祖母はミジンコ、祖父はアリンコ、父はチャリンコ、母はジャガリコ

ヒロシ「今日は微笑河で水泳大会なんだ」



 微笑河は、「マジカルリバー」と言われている河です。まるで魔法のように河の水の色が青くなったり赤くなったりすることで、マジカルの名を冠しています。河の上流にある、某工場から流される廃水との関係は不明です。



マルぼん「水泳大会って、おまえ」



ヒロシ「そう。泳げない」



 ヒロシのためにマルぼんは機密道具をだしました。



マルぼん「『カスタマ椅子』~。さぁ、こいつに座るんだ」



ヒロシ「椅子型の機密道具だね。座ったよ」



マルぼん「背もたれのうしろにある入力パネルに、『河』と入力する」



ヒロシ「ああ! 指と指の間に水かきができた! 肌にはウロコが!? 」



マルぼん「この椅子に座るとだね、座った人を自由にカスタマイズすることができる。たとえば、『河』と入力すると、座った人は河で暮らすのに適した人間にカスタマイズされるんだ」



ヒロシ「なるほど。ところで、元の姿に戻るにはどうすれば」



マルぼん「方法は、ない」



ヒロシ「なんだと貴様、俺の人生を返せ!」



マルぼん「落ち着け、落ち着け! 『カスタマ椅子』に座って、『自宅』と入力すればいいんだ。さすれば、自宅で暮らすのにもっとも適した体…つまり、普通の体にカスタマイズされるはず」



ヒロシ「ちょっとやってみてよう」



マルぼん「よし。入力パネルに『自宅』と入力。」



ヒロシ「……」



マルぼん「あ! ヒロシの顔から口が消えている! なんでだ!?」



ママさん「ヒロくん、ごはんよー」



 ぐつぐつと不自然に煮えたぎったナベを持って、ママさんがやってきました。



ママさん「今日のごはんは、ステキな鍋料理よ。色も変だし、なんか煙とかでているし、異臭もするし、不味いけど、体にいいの。本当よ。近づいたハエとかすぐ死ぬけど、人体には悪い影響はないの。本当よ。だから、たんと召し上がれ♪」



ヒロシ「……」



ママさん「あ! ヒロシの顔から口かなくなっている! これじゃ、食べさせられない!? そんな!」



 ショックを受けたママさんは、隠し持っていた保険の契約書と車のカタログと、ナベを落してしまいました。ジューと焦げはじめる、ナベの中身をぶちまけれられたヒロシの部屋の畳。



 マルぼんは、ヒロシの体を、家で過ごしていても命を落さないようにカスタマイズした『カスタマ椅子』の効果は絶大だと思いました。

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