ぢー子サッカー
楽しい人生。みなさんも、海に、山に、家庭用ゲームに携帯ゲームにレトロゲームにパソコンゲームにネットに落ちてるフリーゲームにギャルゲーにエロゲーに、楽しい汗を流しておられることでしょう。
しかしここに、太陽系第3惑星地球のちっぽけな町に、人生を満喫できていない男がいました。その名は、その名は、その名前は……大沼ヒロシ!
マルぼん「で、痔の調子はどうなんだい、ヒロシくん」
ヒロシ「……最悪ですわな。トイレへ行くたびに、地獄が待っているんだ。地獄の後には、血に染まりし便器が気分を最悪にしてくれる」
マルぼん「そりゃご愁傷さま」
そう、ヒロシは痔を患ってしまったのです。それもひどいやつ。痛む尻のおかげで、外出をするどころか、ゲームをしても集中できず、感情移入もできず、萌えることもできず……
ヒロシ「萌え……? そうか、その手があったか!」
マルぼん「どうした、痔が頭にまわったか。まだ若いのに」
ヒロシ「ちがいますわな。この状況を楽しむ方法を思いついたのさ。ほら、最近なんでもかんでも『萌え化』する風習が国内に根付いているじゃない? 戦車やら戦国武将やら戦争やら武器やら国やらを萌え化してたりするだろ。あのノリで、僕の痔も萌え化してほしいんだ! つらい痔だけど、萌える女の子だったらなんとかなりそうだろ!」
マルぼん「……その発想はなかったよ。ようがす。あらゆる物を萌え化する機密道具『萌エカ酢』を使おう」
道具使用後、しばらくすると、ヒロシの尻のほうから某アイドル声優さんのような声が。
???「お兄ちゃんたら、自己管理をきちんとできないから病気になんかなっちゃうんだよ! ホント、バカなんだからっ! やっぱ私がいないとダメだね。いま、そっちに行くからね!」
ヒロシの尻が輝きだし、部屋が光に包まれました。光が薄れたとき、そこには1人の美少女が。彼女こそ、ヒロシの痔が萌え化した存在。その名も
ぢー子「ぢー子だよっ、お兄ちゃん」
ぢー子、ヒロシに抱きつく。
ヒロシ「マルぼんはん……なんちゅう、なんちゅう道具をだしてくれはったんや……最高や!」
萌えの力とは恐ろしいもので、その後ヒロシは快方に向かっていったのですが……数日たったある日。
ぢー子「はぁはぁ……お兄ちゃん、苦しいよう」
ヒロシ「ど、どうしたんだ、ぢー子! 体が……体が半透明になっているじゃないか」
ぢー子「わかんない……」
マルぼん「ぢー子はあくまで君の痔が萌え化した存在。痔が治れば、存在しなくなるのは当たり前だ」
ヒロシ「そ、そんな。そうだ。痔を悪化させれば……」
ぢー子「だめだよ、お兄ちゃん。そんなの絶対ダメ」
ヒロシ「ぢー子……」
ぢー子「お兄ちゃん。せっかく元気になったのに。私のためにまだ病気になるなんて、そんなのダメだよ。お兄ちゃんのために消えることができるなら、私、本望だよ。すごく嬉しい」
ヒロシ「……」
ぢー子の体がさらに透明に。
ぢー子「そろそろさよならだね……。お兄ちゃん、どうか元気で……それと、私のこと……忘れないで、ね」
ヒロシ「ぢー子ぉぉぉぉ!」
そして、ぢー子は天使になりました。
ヒロシ「み、認められるかよ、こんなこと! こんな別れ!」
ヒロシは財布片手に外へ飛び出しました。数時間後、大量のキムチを抱えて帰宅しました。そのキムチをものすごい勢いで食べ始めるヒロシ。
マルぼん「ヒロシその量は無茶だ!」
ヒロシ「辛いものを食べたら、痔は悪化する! 悪化したらまたぢー子に会えるはずなんだ!」
マルぼん「おまえ……わかった。もう止めない。病め、病むんだヒロシ」
食べたキムチの量が、日本人が1年に消費するキムチの平均量を超えた頃、ついに奇跡が。ヒロシの尻が輝き、そして。
ぢー子「……」
ヒロシ「また会えたな」
ぢー子「お兄ちゃんのばか」
ヒロシ「ばかで結構……」
ぢー子「ばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばか……大好き」
抱き合う2人。
マルぼん「見せつけてくれる……うん?」
2人の近くに、見慣れない少女がいました。ぢー子同様、こちらも美少女。
マルぼん「あなたは?」
美少女「ヒロシさんが……ご主人様がキムチの食べ過ぎて患った急性胃炎が萌え化した存在の、イエン子です!」
ヒロシ「……『萌エカ酢』の効果は病気ひとつひとつに及ぶのん?」
マルぼん「うん」
ヒロシ「…そう」
ヒロシは本棚に並んでいた『病気の原因』という本に手を伸ばしました。
そして数ヵ月後。微笑町の駅前にある病院へと向う人影3つ。
ナウマン象「しかしヒロシが入院するとはなぁ」
金歯「元気の塊。健康の化身のようなあいつがね」
ルナちゃん「着いたわ。この駅前病院に入院しているはず……」
ぢー子「あ、もしかしてお兄ちゃんのお友達?」
ナウマン象「貴女はどちら様」
ぢー子「ヒロシお兄ちゃんの痔の、ぢー子です!」
金歯「はぁ?」
イエン子「ご主人様の胃炎のイエン子です!」
よく見ると、病院の周りには美少女だらけ。そのいずれもが、「ヒロシの水虫です」だの「ヒロシの中耳炎です」だの「ヒロシ膀胱炎です」だのと、自己紹介。
ぢー子「もう、みんな。きりがないよ! あ、みなさん。お兄ちゃんはこちらです」
ぢー子は、ナウマン象たちを連れて病院の中へ。病院の中にも「ヒロシの鼻炎です」「ご主人様のしもやけです」だのとのたまわる無数の美少女がいました。
ぢー子「お兄ちゃんはこの部屋にいますよ」
集中治療室の札が掲げられた部屋を指差して、ぢー子は言いました。
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