俺がアダムでお前がイブで
ルナちゃんが訪ねてきました。今度は何の用?
ルナちゃん「このままいったら人類は確実に滅んでしまうわ。そこで私は、人類を永遠に存続させるための素晴らしい計画を考えたの」
また壮大な計画。マルぼん呆れてモノもいえません。少なくとも、マルぼんのいた未来の世界では人類は残ってますし。みんな常に暗い表情ですけれども。
ルナちゃん「愚者には想像もつかないその計画の名前は……『プロジェクト・ノアの箱舟』!」
マルぼんには、名前で内容がバレバレに思えました。
ルナちゃん「これはね、あらゆる生物のツガイを一同に集めて(中略)そして新天地に新たなる楽園を築くのー!」
ありがち。ありがちです。
ルナちゃん「そこでマルちゃんには、機密道具を使ってつがいを集める手伝いをしてもらいたいのよ。おねがい。ね?」
断ったら?
ルナちゃん「散布します」
色々な意味で危ないのでします。協力。
ルナちゃん「ありがと! だからマルちゃん、だーいすき!」
そ、そこまで言われたら、照れるなぁ。で、どんな機密道具が必要なの?
ルナちゃん「えっとね。ターゲットに決めた人間の戸籍を抹消したり死亡扱いにして、ふいに消えても世間が怪しまない状況を作り出す機密道具とか」
マルぼんは、ルナちゃんとともに「新時代のアダムとイヴ」を探すべく町へ出ました。
ルナちゃん「新時代のアダムとイヴに必要なのは、強い生命力と生への執着心。それから、ふいにいなくなっても誰も気にしない立場ね」
なんか意外とすぐに見つかりそうな気が。
怪しい外国人「ソコノマルイ人」
うん? なんですか?
怪しい外国人「ナゼカ永遠ニ使エル、不思議ナテレホンカードイラナイ? 安イヨ?」
いりません。いりません。
怪しい外国人「ナラ、ナゼカ無料デ使エル、不思議ナ携帯電話イラナイ? コレモ安イヨ?」
いりません。いりません。
怪しい外国人「ナラ、ソレナラ、服用シタダケデ強クナッタ気ガスル草イリマセン? コレハ高イケド」
いりません。いりま……
ルナちゃん「ください。おいくらかしら?」
ルナちゃん……一応は小学生なんだから……
怪しい外国人「マイドアリー。三万円ダヨー」
ああ、もう。ちょっとブラザー、ビザ! ビザみせて!
怪しい外国人「家ニ忘レテ、今持ッテナイヨー。アルンダヨ? 家ニアルンダヨ? 不法滞在ジャナイヨー」
ルナちゃん「面倒くさいから、もういいか」
賛成。楽でいいやー。
ルナちゃん「ねえ。ブラザー。ちょっと一緒に来てくれない?」
怪しい外国人「エ? ナニナニ?」
新時代のアダム、確保!
翌日。マルぼんは、今日も、ルナちゃんとともに「新時代のアダムとイヴ」を探すべく、今日も町へ出ました。
アダムは昨日みつけたので、今日はイヴを探そうと思います。
2人で駅前を歩いていると、怪しい音楽にのって、象や髭のオッサンのお面を被って踊り狂っている人たちが。
怪しい女性「そーんしーそんしーそんしそんしそんしー♪」
前にルナちゃんが熱心に布教活動(ヒロシを拉致して洗脳、など)していた宗教の人たちでした。
ルナちゃん「私もあの宗教にはまっていた時期があったなぁ」
ああ。ルナちゃん、マインドコントロールが解けたんだね。
ルナちゃん「人が人を拝むというのは間違っていると気付いたの。やっぱり、拝むなら神。やっぱり神。特に、ギュルペペ神サマが最高ね。ギュルペペ神サマは、私にだけ見える神サマなの。人の世の不浄さが最高まで達した時、天から100人の使徒を引き連れて浄化活動を(中略)私はギュルペペ神がラジオを通して伝えてくれた命令を実行するべく(中略)つまりは私こそが聖戦士で(中略)これは出刃包丁じゃなくて聖剣で(中略)反逆する者は全て悪魔なので容赦なく(中略)そのためにもイヴを見つけ出さないと!」
そう言うとルナちゃんは、『なんかクラゲのバケモノが触手で人々の首をちょんぎっている』絵が描いてあるグチャグチャに丸められた紙をマルぼんに手渡してきましたが、マルぼんは怖いので捨てました。速攻で。
結局、「新時代のイヴ」は見つからず、途方に暮れるマルぼんとルナちゃんでした。
そうこうしていると、ルナちゃんが「こうなったらそこらへん歩いている女子高生でもいいや。はい。クロロホルム」なんて不吉なことを言いながら、変な臭いをするハンカチーフを手渡してきたので、方向修正をするべく、マルぼんは思わず「どうせならルナちゃんがイヴになればいいじゃん」と言ってしまいました。
するとルナちゃん、いままでに見たことない嬉しそうな表情で「それだ!」と叫んで、その場からダッシュで失踪。
昨日見つけて、イヴが見つかるまでしかるべき場所で眠ってもらっていた例の新時代アダムな外国人男性や、つがいで集めた動物たちも姿を消していました。
おそらくルナちゃんたちは、旅立ったのでしょう。人の手が及ぶ事のない、楽園となるべきところに。
ひょっとしたら、いつか人類が滅びてしまった時、彼らやその子孫たちが、本当に地球の支配者になっているかもしれません。なっていないかもしれません。
それは、素敵な素敵な現代の、いえ、未来のお伽噺なのかもしれません。マルぼんはそう思いました。
今朝の新聞より。
「捜索願の出ていた女子小学生、富士の樹海で無事保護。女子小学生を連れまわしていた外国人男性逮捕。男性は意味の分からない供述をしており、ビザを所持していないことから、入国管理室も捜査開始。女子小学生は錯乱している様子で、不可解な発言が多く、2~3日入院することに」
ぶっそうな世の中です。
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