人妻と独居老人

ママさん「さぁ、晩御飯のコンソメスープができましたわよ。そうだ、ヒロくん。隣に住んでいる『妻に先立たれて、ほかに身内もなく、現在1人暮らしの資産家の初老の男性』にこのスープを届けてきてくれない? そろそろ点数を稼いでおかないと」



ヒロシ「微笑町は、家と家との間が数百メートルあるくらい広大な町。初老の男性の家に届く頃には、スープは冷め切っております、母上!」



マルぼん「はい、どんなものでも冷めなくなる『永久ほっとオイル』。このオイルに少しでも触れたものは、どんなものでも永久に冷めなくなるんだ」



 オイルをスープにたらすマルぼん。「ほんとに冷めないのかな」と半信半疑でスープを初老の男性の家に届けに出かけるヒロシ。数時間後。



ヒロシ「スープ冷めなかったよ!」



 スープに魅せられてしまった初老の男性からもらったお土産をどっさり抱えたヒロシが帰ってきました。



マルぼん「『永久ホットオイル』の効果は絶大なんだよ」



ママさん「にしても、隣人の初老の男性、お土産どっさりくれたわね。これまでの点数稼ぎのおかげで。このままがんばって、どんどん点数稼いで、結婚して、とっとと死んでもらって、遺産がっぽり」



初老の男性「信じてたのに!」



ママさん「ゲゲーッ!? 隣に住んでいる『妻に先立たれて、ほかに身内もなく、現在1人暮らしの資産家の初老の男性』! なぜここに!」



初老の男性「おまえを殺して俺も逝く!」



 刃物のようなものを振りかざす初老の男性でしたが、そこはさすがママさん。刃物のようなものを奪い返し、逆に初老の男性を刺殺!



ヒロシ「人殺しや!  マルぼん、警察に通報せえ!」



ママさん「親を庇う気配カケラもなし!?」



 ママさん。窓をぶちやぶって逃亡です。ヒロシの通報により、町のあちこちに包囲網ができあがっていたのですが、そこはさすがママさん。15歳になるまで山でオオカミに育てられていた経験を活かすべく、山に逃げ込みました。



ママさん「人の噂も七十五日、それくらいたてば、きっと大丈夫。きっと大丈夫よ。事件も風化しているわ。それまで山に隠れていよう」



 時効制度がなくなくると法律で決まったのは、それから数日後のことでした。

町には今日もママさんの顔写真&懸賞金の金額が載った手配書が大量に貼られ、あちこちに懸賞金狙いのハンターがたむろしています。マルぼんは、ほとぼりまで冷まさなかった『永久ホットオイル』の効果は絶大だと思いました。

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