ツケ

ヒロシ「あ」



マルぼん「どうした」



ヒロシ「あのね、財布忘れた」



マルぼん「なんですとー!?」



 マルぼんとヒロシが財布を忘れたことに気が付いたのは、ちょうどお勘定を支払う直前のことでした。



 マルぼんたちを「社長サン」と呼んでくれる外国人女性たちと、顔のいかついお兄さんたちがたくさんいるお店なので、理由を尋ねても許してくれそうにありません。



店員「臓器販売コースと、マグロ漁船コースの二種類の支払い方法がございますが」



ヒロシ「いやだよ。僕、マグロ漁船はいやだよ。最近妙に腹が痛いし、マグロ漁船は酷だよ」



マルぼん「心配めさるな。この薬を体に塗ってみるんだ。『ツケたい時にツケる薬』。この薬を塗ると、どんなところでもツケが利くようになる」



「本当!?」と体に薬を塗るヒロシ。



マルぼん「塗れば塗るほど、支払期限は先になる」



店員「計15万円のお支払いです。ツケですか。わかりました。16年後までにお支払いください」



ヒロシ「本当だ! 凄い機密道具だね! うっ」



マルぼん「いかがいたした」



ヒロシ「腹の痛みが激しくなってきて…いてて」



 病院へ搬送されたヒロシ。診断は慢性腹膜炎。医師により、薬が投与されたのですが



医師「おかしい。まるで薬の効果がでない!」



ヒロシ「痛い…痛い…!!」



『ツケたい時にツケる薬』はとても優秀な薬で、金銭的なもの以外もツケにしてくれます。たとえば部屋に異臭がしたときも、感じるハズの臭さや不快さがツケになるので、その場では何も感じないのです。おそらく、そのせいで薬の効果もツケになっているのでしょう。



医師「こうなれば手術だ! うおおおお! 光って唸れ、俺のメスゥゥゥゥゥゥ! ああ!? メスを入れたのに、体に傷がつかない!!



『ツケたい時にツケる薬』はとても優秀な薬で、怪我などしたときの痛みやダメージなどもツケにしてくれるのです。おそらく、そのせいでメスを入れても傷がツケになっているのでしょう。



ヒロシ「うううう…」



『ツケたい時にツケる薬』はとても優秀な薬なのですが、ただひとつ難点があって、薬を塗る前にかかった病気による症状や苦痛なんかには、まるで効果がないのです。



看護師「先生、脈拍が!!」



 マルぼんは、ちょっと抜けたところがあるけど、『ツケたい時にツケる薬』の効果は絶大だと思いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る