な、なんとヒロシに彼女ができた
神の奇跡か仏の慈悲か、ヒロシに彼女ができました。もちろんルナちゃんではありません。いままでの物語にまったく絡んでこなかった女性・スバルさん(自称)です。
マルぼんはスバルさんにヒロシのどこが気に入ったのか尋ねました。
スバルさん「ヒロシさまがメスブタとくっついたから」
一瞬、意思の疎通が図れない人だと思いましたが、話をよく聞くと真相がわかりました。
スバルさん(仮名)はとあるアニメの大ファンだったのだそうです。そのアニメの主人公の名前がヒロシ。ヒロシは親友のスバルと、友情と努力と勝利のたくさん詰まった大冒険を繰り広げていました。
スバルさん(仮名)は、ヒロシとスバルの友情が愛情に見えてきて、いつしか2人が性別を超えて恋人になることを願い始めたそうです。
しかしヒロシは、旅の途中で知り合った女の子と恋仲になり、最終回では結婚して幸せに暮らしているのが描かれていたとか。
スバルさん(仮名)「ヒロシさまとスバルが結ばれるのは、スバルという名前になった私が、ヒロシという名前の人と結ばれるしかないのです。それだけが、ヒロシをメスブタから解放させる唯一の方法なんです」
こんな理由だったわけなのですが、ヒロシは大喜び。毎日デートを繰り返しているのですが、最近、顔がすぐれません。
ヒロシ「会話のキャッチボールができないんだ」
ヒロシが「空がきれいだね」と言えば、スバルさんはいかにヒロシとスバルがお似合いでメスブタがダメかを語る。ヒロシが「だいぶ暖かくなってきたね」と言えば、スバルさんはいかにヒロシとスバルがお似合いでメスブタがダメかを語る。ヒロシが「あの漫画のヒロイン、ドラマCDとアニメで声優が代わったね」と言えば、スバルさんはいかにヒロシとスバルがお似合いでメスブタがダメかを語る。そんな感じなのだそうです。
現実を生きるヒロシと、夢の中を生きるスバルさん(仮名)では、会話が絶望的にあわないのです。マルぼんは、どんなにつりあわない2人でも、叩けば途端に共通の会話が見つかる機密道具『話太鼓』を取り出しました。
マルぼん「会話をするときにこの太鼓を叩きな。きっと、共通の会話が見つかるから」
ヒロシは、その日のデートに『話太鼓』を持っていきました。
デート現場の、町外れの廃墟。
スバルさん(仮名)「ヒロシさま、その太鼓はなに?」
ヒロシ「この太鼓を叩くとね、いいことが…」
廃墟が突然崩れ始めたのは、そのときでした。ヒロシとスバルさん(仮名)は、瓦礫の下に閉じ込められてしまったのです。
スバルさん(仮名)「うう…いたたた…」
ヒロシ「大丈夫ですか?」
スバルさん(仮名)「た、助けは…?」
ヒロシ「きっと、今に来てくれます。助けは来てくれます」
スバルさん(仮名)「そ、そうですよね。助けは来てくれますよね」
ヒロシ「助けは、来ます」
スバルさん(仮名)「早く来て、助け。助け…」
ヒロシ「助け…」
こうしてヒロシとスバルさん(仮名)には、「そのうち来るかもしれない救助隊」という共通の話題ができたのでした。
マルぼんは『話太鼓』の効果は絶大だと思いました。結果的に二人は結ばれました。よかったねよかったね。幸せだね。
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