマルぼんは、土産のケーキの中に人間の指のようなものを仕込んでやったのです。嫌がらせの一環として。
マルぼん「たしかに……5年前のケーキに間違いないようですね。しかしなぜ、腐っていないのです」
橋本「実はこの家の建築には、不思議な技術が使われているんだ。この家の中にある食べ物は、いつまでも腐ることなく、永遠に新鮮な状態が保たれる」
マルぼん「それは便利ですね!」
橋本「新鮮さが保たれるのは、この家の主人である自分が食べ物と認識しているものだけに限られるんだけどな。
あ。そういえば……」
と、その時。1人の赤ちゃんがハイハイしながら歩いてきました。
マルぼん「わぁ、可愛い。またお子さんができたんですね! 太郎君もお兄さんになったんだ」
さすが兄弟。赤ちゃんは、太郎君が赤ん坊だった頃と顔がそっくりでした。
橋本「そっくりもクソも、それ太郎本人だよ。家の力で新鮮なままなんだ」
マルぼん「え」
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