テンプレヒロインルナちゃん登場
ルナちゃん「見て、あの雲、人の顔に見えるわ! あの壁のしみも! これは奇跡よ! 神が起こしたもうた奇跡なのよ、ウキーッ!」
ヒロシ「どうしてうちのヒロインはあんなのなんだろう。『家族か夫になる男以外に姿を見せたら死刑になる』とか言って、常にパンダのキグルミでその身を包んでいるし」
マルぼん「ヒロインがたまたま変な宗教の信者だっただけだ。気にするな」
ヒロシ「僕はありがちなヒロインと恋におちたいんだ。あんなのいやだよ!」
マルぼん「『ヒロイン手帳』。たとえば、この手帳に『おしとやか』と書くと、ヒロインがおしとやかな性格になる。この手帳に好きなようにかいて、ルナちゃんを自分好みにしてしまいな」
『ヒロイン手帳』をもらった僕は、迷うことなく『ツンデレ』と書きました。それから数年後。色々あって、僕とルナちゃんは付き合うことになりました。交際を始めた当初は「さぞかしすごいデレをみせてくれるんだろうなぁ」とか思っていたんですが、ルナちゃんはデレるどころか普段よりきつい一面を見せてくるようになりました。
自分の好みの候補者への投票を強要してきたり、怪しげな毛の入った水を1リットル10万円で売りつけてきたり…そんな生活が50年続きました。この生活がまんざらでもないように思い始めた頃、彼女は逝きました。病気で、あっさりと。
妻が亡くなってしばらくたった後、妻と親しかった女性が「『自分が死んだら夫に渡して欲しい』と預かっていた」と、たくさんのノートを持ってきてくれました。それは彼女の日記帳でした。適当に選んだ一冊を開いてみると
○月×日
ヒロシさんが私の作った料理をおいしそうに食べてくれました。幸せです!
×月○日
ヒロシさんと一緒にお出かけ。ヒロシさんと歩くと、いつもの道もパラダイスに見えちゃいます!
△月▼日
体調が悪いけど、ヒロシさんの顔を見たら元気いっぱいです!
付き合い始めてから、彼女が入院するまでの間つけられていた日記は、全てが上記と似た内容でした。妻は、ルナは私のことを愛してくれていたのです。私は胸がいっぱいになりました。胸をいっぱいにしたその想いだけで、私は残りの人生を1人で生きていけるとお思いました。しかしなぜ、彼女は死んでから日記を公開するようにしたのか。それだけが疑問です。
マルぼん「ヒロシってば相変わらず字が下手だな。これカタカナの『シ』だよね
え、『ツ』なの? 『シ』じゃなくて『ツ』? どうみても『シ』だよ? これじゃ『ツンデレ』じゃなくて『シンデレ』になっちゃうよ。これじゃあルナちゃん、シンでからデレるヒロインになっちゃうよ」
マルぼんは『ヒロイン手帳』の効果は絶大だと思いました。
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