ナウマン象「おいヒロシ。おまえの国籍、知り合いの不法滞在者に10円で売ってやったぞ」



金歯「いじめの一環でおじゃるの」



ヒロシ「ひどいやひどいや。あまりにひどいや。おまえたち、絶対に死なせたる」



ナウマン象「死なす? 弱虫ヒロシが、俺たちを? ぷははははは。笑わせるなよ」



マルぼん「きみはなめられまくっているから『死なす』とか言っても、相手の心にトラウマのひとつも残りやしないよ」



ヒロシ「くやしい……!」



マルぼん「もっと貫禄があったらねえ。たとえば、君が好きな女の子を殺して死肉を食らうヤツだったら、『死なす』という言葉の説得力と攻撃力は高くなると思うんだ」



ヒロシ「そんな人間になりたかないよ!」



マルぼん「まぁ、待て。実際にならなくても、貫禄だけゲットすることは可能さ。『箔シール』。このシールを貼ると、中身が伴ってなくても箔がつく」



 たとえば、金持ちでもなんでもない人が『金持ち箔シール』を貼ると、まるで金持ちのような貫禄がつきます。

ヤクザでもなんでもない人が『ヤクザ大親分箔シール』を貼ると、まるでヤクザの大親分のような貫禄がつきます。



マルぼん「好きな女の子を殺して死肉を食らうヤツでもなんでもない君が『殺人鬼箔シール』を貼れば、まるで好きな女の子を殺して死肉を食らうヤツのような貫禄がつくわけさ。そうすれば『死なす』の一言でナウマン象や金歯はビビって失禁するだろ。その様子を撮影すれば、その手のマニアに売れてお小遣いもゲットだ」



ヒロシ「実際に殺してなくても、殺したことがあるかのような貫禄をゲットできるのか。よし、そのシール貼るよっ」



 さっそく『殺人鬼箔シール』を体に貼るヒロシでしたが



警察官「大沼ヒロシくんですね」



ヒロシ「そうですが」



警察官「昨日の夜7時頃、なにしてました」



ヒロシ「家でゲームを」



警察官「証明できる人は」



ヒロシ「いないです。同居人のマルぼんは出かけていたし」



警察官「そうですか。実は、夕べこの近辺で殺人事件がありまして」



ヒロシ「ええええ!?」



警察官「署までご同行願います」



ヒロシ「ぼ、僕は殺してません。本当です。マジです!」



警察官「ご近所の皆さんがこぞって『大沼さんとこの息子は人とか殺しまくってそうな雰囲気あるよ』と言ってますよ」



ヒロシ「たすけてぇぇぇ」



金歯「えらいことになったでおじゃるな。『箔シール』さえ貼らなきゃ、疑われることもなかったろうに。」



マルぼん「『箔』なんて下手に転んだら悪いレッテルと変わらないからな。ないほうがいいんだ」

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