2人乗り
マルぼん「おい、今日は我々が愛読している漫画『ご存知! 政府陰謀論くん~隠された真実 第一章ロズウェル~』の発売日だぞ!」
ヒロシ「やべ、速攻で買いに行かないと! 本屋さんへ急げ! 自転車自転車~」
マルぼん「マルぼんも行くよ!」
ヒロシ「おし。後ろに乗れ! それじゃ、出発」
マルぼん「いざ、希望の未来へ!」
ポリスマン「死ね!」
ズキューン! 銃声が一発響きました。
マルぼん「ぎゃー! マルぼんのどてっ腹に風穴が! あーなーがぁー!」
ヒロシ「なにをするんですか、おまわりさん!」
ポリスマン「2人乗りは立派な犯罪だ! 犯罪者には死を! 犯罪者を皆殺しにして、地球に永久なる平和を! 平和を愛さないヤツは俺が殺す!」
ヒロシ「酷い! マルぼんは人間じゃない! 人間じゃないどころか、生きる価値すらないのに!たんなる荷物! 動いてしゃべる荷物なの! だから、さっきのは2人乗りじゃないよ! どうしてくれる、知り合いの弁護士に相談してやろうか!」
マルぼん「いててて、マルぼんの命の灯火が、とーもーしーびーがー!!」
ポリスマン「うるせえ! それじゃあ、積載量オーバーだ! 死ね!」
ズキューン!
マルぼん「ぎゃー! 今度はマルぼんの頭に風穴がー!!」
ヒロシ「マルぼん! ちくしょう、おのれ、おのれポリスマン! よくもまぁ、僕の所有物を!」
ポリスマン「ははははは。撃つよ、撃つよ~!」
ヒロシ「く…このままでは!」
ポリスマン「ふふふ。とどめだ!」
???「そこまでだ!」
ポリスマン「貴様は!? そんな、そんなバカな! なぜ貴様がここに!?」
???「始まりだ。終わらないダンスのな!」
(中略)。そして一年後。
ヒロシ「マルぼん、退院おめでとう」
マルぼん「ありがとう、ありがとう」
ヒロシ「しかし、今思ってみれば、ほんとうにすごかったね、あのときは」
マルぼん「うん。我々は二度とあんな悲劇を繰り返してはいけないね」
大空を見上げると、あの事件で命を失ったあのポリスマンの笑顔が浮かんでいるように見えました。
ポリスマン(本官のこと忘れたら、承知しないぞう)
そして今日も夕陽が沈む。完。
というわけにもいかないので、マルぼんは機密道具をだすことにしました。
二度とあんな悲劇を繰り返さないために。
マルぼん「『2人乗り化シール』。このシールを貼ったものは、たとえ法律が禁止していようが、どんなものでも2人乗りが可能になる」
ヒロシ「そいつを僕の愛車『ビックドリーム&リトルラブ号』に貼れば、たとえ幼馴染の女の子(注1)を後ろに乗せて自転車通学していても、大丈夫なわけだね」
ヒロシは自分の自転車に『2人乗り化シール』を貼りました。
ヒロシ「よし、マルぼん。ためしに後ろに乗ってみなよ」
マルぼんが自転車の後ろに乗ろうとすると、どこからともなく見知らぬ男が走ってきて、自転車の後ろに飛び乗りました。
ヒロシ「あなたは誰ですか! なぜ私の自転車のうしろに乗るのです!」
男「わ、わからない。体が勝手に動きまして!」
マルぼん「『2人乗り化シール』を貼ったものは必ず2人乗りになる。3人乗ったら、強制的に1人降ろされて2人乗りにする。1人しか乗らなかったら、誰かが強制的の乗せられて2人乗りになる!」
ヒロシ「なんだよ、役にたたないシール! 剥がしてやる」
ヒロシは『2人乗り化シール』を剥がしたのですが、勢いあまって自分の手にシールが貼り付いてしまいました。
ヒロシ「う!? おええええ!!」
突然嘔吐するヒロシ。こころなしか、お腹が膨らんでいるような……
ヒロシ「うう。気分が悪い。すっぱいものが食べたい……」
マルぼん「ヒロシ、まさか、お前……」
そのまさかでした。ヒロシのお腹には、新たな命が宿っていたのです。ヒロシの肉体は、2人乗りになったのでした。
(注1)そんなの存在しません。ヒロシの妄想です。それはそれはたちの悪い妄想です。
数日後。
ヒロシ「いやー酷い目にあった」
マルぼん「想像妊娠でよかったよね」
ヒロシ「まったくだよ。『2人乗り化シール』でも、人間を2人乗りにすることは無理みたいだね」
マルぼん「そうだね。やはり乗り物にしか効果はないみたい」
ヒロシ「そっかー。よし、こんなシールは捨ててしまおう。ぽい」
捨てられた『2人乗り化シール』は地面に貼りついてしまいました。
ニュース『いきなりですが、戦争です! 第三次世界大戦です! 核でーす!』
ヒロシ「えらい唐突に来たな、終末!」
マルぼん「簡易シェルターを用意したから、逃げ込め!」
そして人類は滅びました。残されたのは、かつて文明と呼ばれたものの残骸。
ヒロシ「もしかして、生き残ったのは僕だけ!?」
おっさん「おーい、そこのきみー!」
ヒロシ「あ、生き残りがいた!」
こうして、2人乗りになった素敵な宇宙船地球号は、ヒロシと見知らぬおっさんという2人の乗員を乗せて、宇宙と言う名の大海原をさまよい続けるのでした。完。
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