地域の未来にご奉仕するにゃん!
ルナちゃんが「奉仕活動がしたいから手伝って」とマルぼんに懇願してきました。
今日は、ルナちゃんの信仰している宗教では「奉仕の日」なんだそうです。別にマルぼんはルナちゃんの信仰に興味を持ったわけではありませんが、世のため人のためになるならと快く引き受けることにしました。
ということでマルぼんとルナちゃんは、近所にいる身寄りのない、寝たきりのおばあさんの家を訪ねて、話し相手になったり家事を手伝ったりと充実な一日を過ごしたのでした。
夕方になり、マルぼんがそろそろお暇しようと思っていると、ルナちゃんが床についているおばあさんになにか見せていました。
それは数百万円もする壺とか印鑑などのパンフレットで、いたるところに「幸運」とか「長生き」とか「至福の快楽が永遠に続く悠久の楽園」とか素敵なフレーズが散りばめられていました。
マルぼんが呆気にとられているうちに、ルナちゃんはおばあさんから実印の場所を聞き出し、光の速さで壺とか印鑑の売買契約を結んでしまったのです。
マルぼんがルナちゃんを問い詰めると、ルナちゃんは答えました。
ルナちゃん「この壺と印鑑を持っている人は、ギュルペペ神サマ(註・ルナちゃんの信仰する神。特技はラジオから選ばれし者しか受けることのできない指令を出す)の加護が得られるのよ? これ以上の奉仕活動ってある? ギュルペペ神サマだって、信徒が増えてお喜びになっているわ!」
翌日。またもルナちゃんが現われて「今日も奉仕の日だから手伝え」とマルぼんを外へ連れ出しました。
昨日はお年寄りでしたが、今日は孤児院だそうで、ルナちゃんはプレゼント用の玩具を大量購入。
今度は子供が相手なので壺とか印鑑は売りつけないそうなので、マルぼんは手伝う事にしました。
孤児院についたマルぼんとルナちゃんは、子供たちと遊び、共に唄を歌い、共に踊り、プレゼントを配り、充実した一日を過ごしたのでした。
しばらくするとルナちゃんは子供たちを大部屋に集めて、映画鑑賞を始めました。
部屋は暖房がガンガンに効いていて、映画鑑賞中に意識が朦朧とする子供が続出し、マルぼんは彼らの介抱に追われて映画を観ることができませんでした。しばらくすると映画を観終えた子供たちが出てきたので、どんな映画か気になったマルぼんはそれとなく感想を聞いてみました。
子供A「〇〇教も××教も、ギュルペペ神サマの教えのパクりだったんだね」
子供B「ギュルペペ神サマによる千年王国樹立がいまから楽しみだよね」
子供C「ギュルペペ神サマのために殉死したら、酒池肉林が永久に続く世界へ転生できるらしいよ」
子供D「ギュルペペ神サマに祈ったら、老眼が治ったよー!」
子供E「僕、ギュルペペ神サマのためなら、フランスではカルト認定されている某宗教に特攻できるよ。爆弾どこ~?」
子供F「OK! 仏像破壊完了!」
子供G「ジハード! ジハード! ジハード!」
ルナちゃん「みんなギュルペペ神サマのために戦う覚悟ができたみたいで、一安心だよね」
翌日。マルぼんは、今日もルナちゃんの付き添いで奉仕活動です。奉仕活動。
駅前で地べたに座ってダルそうな様子の若者を拉致って、意識を朦朧とさせる薬を投与し、ルナちゃんが徹夜で朗読した『ギュルペペ神サマを称えに称える歌』がガンガン鳴り響く個室に半日ほど入ってもらうと、出てきた時にはすっかり聖戦士。
もう奉仕活動の形すらしていないんですが、マルぼんは手伝っちゃいました。
で、そんなこんなで夕方。おとつい・昨日・今日の奉仕活動ですっかりギュルペペ神の虜となった人たちが、ゾロゾロとルナちゃんとマルぼんのもとへと集まってきました。
「ギュルペペ神様最高ー!」「ギュルペペ神様抱いてっ!」と興奮した様子の一同を見て、ルナちゃんは満足顔。
ルナちゃん「こいつらを率いて政府と一戦交えたら、私ってば平成のジャンヌ・ダルク! 歴史の1ページ! もっと称えて!」
しかし、一同はそんなルナちゃんに「ひっこめー!」「魔女!」「平成最後の毒婦」と冷たい態度。
ルナちゃん「な、なんですって! 誰が、誰がギュルペペ神サマの教えを伝えると思って……!」
一同は一斉に、事態を見守っていたマルぼんを指さしました。
「その人は、私の話し相手になってくれた。ギュルペペ神サマに違いないです!」おとついのおばあさんです。
「その人は、気持ち悪くなった私たちを解放してくれたわ! きっとギュルペペ神サマよ!」昨日の孤児院の子供たちです。
「その人の姿、明らかに人間じゃないし、きっとギュルペペ神サマだ!」今日の若者です。
マルぼんの異形ボディが、「健康ランドに入店拒否」「動物園に近づいたら、園内の動物が一斉に鳴く」「近づいた霊能力者が泡吹いて卒倒」といった百害あって一利なしを絵に描いたようなマルぼんの異形ボディが、事態を変な方向に向かわせてしまったようです。
ハンカチを噛みながら逃走していくルナちゃんを無視して、一同は「ギュルペペ神様最高ー!」「ギュルペペ神様抱いてっ!」とマルぼんを胴上げしはじめました。
宙を舞いながらマルぼんは、人に必要にされることのすばらしさを知り、この人たちにできる限りのことをしてやろうと思いました。
ギュルペペ神ということになったマルぼんは崇め奉られて調子に乗って、信者の方々と町を闊歩。機密道具を駆使して困った人を助けまくって、信者を増やしまくりました。
助けた人々の感謝の声で心が豊かになったマルぼんは「カルトの信仰の象徴も悪くないかも!?」なんて気分になっていたんです。
ヒロシとかヒロシとかヒロシとかヒロシとか、うざったいことを全部放棄して、どこかの森で、草花や風を友とし、信者のみなさんや動物たちと静かに暮らすのもいいかもしれません。いや、かもしれないというより、絶対そうしたほうがいいに違いありません。
思いついたら吉日ということで、マルぼんはヒロシに三行半を叩きつけるため、さっそく家に帰ることしました。
で、帰宅してみると、家の周りにパトカーや救急車がたくさん停まっていて、周辺は野次馬で溢れかえっていました。
ヒロシ「庭でたき火をしていたら、変な人たちが現われて『ギュルペペ神生誕の聖地で死ねるなら本望~』とか言いながら、次々と炎にその身を投げ出したんだ」
ママさん「マルちゃん。お客様よ。なんでも公安の方だとか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます