金歯の親父がやってきた
マルぼんがとヒロシが「四半世紀したら幸せが永遠に続く世界が『来る』『来ない』」という議論をしていると、金歯が己の父親をつれてやってきました。なんでも金歯のパパさん(お歯黒がべッッタリついて心底キモいです)、マルぼんに頼みがあるそうです。
金歯パパ「まろには、この金歯以外に数十人の子供がいるのでおじゃるが、最近どうも子供たちの仲が悪いのでおじゃる」
金歯「昔は兄上や姉上は毎日一緒に遊んで仲がよかったのでおじゃるが」
ヒロシ「金持ちの遊びか。どうせ、蹴鞠とか扇子を投げるヤツとか、捕まえてきた貧乏人の背中に『飛車』とか『王将』とか焼印して『人間将棋でおじゃる~』とか、そんなカンジだろ?」
金歯「黙れ下郎!」
金歯パパ「もっと庶民的な遊びでおじゃるよ。鬼ごっことか、高オニ色オニ、ハンカチ落としにイス取りゲーム。ケイドロ。はさみん。『いつどこでだれがなにを』やオセロ、大嵐やフルーツバスケット。あとは、リアルプラモとか」
ヒロシ「リアルプラモ?」
金歯「墓場から死体を運んできては解体して、解体したパーツを組み合わせて蘇生させて、新しい生命体を作りだすという遊びさ」
金持ちの倒錯した趣味に吐き気を覚えつつも、金歯の出す金に目のくらんだマルぼんは、機密道具『あのコロン』を貸してあげることにしました。
『あのコロン』は香水タイプの機密道具で、これを噴きつけられた者は楽しかった『あの頃』の心を取り戻す事ができます。
これで、いがみ合う金歯兄弟に、仲良く一緒に遊んでいた『あの頃』を思い出してもらおうという寸法です。
数日後。「てめえ、ぶち殺してやる!」と、金歯と金歯パパがマルぼんの家に乗り込んできました。よくみると、金歯一族の私設軍隊が家の周りを取り囲んでいます。マルぼんはとりあえず事情を聞いてみました。
金歯「『あのコロン』を使ったら、仲直りするどころか醜い争いをはじめたのでおじゃるよ、兄上や姉上たちが! すでに銀歯兄上や、ダイヤモンド歯姉上が死に、エメラルド歯兄上が行方不明になった!」
金歯パパ「事と次第によっては、巨万の富を持つ我が金歯コンツェルンの総帥であるまろが、その総力を結集して、そちとそちの大切なものを完膚なきまでに叩き潰すでおじゃるよ」
『あのコロン』は未来の世界のそれなりに有名なブランドの商品なので、欠陥品ということはないと思ったマルぼんはすこし考え、「金歯一族の皆さんが、『楽しかったあの頃』に一番よくした遊びは?」と聞き返してみました。
『あのコロン』は使われた人の一番印象に残っている『楽しかった出来事』を思い出させるのです。
金歯パパ「そうでおじゃるな。ううむ。イス取りゲームでおじゃるかな」
この返答で、マルぼんは全てがわかりました。金歯の兄弟姉妹の皆さんは『あのコロン』の力で『楽しかったあの頃』を思い出し、最も印象深かったイス取りゲームに興じているのです。
金歯パパ「たわけたことを! あんな、血で血を狂ったように洗うイス取りゲームがどこの世界に存在するでおじゃる。そもそもイスなんてどこにもないでおじゃるよ!」
マルぼん「いや、息子さんや娘さんはたしかにイスを取り合っていますよ」
金歯パパ「いったいどんなイスでおじゃるか!」
マルぼん「『巨万の富を持つ金歯コンツェルンの次期総帥の座』という名前のイスです」
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