マミィ

ママさん「炊事洗濯掃除に育児……主婦の仕事は終わりがなく、激しくそして……」



パパさん「バーロー。こちとら、馬とモーターボートと自転車に情熱を傾けるのに忙しくて家事なんて手伝えねーよ」



ママさん「……そして常に孤独である。ふう」



マルぼん「ママさん落ち込まないで下さい。ママさんが暗い顔をしていたら、ヒロシもすくすく育ちませんよ。さぁ、笑って!」



ヒロシ「ばぶー」



ママさん「少しでも毎日の仕事が楽になったらね、笑顔のひとつも自然にこぼれようものなんだけど」



マルぼん「そんなママさんのために素敵な機密道具を用意しました。こいつです」



ママさん「大きな鉄の塊にしか見えないんだけど」



マルぼん「『万能家事ロボットO-K3M』。こいつはどんな家事でもこなすことができるロボットなの。その技術もなかなかのもので、洗濯ならば一流クリーニング店の職人並、育児なら真夏にパチンコ屋の駐車場に停めた車の中に我が子を放置しない人並の技術を持っているのです。おまけに、料理器具なんかも全て内臓されているの」



ママさん「なるほど。こいつに全ての家事を押し付けるって寸法ね。すごいわーまさに主婦の強い味方ね」



マルぼん「そう、まさに主婦の強い味方です。お客さんがたくさん来て食事の用意が大変なときも、雨が続いて洗濯物がたまりにたまったときも、ゴミ屋敷と化したわが家を掃除するときも、どんなときでも力を貸してくれる、主婦の強い味方」



パパさん「バーロー。なんでぇ、この鉄の塊は。そうか、季節外れのサンタさんのプレゼントだな。ようがす。サンタさんのご好意に甘えまして、こいつをとっとと売り払ってやりやす。売ったお金で、げっへっへっ」



パパさんの愛人「あたいにネックレスを買ってくれるのねえ」



 「O-K3M」を運び去ろうとするパパさん。



ママさん「アンタ! どこまでクズなの!」



パパさん「おれ自身が気のすむまでさ」



 パパさん、ママさんの抗議にも耳を貸そうとせず、とにかく「O-K3M」を運ぼうとします。でも、「O-K3M」はパパさんの倍くらいの大きさで、その上重く、容易に運ぶことはできそうにありません。見かねた愛人がパパさんを手伝いに入ります。



隣のおばさん「なんだいさっきからうるさいね! 国家権力呼ぶぞ!」



 「ドアを開ける音がうるさい」「私を陰でバカにしている」「呪ってやるは口癖。自分自身に言っている。それなのに警察に訴えるなんて、そちらが非常識」など、毎日毎日ママさんに文句を言っては引越しを迫る隣のおばさんが、騒動につられてやってきました。「うるさくて私の耳は壊れそう。慰謝料として、この鉄の塊はいただくよ」と、パパさんを手伝い始めるおばさん。



ママさんの上司「こんな卑猥な鉄の塊を……なんてハレンチな女だ!」



 ママさんにしつこく交際を迫り、断られるといやがらせをはじめるパート先の上司も、騒動につられてやってきました。



「なんてハレンチな鉄の塊だ! 私が処分する」パパさんを手伝い始める上司。



 パパさん、パパさんの愛人、隣のばばあ、いやな上司、今年で23歳になるのに「はーい」「ばぶー」「ちゃーん」しか言わない我が子……ママさんがこの世で嫌う人間上位5名が全員がこの場に集まり、「O-K3M」を運び出そうとしているのです。



ママさん「あんたたち、止めなさいよー!!」



 がたっ。集団で攻められた「O-K3M」はバランスを崩し、下でがんばっている4人のほうへ倒れていきました。ぐしゃ。いやな音が響きました。



 マルぼんは、ママさんの敵を葬り去った「O-K3M」は、どんなときでも力を貸してくれる主婦の強い味方であると思いましたが、法廷ではむしろ敵方に有利に働いてしまったので、やっぱりいまいちだと思いました。

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