大沼忍法帖

ナウマン象「うおー。俺より幸せなヤツは殺すよってからにー」



ルナちゃん「ナウマン象さんが狂った! 刃物を持ったままで発狂した!」



忍者くん「まて!」



ヒロシ「あ、忍者くん!」



 ヒロシのクラスメイトである根来忍者の忍者くんが、ナウマン象の前に立ちふさがりました。



ナウマン象「貴様つ忍者くん! おもしろい、貴様から血祭りにあげてやる。俺の包丁が、魚や豚や牛以外の血を吸うときがきたのだ!」



 ナウマン象の振り回す包丁を華麗によける忍者くん。ひしっと、ナウマン象の背中に抱きつきました。



忍者くん「忍法『人間ダイナマイト』!」



ナウマン象「きさま、まさか自爆を…ぎゃー!!」



 ドカーンと、ナウマン象とともに爆発する忍者くん。その体は無残にも肉塊と化したのですが、30秒くらいで

見事再生。ナウマン象は爆発四散したままです。



ヒロシ「忍者くんすごい! 自分は死なずにナウマン象だけ葬った!」



忍者くん「いやー単なる忍法でござるよ、ニンニン」



ヒロシ「忍法すげえ! 忍者すげえ! 僕、いや、拙者も忍者になりたいでござる



マルぼん「『忍法巻物』。この巻物を口に咥えると、忍者になることができるんだ」



ヒロシ「巻物はたくさんあるんだね」



マルぼん「一言に忍者といっても、たくさんの種類の忍者がいるからね。どの巻物を咥えたらどの忍者になるか、

調べるからちょっと待ってて」



ヒロシ「もー我慢できなーい! ぱくっ」



マルぼん「あ、おまえ、その巻物は!」




 数十年後。ここは微笑町の隣の薄笑町。



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様」



お子様「ママーあのじいさん、いったいなにをしているの? 道に座り込んで、なにをしているの?」



ママン「シッ! 見ちゃだめザマス」



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様…」



 忍者には、『草』と呼ばれる種類のものがあります。



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様…」



 敵国に侵入してスパイ活動をするのが主な任務です。



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様…」



 ただのスパイではなく、敵国の人間になりきるのが特徴です。たとえば「お百姓さんになれ」と命令されれば、敵国に入り込み、お百姓さんとして生きていきます。その影で、スパイ活動を行うのです。



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様…」



 そのなりきり具合は最高レベルで、周囲の人物は『草』が本物のお百姓さんと信じて疑いません。



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様…」



『草』の中には、スパイ活動ではなく、『いざというとき、敵国でかく乱作戦を行うために』潜伏しているものいます。彼らは、『いざというとき』が来るまでひたすら待ちます。



ヒロシ「右や左のだんな様。右や左のだんな様…」



 なかには『いざというとき』が来ないまま、その土地の人間として死んでいく『草』もいるそうです。ああ、素晴らしき、忍者のど根性。



ヒロシ(早く来て、『いざというとき』!)



 マルぼんは、ヒロシを『草』にした『忍法巻物』の効果は絶大だと思いました。

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