復刻ガス

ヒロシ「今日は父さんと母さんの結婚記念日だ。なにかプレゼントをあげたいなぁ」



マルぼん「え、先週も結婚記念日だったような」



ヒロシ「あれは、6番目の父さんとの結婚記念日。今日は、今の父さんとの結婚記念日なんだ。なんかさ、いい感じのプレゼントはないかなぁ」



マルぼん「『思い出』なんかいかがだろう」



ヒロシ「『思い出』…?」



マルぼん「『復刻ガス』。このガスを散布すると…」



ヒロシ「げほげほ。狭い部屋で、ガスを散布するなよ…って、ああ!」



 ガスが晴れると、ヒロシの部屋の様相はがらりと変わっていました。



ヒロシ「これは、僕が幼い頃の部屋だ! 懐かしい!」



 部屋の真ん中では、小さな男の子が「パンを踏んだ娘」という絵本を読んでいます。



ヒロシ「昔の僕だ! 愛らしいなぁ!」



マルぼん「『復刻ガス』は、散布した場所の半径5メートル以内を、一時的にだけど、昔の様相に『復刻』してしまうんだ。そのときその部屋にいた人の幻影がでてくるおまけつき。調整すれば、戻す年数も決めることができる。こいつで、パパさんママさんの寝部屋を2人が新婚のころの状態に戻す。2人は新婚時代を思い出し、燃え上がり、妹か弟誕生という運びだ。最高のプレゼントやろ」



 マルぼんとヒロシは、さっそく、パパさんとママさんのを寝部屋に呼んで、『復刻ガス』を散布しました。



ヒロシ「さぁ、ガスが晴れてきましたよ!」



 ガスが晴れて、パパさんママさんの新婚時代に復刻された寝部屋。そこは部屋のあちこちに血が飛び散っていて、そこには、なにかを調べているらしい警察官がたくさんいました。部屋の隅では、若々しいパパさんとママさんが呆然とした表情で立ち尽くし、部屋の真ん中に置かれていた『布をかけられたなにか』を見つめていました。



 マルぼんは『復刻ガス』の効果は絶大だと思いました。

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