微笑町統一

 公園で楽しく遊んでいると、なんかブツブツ呟いている細身でメガネの男がやってきました。



ヒロシ「あれは近所に住む医大志望の浪人生(32歳)だ。家にプラモやビデオがたくさんあるんだ。見せてもらったことがある。『プラモやるから服を脱げ』とか言われたから、人生で最大限の努力をしてなんとか逃げ出したんだけど」



32歳「医大志望の偉大な俺は、今日からこの公園の総帥であーる。貴様ら、俺にかしずけーい」



ヒロシ「ああ。季節の変わり目だし、仕方ないよね。色々」



32歳「かしずけーい」



ヒロシ「無視して遊ぼうぜ、無視して」



金歯「あ、32歳がなんか胸元からだしたでおじゃる。あれは濃硫酸!!」



ナウマン象「バカな!? 子供相手に濃硫酸!? ……俺、かしずきまーす!!」



 偉大志望(32歳)の靴を舐めに行くナウマン象。



 ガキ大将の敗北により、僕らの公園は偉大志望の浪人生(32歳)のエルドラド(文句を言う親も、なんとか部屋から出そうとするカウンセラーも、脳波を検査する医者もいない)と化したのでした。



ヒロシ「チッ! ナウマン象のうすのろめ! こうなったら、このヒロシが医大志望の浪人生(32歳・親戚会議でいつも議題になる)を倒してやる!」



マルぼん「で、なんか妙案はあるの?」



ヒロシ「ありません、はい。マルぼんー。あの医大志望の浪人生(32歳・この人のせいで近所に交番ができた)を倒す方法考えてよー!!」



マルぼん「そういわれてもナー」



金歯「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



ヒロシ「あ、金歯の悲鳴だ。お百姓さんたちに捕まって、引きずられているぞ」



マルぼん「一揆だよ。最近、アホみたいに年貢を高くしていたしね。権力者も団結した民衆には弱いものだ」



ヒロシ「それだっ! 団結だよ、団結! 1人1人は弱い子供でも、団結したら、濃硫酸をもった医大志望の浪人生(32歳・親から外に出ないように言われた)だって倒せるはずだよ!」



マルぼん「そうだね」



ヒロシ「よーし、マルぼん、あれだして!『ラジオを通じて毒電波を流し、受信した人を自在に操る機密道具』あれでみんなを団結させてだね」



マルぼん「あれは法律で使用が禁止されたよ」



ヒロシ「それならあれ、『人を生ける屍状態にして、自在に操ることができる魔法のパウダー(原材料テトロドトキシン)』!」



マルぼん「それも使えないなー」 



ヒロシ「なら『誰でも簡単に、カルト教団ばりのイニシエーションが行える機密道具』は? そのイニシエーションで信徒を集めてだね…」



マルぼん「それも無理。その機密道具を使っていた方々が集団自殺をして社会問題に」



ヒロシ「それなら覚せい剤だせ! これで中毒患者を…」



マルぼん「青少年にやさしいサイトを目指しているのに、そんなもの使えるか! こうなったら、アレを出そう!『一血団血』~」



ヒロシ「…血? まずいって。血は色々と」



マルぼん「まずこの血になんでもいいから体液をたらす。するとこの血に、その体液の主の思想がインプットされる」



ヒロシ「使うの? ねえ、使うの?」 



マルぼん「で、この血を輸血された人は、その思想によって染められてしまうのさ。こいつで、いつもの連中を洗脳しよう」



ヒロシ「うう。なんか気が進まないけど、やってみるしかないかぁ。幸いにも、ヒロシくん七つ道具の『クロロホルム』『人がすっぽりはいる麻袋』があるから、それでみんなを集めよう」



マルぼん「なんでそんな七つ道具を…」



 そんなわけで、マルぼんとヒロシは町へと繰り出しました。



ヒロシ「あ。ルナちゃんだ。いいかい、マルぼん。最初、僕が道を聞くフリをして油断させるから、このクロロホルムを使って…」



マルぼん「なんで手馴れているの?」



ヒロシ「ルナちゃーん」



ルナちゃん「あらヒロシさん」



マルぼん「こそこそ」



ルナちゃん「きゃ!? なんでうしろからマルちゃんが!? しかもそれは、

『クロロホルムを染みさせた布』と『人がすっぽり入る麻袋』!!

あたしをかどわかそうとしたのね!!」



町民「またあのガキと怪生物か!!」



町民「これで何度目の騒動だ!!」



町民「自警団を結成して、やつらを町から追い出そう!!」



町民「オオー!!」



 こうして微笑町はひとつとなり、マルぼんたちは故郷を失いました。

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