禁煙

ルナちゃん「ナウマン象さん、なんだか最近機嫌が悪いわね」



ヒロシ「触るもの皆傷つけるような勢いで、周囲のものに八つ当たりをしているみたいだね。奥さんが泣いていたよ。『主人はかわってしまいました』って」



金歯「聞くところによると、禁煙しているらしいでおじゃるよ」



ヒロシ「また禁煙?  これで何度目だよ。どうせ失敗するんだから、やめときゃいいのに」



ナウマン象「なんだカスども。みんなで集まって、また俺の悪口か。俺 の わ る く ち か」



一同「ちがいます、ちがいます」



ナウマン象「ひ、ひひひ。みんなみんな俺の悪口。悪口。また悪口。貴様ら、ギッタンギッタンにしてやるぞう!」



ヒロシ「堪忍してえ!」



ナウマン象「うるせえ、俺は今、イライラしているんだ!  喫煙してえ、喫煙してえ、喫煙してえよ!」



金歯「なら禁煙などやめればいいでおじゃろう!」



ナウマン象「嫁と娘が、喫煙する俺を、汚いものでも見るような目で睨むんだ。やめることなどできるものかよ。ああ、ちがう。ちがうんだよ、おとうさんは汚いものじゃないんだ。逃げないでおくれ、逃げないでおくれ。抱きしめさせておくれ。オトウサンハキタナクナイ。キタナクナイ」



ヒロシ「ナウマン象が壊れた!」



 そんなわけで、マルぼんはナウマン象が禁煙できるように、わざわざ機密道具を出してあげることにしました。



マルぼん「こいつは一見『ただ単に禁煙と書かれただけの紙』に見えますが、『絶対禁煙はり紙』という機密道具。この紙を貼ったら、その家の人は絶対に喫煙できない!  タバコどころか、普通の煙もだせない」



ナウマン象「よし、そいつをよこせ」



 ナウマン象、さっそく自宅に『絶対禁煙はり紙』を貼ります。



ナウマン象「しかしこの紙切れ、本当に効果があるのかよ。どれ、実験がてら一服……」



憲兵「憲兵である!」



ナウマン象「え!?」



憲兵「先ごろ、我らが偉大なる町長閣下のご子息であらせられるボンソワーレよみひらさか様が、焚き火の煙を吸い込んでむせるという痛ましい事件があった。このような事件を二度と起こさぬため、本日ただいまより、微笑町では一切、煙を出すことが禁止された!  違反したものは収容所行きである!」



ナウマン象「お、おたすけー!」



ヒロシ「ははは。ナウマン象、強制連行だよ。はははは」



マルぼん「たいへんだ、庭で焚き火をしていたママさんが強制連行された!」



ヒロシ「ええ!?」



マルぼん「『絶対禁煙はり紙』の効果が絶大すぎたんだ」



ヒロシ「お、おのれ町長め。ちくしょう、おかあさんの敵をとってやる!」



憲兵「反逆罪で強制連行!」



 マルぼんは反逆の狼煙まで上げることが出来なくしてしまった『絶対禁煙はり紙』の効果は絶大だと思いました。

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