合法投棄

ヒロシ「このタンスいらないな、捨てよう」



警察「チミ! こんな巨大なものを無料で捨てようなんて、ムシがよすぎるですぞ。ちょっと来たまえ!」



ヒロシ「てなことがあって、警察に連行され『アジトはどこだ!』『仲間は何人いる!』『首謀者は!?』と尋問されたんだ! 僕は、ゴミを自由に捨てる権利がほしい! ほしいんだ!」



マルぼん「あきらかに別件逮捕されているよ!  これに懲りたら、アパートの一室で爆弾作っている人たちと付き合うなよ!」



 しかしまぁ、小学生にしてポリスに指紋が記録されてしまったヒロシを不憫に思ったマルぼんは、なんでも自由に捨てることができる機密道具『捨てるハット』を用意しました。



マルぼん「この帽子を被っていれば、なにを捨てようが誰にもとがめられない。怒られない。許してもらえる」



ヒロシ「うわーよい機密道具だね」



ママさん「ヒロくん」



ヒロシ「あ、母さん。どうしたの」



ママさん「おばあちゃん、今日が誕生日で…70歳になるの」



ヒロシ「あ…」



 食糧難の続く微笑町では、人は70歳になると学校の裏山に行かねばなりません。そこで、なにも食べずなにも飲まず、ただ死を待つのです。



ママさん「おばあちゃんね、一番可愛がっていたヒロシに、山に連れて行ってほしいって」



ヒロシ「う…ん」



 ヒロシは、玄関で待っていたおばあさんを背負い、家を出ました。



ヒロシ「ばあちゃん、寒くない?」



ばあちゃん「ヒロシの背中があったかいから、大丈夫だよ」



ヒロシ「ごめんよ、ばあちゃんごめんよ」



ばあちゃん「気にするでねえ。気にするでねえ」



 おばあちゃんは、にっこりと微笑んでいました。ヒロシや、周りの人への恨み言もなく、微笑んでいました。マルぼんは『捨てるハット』の効果は絶大だと思いました。



 やがて、学校の裏山が見えてきました。

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