故郷へ

マルぼん「ナウマン象が田舎に帰るんだって」



ヒロシ「ああ。借金がどうしようもなくなってんで、家族で帰るんだってさ。たしか、今日の深夜に出発するとか言っていたよ」



 なんか札束とか数えているヒロシ。



ヒロシ「債権者っていうからヤクザみたいな人かと思いきや、けっこうはずんでくれたよ。世の中、悪人なんていないんだ」



 明日から新しいガキ大将が登場しそうです。



ヒロシ「でもいいなぁ。帰省か。僕も帰省したいなぁ」



マルぼん「すればいいじゃないの、帰省ぐらい」



ヒロシ「うちの家は代々微笑町に住んでいるからね。そもそも帰省する場所がないんだ」



 江戸時代は罪人の流刑地として、強制労働のメッカと言われていた微笑町。現在の住人の多くも罪人の子孫なので、田舎がある人はほとんどいません。



マルぼん「あ、でも、最近、新しいパパさんになったあのおじさんは、たしか生まれ故郷が南のほうだと言ってたよ。そこに連れていってもらいなよ」



ヒロシ「なんか故郷のことは話したがらないから無理じゃないかしら」



マルぼん「そいならこれを使ってみるか。『帰省奇声拡声器』」



 この『帰省奇声拡声器』を使って奇声をあげる。その奇声を聞いた人は、急に里心がついて、田舎に帰りたくてしょうがなくなる。



 マルぼんとヒロシは、『帰省奇声拡声器』を持ってパパさんの部屋へ。寝ているパパさんに向かって『帰省奇声拡声器』を向けて



ヒロシ「んぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



マルぼん「ぬぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



パパさん「なんだ、うるさいな」



ヒロシ「おい、なんにもならねえぞ」



マルぼん「パパさんの『故郷のことは忘れたい』という意識が強すぎるんだ! もっと寄生を浴びせかけなきゃ!」



ヒロシ「んぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



マルぼん「ぬぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



ヒロシ「んぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



マルぼん「ぬぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



ヒロシ「んぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



マルぼん「ぬぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 近所からの苦情も無視して、マルぼんとヒロシは寄生を発し続けました。そのかいもあり



パパさん「おし。車に乗ってくれ。行こう。故郷へ」



ヒロシ「やった! 帰省だ、帰省!」



 マルぼんとヒロシとパパさんを乗せた車は一路、パパさんの故郷へ! で、しばらく後、車はダムの近くにさしかかったのです。



ヒロシ「あれ、ダム? お父さん、ダムだよ!?」



マルぼん「パパさん、このまま進んだら…ダムにドボン!ですぞ!」



パパさん「ここなんだ」



マルぼん「え」



パパさん「このダムの底に、私の故郷の村があるんだ」



 パパさんは、アクセルを勢いつけて踏みました。車は、パパさん故郷に向かって突き進みました。止まることなく、突き進みました。マルぼんは、『帰省奇声拡声器』の効果は絶大だと

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る