機会があれば、ああ機械
ヒロシが学校から帰るなり机に向かい、なにかをはじめました。
普段は絶対に見ることのないレアな光景に興味を隠し切れなくなったマルぼんは、思い切って理由を尋ねてみました。
ヒロシ「ロボットの設計図を描いているんだ。人間と友達になれるロボットの設計図を」
どうやら学校の授業でロボット関係のなにかを学んで、その影響を受けたみたいなんですが、マルぼん、正直言いますと感動しました。感激しました。
だって、今まで「二十歳を越えても衣食住は無料なんでしょ?」「パンがなければデザートを食べればいいのに」なんて珍発言をしていたヒロシが自分からなにかをしようとしているんでうから。
マルぼん、今回はヒロシを温かく見守ることにしました。
さっきチラッと設計図を覗いてみたら「燃料いらずで無限に動くハイパーエンジン」「あらゆる攻撃を防ぐ無敵装甲」「一撃でビルディングを破壊できるプラズマブラスター」「僕がピンチになったときの最終手段の自爆スイッチ」「核」なんて、「え? さっき友達ロボットって言ってた……」とか色々ツッコミたくなる言葉がたくさん書いてありましたが、マルぼんは見守ります。ええ。見守りますとも。
しばらくのち。ヒロシのロボットが完成したようです。
なんかダンボールとかミニ四駆のモーターとかでできていて、水鉄砲とか装備してます。
当然ですが、動きません。ピクリとも。
ヒロシ「設計図のとおり作ったのに、なぜ!? ハイパーエンジンは!? 無敵装甲は!? 核はー!?」
マルぼん、ノーコメントです。
しかし、これまで自分から動こうとしたことがほんとどなかったヒロシが、珍しく自分ではじめたこと。
なんとかしてやりたいというのが、マルぼんの正直な気持ちだったりします。
機密道具で、本当のロボットにしてやることもできるのはできるんですが、時間がかかります。
なにか良い案はないか考えるべく、マルぼんは散歩に行く事にしました。
で、ふと町の繁華街を通りかかったときのこと。
路地裏から、なにやら呻き声。なにごとかと覗き込んでみると、腹から血をながして唸っている中年男が1人。
その服装は、近くの刑務所の受刑者が着る服でした。そういえば脱獄したやつがいるとかいないとか、逃げた時に撃たれたとか撃たれてないとか、そんな話を聞いたような。
マルぼん「これだ!」
マルぼんは、ヒロシの作ったロボに若干の改造(おもに内部の部品)を加え、自由に動き回れるようにしました。
部屋中をちょこまかと動きまわるロボの姿に、ヒロシ大喜び。
ヒロシ「なんだなんだ。ちゃんと動くじゃないか。やっぱり僕の設計図は完璧だったんだね」
ロボ「ガ…ガガ……タスケテ」
マルぼん「動きが鈍くなったね。そろそろ燃料をあげた方がいいんじゃない。ほら。おにぎりとか。パンとか。水とか」
ヒロシ「たんなる食料じゃないか。それに、ハイパーエンジンで燃料いらずなんだよこいつは」
マルぼん「でも、たぶん、自由になる前はロクなもの食べてないだろうし……そろそろ」
ヒロシ「動きの鈍くなった電気製品なんて、こうすれば治るんだよ」
ガンガンとロボの腹部を蹴りはじめるヒロシ。
ロボ「グムッ」
マルぼん「そ、そこは縫合したばかりだから、傷口が。傷口」
ヒロシ「縫合? 溶接の間違いだろ? あれ。オイルが漏れてきたよ。変だな、赤いよ。血みたい」
マルぼん「……」
ヒロシ「まぁいいやー。放っとけば直るよね。さぁ、ロボ! 掃除して掃除」
ロボは現在納屋にしまわれていますが、どうなったかはマルぼんは知りません。
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