マルぼんの生まれた日

役者『お願いです。なんでも、なんでもしますから、あの薬をー!!』



監督『ふふふ。ならば、スタントなしで爆発の中を食いくぐっていただこうか』



マルぼん「うん? ヒロシくん、何を観ているの?」



ヒロシ「『麻薬撲滅推進映画 友情中毒 恋の処方箋くださいっ』のメイキングDVDさ。おもしろいよ」



マルぼん「へえ。そういうの、おもしろくないと思っていたんだけど、楽しめるもんなんだな。あ、そうだ。どうせなら、自分のメイキング映像でも見る?」



ヒロシ「そんなの見ることができるの?」



マルぼん「できるよ。このモニター。このモニターからでているコード。このコードはどんなものにも差し込むことができて、モニターには差し込んだものの作られる過程が映し出される。もちろん、人間だって例外じゃないって」



ヒロシ「人間のメイキング映像ってエロじゃん!  小学生で、どうやって子供ができるかなんてカケラも知らないという設定の僕にとっては、毒だよ、毒。そんなの子供の頃から見てたら、将来は残念な人間になるよ僕!  そんなことより、マルぼんのメイキング映像がみたいよ」



マルぼん「マルぼんはどこかの工場で大量生産された、量産型の怪生物。試験管がお母さんなわけで、見てもおもしろくもなんともないよー」



ヒロシ「それでも見たいよーみたいよー」



マルぼん「仕方ないなー。一度だけよー。さっそくコードを繋いで…ほら、モニターに映像がうつし…だされ…」



ヒロシ「うん?  工場とかじゃないよね、映っているところ。それに…なんか赤ん坊とその親らしき若い男女が」



男『あちゃー生まれちゃったなー』



女『望まぬ子なのにねーどうする?』



男『前、ネットで「いらない生き物買います」ってのを見たよ。たしかどこかの研究所。そこに連絡を…』



マルぼん「……なんで勝手に消すのさ、ヒロシくん」



ヒロシ「見ないほうがいいよ、絶対。ね、見ないほうがいい。そうだ、ドンジャラしようよ! 楽しいよ!」



マルぼん「ヒロシ」



ヒロシ「は、はい!?」



マルぼん「うるさい」



ヒロシ「はい、はいー!!」



マルぼん「己を作ったメーカーに聞きたいことがあるので、しばらく未来の世界に帰ります」



 それからそれから。



マルぼん「ただいま帰宅しました」



ヒロシ「あ。おかえり。あれ、しばらく帰らないとか言っていたよね」



マルぼん「マルぼんを製造したみらいのせかいの製薬メーカー『人間大好き社』は素晴らしい会社です」



ヒロシ「え、そんなこと聞いていないよ?」



マルぼん「マルぼんを製造したみらいのせかいの製薬メーカー『人間大好き社』は素晴らしい会社です」



ヒロシ「マ、マル…」



マルぼん「マルぼんを製造したみらいのせかいの製薬メーカー『人間大好き社』は素晴らしい会社です」



ヒロシ「……」



マルぼん「マルぼんを製造したみらいのせかいの製薬メーカー『人間大好き社』は素晴らしい会社です」



ヒロシ「あ」



マルぼん「マルぼんを製造したみらいのせかいの製薬メーカー『人間大好き社』は素晴らしい会社です」



ヒロシ「マルぼんの首筋にあった星型の痣が……消えている!! ということは、このマルぼんは」



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