ヒロシのパラレル溝掃除
ママさん「ヒロシ。今日は町内の溝掃除があって、各家庭から1人ずつ参加せにゃならないの。お願いできるかしら」
ヒロシ「他の家は大人がでているのに、なんでウチだけ小学生である僕が参加しなきゃなんないのさ。お父さんは?」
ママさん「パパは参加できないわ。ヒロシも知っているでしょ。あの人は、泥とかゴミとかを見ると、まるで米の飯でも喰らうかのように、パクついてしまうんだから。とてもじゃないけど溝掃除なんか無理よ」
ヒロシ「とほほほ。僕が行くしかないんか」
そんなわけで、ヒロシは町内の溝掃除に参加することになったのです。
ヒロシ「うはー。しばらく掃除なんてしてなかったんだね、完全にゴミやら泥やらで埋まってしまってらあ」
マルぼん「そういや最近は、雨が降るたびに溝から水が溢れていたな」
ヒロシ「これをそっくり綺麗にするのはやっかいだよ。マルぼん、なんぞよい機密道具はない?」
マルぼん「『万能掃除機バキューム99』。これはどんなものでも吸い込んでしまう掃除機なんだ。牛一頭くらいなら、ものの数秒で吸い込んでしまう」
ヒロシ「なんでも吸い込むんだったら、ゴミ以外のものまで吸い込んでしまんじゃないの?」
マルぼん「吸い込む対象を指定できるから大丈夫。『溝を埋めてしまっているもの』と指定すれば、それしか吸い込まないよ」
ヒロシ「なるほど」
マルぼんはバキューム99を起動させると、吸い込む対象を『溝を埋めてしまっているもの』と指定。動き出したバキューム99は、またたくまに、溝を埋めてしまっているゴミやら泥やらを吸い込んでいきます。
ヒロシ「へえ。すごいもんだなぁ。あっという間に溝が綺麗になっていく。この分だと、夕方には・・・・・・って、うわぁぁぁぁぁぁ」
神の奇跡か仏の慈悲か。バキューム99は、なぜかヒロシまでも吸い込んでしまったではありませんか。
マルぼん「いったいなぜヒロシまで吸い込んだのだ!?」
ちょうどその頃、大沼宅では。
ママさん「だいたい、あなたはいつもそう。萌えの桃源郷だの、食の天下統一だの、できないことばかり追いかけて、家族のほうを見ようともしない!」
パパさん「男はいつだってロマンを追い求める生き物なんだよ。それくらい理解しろ!」
ママさん「ロマンで腹が膨れたら、配給なんていらないわ!」
パパさん「な、なんだとう」
険悪な雰囲気の2人。しかし数分立つと、落ち着いて
ママさん「止しましょう」
パパさん「そうだな。もうすぐヒロシが帰ってくる。我々がケンカをしていたら、きっと悲しむだろうから」
ママさん「ヒロシの悲しい顔は見たくないわ」
2人は夫婦喧嘩を止めてしまいました。
マルぼんは、ママさんとパパさんとの間にできた溝を埋めていたヒロシまで吸い込んでしまった『万能掃除機バキューム99』の効果は絶大だと思いました。
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