ファーストキスストーリー
ヒロシ「今日は町内カラオケ大会ですよ」
マルぼん「優勝商品は温泉旅行! 最下位の人間は去勢という、非常にハードなカラオケ大会らしいね」
ヒロシ「友達が勝手に申し込んでしまって(いじめの一環)、出場するハメになっちゃったんだ! このままじゃ僕、、将来は宦官!」
マルぼん「いいじゃん。皇帝の縁戚として実権でも握れば将来安泰だ」
ヒロシ「権力闘争に敗れて悲惨な最期を迎えちまうよ! ごめんこうむるよ! ねえ、マルぼん。アイドルの桜井ゴメスみたいな美声をゲットできる機密道具だしてよ!」
マルぼん「よし。ちょうどよい機密道具があるから、使ってみてくれ。『声うつし頭部』」
マルぼんのだしたものは、「人間の頭部のようなもの」です。
ヒロシ「猟奇!」
マルぼん「おまえ、この頭部と接吻しろ」
ヒロシ「え!」
マルぼん「この『声うつし頭部』はすぐれた機密道具なんだ。最初にこの頭部と接吻した人の声が、この頭部に記録される。次にこの頭部に接吻した人の声は、最初に接吻した人の声になるんだ。この頭部には、桜井ゴメスの声が記録済みなの」
ヒロシ「ということは、桜井ゴメスにこの頭部への接吻を強要したの?」
マルぼん「昔、桜井ゴメスにハマってね、機密道具を駆使してゴメス宅に侵入して、薬品とか使って接吻を」
ヒロシ「今すぐこの家から、この町から、この時代から出て行ってくれない」
マルぼん「もう罪は償ったの! さぁ、はやくこの頭部と接吻せよ! 間接キッスだよ、間接キッス! キース! キース! キース! KISS! キース! キース!」
ヒロシ「そ、そんなこと言われても、僕、僕」
マルぼん「その頭部に接吻さえすれば、きみは桜井ゴメスの声を手に入れることができるんだよ。そうしないと、君の将来は宦官決定だよ!」
ヒロシ「うう。宦官になっても、皇后の寵愛を一身に受ける自信もないし、うう。しかたない。その頭部に、唇をささげるよ」
マルぼん「マルぼんは、頭部に接吻するまえに逮捕されたから、その頭部は未使用だし、安心しておくれ」
ヒロシ「いく、いくよ!」
頭部「きて…」
ヒロシ「しゃべった! きもいよ!」
マルぼん「いいから、さっさとキスしなよ!」
ヒロシ「ひ!」
ぶちゅっと、キス。キス。キス。
ヒロシ(さようなら、僕の純潔。穢れを知らぬ少年の日々……)
マルぼん「さぁ、唇を離すんだ。けっこう長い間、キスをしていたからかなりいいカンジで声がコピーできているはず。君の声はきっと、桜井ゴメスの今現在の声そのものになっているぞ」
ヒロシ「……」
マルぼん「しゃべってごらん?」
ヒロシ「案jも案のlウェmfぺcmうぇkふぉmcwぽえfmうぇp!」
それは、常人には聞き取れないほどの甲高い声でした。内容も意味不明です。
マルぼん「ヒロシ!?」
ヒロシ「ッ美緒wdmwくぇぴdもpqぺ@pふぇpf「@:sd:、」
マルぼん「ヒロ…」
ヒロシ「んmwmcをえm:wslcpsdlc、mcぽ、うぇ」
ヒロシは四つん這いになると、クビを360度回転させつつ、ゴキブリのように部屋を徘徊。最後はヒロシ「しあわせなにんげんはすべてしんだらええねん」
そうつぶやいて、窓をぶち破って走り去っていきました。
そこでマルぼんは、桜井ゴメスが先週、男に騙されもてあそばれて自殺したことを思い出しました。今のヒロシの声は、桜井ゴメスの今現在の声。今現在の、人ならぬ存在になった桜井ゴメスの生の声。
マルぼんは、生きていない人の今現在の声までコピーできる『声うつし頭部』の効果は絶大だと思いました。
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