わかりあい・宇宙

 ナウマン象一家が、家をリフォームしたとかで、マルぼんとヒロシはさっそく遊びに行きました。



ヒロシ「うわー。トイレにシャンデリアとかある。趣味わりー」



マルぼん「玄関にはガーゴイル石像だ。趣味わりー」



ナウマン象「そうけー俺の家は最高けーがはははは」



ヒロシ「おや? このスイッチはなに?」



ナウマン象「自爆スイッチだよ。押したら家が爆発し、半径数キロは10年間草木も生えない状態になる。頭がふたつあるカエルが発見されたりするようになる」



ヒロシ「へえ。じゃ、押していいよね」



ナウマン象「はぁ?  貴様、話を聞いていたか? 押したら爆発するんだ。みんな死ぬんだぞ!?  おまえも、おまえの愛する人も!!」



ヒロシ「へえ。じゃ、押すね」



ポチッ



 微笑町は、紅蓮の炎に包まれました。マルぼんは少しも悪くありません。すべて、頭の回転が鈍いヒロシの責任なのです。



ヒロシ「だって普通、スイッチを押しただけで家が爆発するなんて想像できないじゃん!」



マルぼん「『自爆スイッチだ』と断言していたぞ、今は亡きナウマン象は!  そんなもん押したら、家も町もたくさんの思い出もまとめて吹き飛ぶということくらい、理解しなさい!」



ヒロシ「理解ってなに? 食べれるの?」



マルぼん「ダメだこりゃ!!」



 こまった時の機密道具頼み。マルぼんは『頭脳明石』という機密道具を用意しました。この機密道具を脳に設置(要・外科手術)すると、頭の回転があの日あの時あの娘と乗ったあのメリーゴーランドの如く速くなるのです。これでヒロシもなんでも理解できる、PTAも土下座して靴を舐めて許しをこうほどの優秀児童と化すでしょう。



 幸いにもマルぼんは「ブラックジャック」の愛読者だったので、『頭脳明石』の埋め込みは72時間足らずで行えました。



マルぼん「オペ完了でーす。気分はどうかにゃー?」



ヒロシ「く、く、く、くけええええええええ!! くっけぇえええええええええん!!」



マルぼん「失敗した!!」



 再手術は成功し、ヒロシは『頭脳明石』を装備(脳に)しつつ、他者とのコミュニケーションがとれるようになりました。



ヒロシ「頭がすっきりする。これが…これが生きるということ…愛するということ?」



 さっそく、よく分からないことを理解しているヒロシ。『頭脳明石』の効果は絶大のようです。ヒロシの頭の回転のはやさを試すため、マルぼんとヒロシは復興の進む町へと繰り出しました。



マルぼん「あ、ルナちゃん!」



ルナちゃん「あら、ヒロシさん」



ヒロシ「……」



ルナちゃん「またねー」



マルぼん「どうしたんだよ、うかない顔して」



ヒロシ「ルナちゃんはきっと、僕のことを嫌っているんだ」



マルぼん「はぁ?」



ヒロシ「ルナちゃんだけじゃない。世間の人はみんな僕のことを、影で馬鹿にして、笑っているんだ」



マルぼん「はぁ?」



ヒロシ「みんながわらってる。子犬もわらっている。お日様もわらっている。今日は、今日はいい天気……うざいくらいにいい天気……!!」



マルぼん「ヒロ……」



ヒロシ「壁が、壁が僕を見て笑っている!! ああ、アスファルトも!! ああ、電柱の笑い声が僕の耳に響くぅ!!」



 頭の回転は、ヒロシの想像力を無限にヒートアップさせてしまいました。

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