眠らない微笑町
諸事情(ママさんの新しい彼氏関係)で微笑町の繁華街に引っ越した大沼家。右を向くとネオン、左を向いてもネオン、振り返ればネオンで、夜も明かりが途切れることがなく、よほどの精神力がない限り、眠ることなど不可能。
当然、われらの大沼ヒロシも眠れません。だって精神力とかないから!
ヒロシ「うう。ここのところ夜眠れないせいで、昼間にどうしても眠ってしまうよ。学校でも眠りまくり。おかげで担任教師に『この落ちこぼれめ!』『腐った果実め!』『なんのために生まれてきたんだい。そしてなんのために死んでいくんだい。そもそも命ってなに!?』と罵られまくりさ」
マルぼん「近いうちに休職しそうだね、その担任」
そんなわけで、マルぼんはヒロシが眠られるようにするため機密道具をだしました。
マルぼん「『完全光遮断アイマスク』。このアイマスクはいかなる光も完全に遮断してくれるんだ。たとえ太陽のすぐ近くであろうが、こいつをつければマックロクロスケさ!」
ヒロシ「どれどれ(アイマスク着用)。おお、真の闇! これならゆっくりと眠れるよ」
マルぼん「おやすみ、ヒロシ」
ヒロシ「おやすみ……」
深くてやさしい闇に包まれて、心地よい眠りにおちるヒロシなのでした~(今日のわんこ風)。そして数時間後。
ヒロシ「う~ん、むにゃむにゃ。よく寝たなぁ。眠りまくったら腹が減ったよ。なんか食おう」
部屋をでて台所へ向かうヒロシ。途中、ママさんの部屋の前を通りかかると、なかから声が。声といってもあれですよ、普通の声やないですよ。ほら、あの、桃色な声。甘い声。あふんあはんとかそんな感じの!
ヒロシ「母さんのやつ、またも男を連れ込んでいるな、やれやれ。少しは息子の教育についてとか考えて欲しいよ。今度はいったい、どんな男を連れこんだんだ」
ママさん「ああっ! マルぼんさん!」
マルぼん「お、おくさん! ぼかぁ、もう!」
ヒロシ「!」
これまでママさんの爛れた交友関係を何度も見てきたヒロシ。ちょっとやそっとのことでは、気にも留めない少年なのですが、しかししかしだがしかし、親友であるマルぼんが相手だったのはショックが大きすぎたようで
ヒロシ「……」
腹が減ったのも忘れて、自分の部屋に戻ります。うつろな目で。
ヒロシ「……」
机の引き出しから、自分・ママさん・パパさん(当時)・マルぼんで映った家族写真を取り出すと、画鋲で刺し始めるヒロシ。ぷすぷすぷす。ぷすぷすぷす。うつろな目で、ひたすら写真に画鋲を刺しまくるヒロシ。ぷすぷすぷす。ぷすぷすぷす。ぷすぷすぷすぷす。その顔には表情がありませんでした。ぷすぷすぷすぷすぷす。
マルぼんは、ヒロシの心にまで闇をもたらした『完全光遮断アイマスク』の効果は絶大だと思いました。
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