ニューヒロイン登場

ヒロシ「『マルぼんと暮らす』の主人公は僕。ヒロインはルナちゃんなわけだけど、最近気づいた。主人公と会うたびに『あなたこのままじゃひどい病気になって、苦しんで果てるわよ。助かるには多額の寄付をするしかないの!』とか言ってくる女は、ヒロインじゃない」



マルぼん「左様。よくぞそこに気づいた」



ヒロシ「新しいヒロインだしてー!」



マルぼん「『ヒロイン人形』というものがあるんだけど」



 機密道具『ヒロイン人形』は、のっぺらぼうな人形です。目も口も耳もございませんが、鼻のあるべき場所には赤いボタンがございます。



マルぼん「理想のヒロイン像を頭に描きながら、このボタンだを押すとだな、人形が、思い描いたヒロインそのままに化身するんだ」



ヒロシ「すごい道具じゃないか、さっそく出してくださいよ」



マルぼん「残念。あれは高いんだ。うちの経済状況じゃ、とてもじゃないけど購入不可能だね」



ヒロシ「ここにまとまったお金がある。ほんと、色々なものを犠牲にして作ったお金! これで『ヒロイン人形』を用意してくれ!」



マルぼん「おまえ、その腹の手術跡…まさか臓器を。わかった、わかったよ。ヒロイン人形を買ってきてやるよ」



 そんなわけで。



ヒロシ「ねんがんのヒロイン人形を手に入れたぞ!」



ルナちゃん「まぁ、ヒロシさんときたら!」



ヒロシ「ふんだ! 教祖に決められた相手としか結婚できないヒロインのくせに! つねに怪しいマスクで顔を覆い『異性に素顔を見られたら、相手を殺すしかない(愛するという選択肢はなし)』と決められているヒロインのくせに! 『死体はがんばれば生き返るので、そのまま放置』とか教えられているヒロインのくせに!」



ルナちゃん「んま! 失礼しちゃう! おぼえてけー、いつか薬品とかを使用して貴様の魂を次のステージに送ってやるんだから!」



マルぼん「古きヒロインは去った。『マルぼんと暮らす』新時代到来だ。ところでヒロシ。どんなヒロインを望むんだい」



ヒロシ「幼馴染。面倒見のいい幼馴染を考えている。ほら、僕は生まれすぐに森に捨てられて、つい1年前まで森で動物たちに育てられていただろ。人間の幼馴染がいなかったんだ。だからさ、小さい頃からいつも一緒で、たくさんの思い出を共有してきた、互いのことならなんでもわかる幼馴染の女の子が欲しいんだ」



 そう言うと、ヒロシはヒロイン人形のボタンを押すヒロシ。



マルぼん「ヒロイン人形の化身が終わったみたいだ。あれ?」



 人形が化身したのは赤ん坊でした。赤ん坊。



ヒロシ「これはいったい……」



マルぼん「どんなヒロインにでもなれる『ヒロイン人形』でも、思い出は捏造できない。だから、『これから思い出を作れる状態』で化身したんだ!」



ヒロシ「そ、そんな。わが身を切り売ってまで望んだヒロインが、赤ん坊。そんな。あは。あははは」



 ぷちん



マルぼん「ヒロシ?」



ヒロシ「ハーイ!」



マルぼん「!?」



ヒロシ「ハーイ! チャーン! バブー!」



 よだれをたらしつつ、四つんばいになり、部屋中をハイハイして動き回るヒロシ。しばらくすると、疲れたようで赤ちゃんの隣で寝転び、スヤスヤと寝息をたてはじめました。完全に、脳が赤ん坊にまで退化しています。



 並んで眠る、赤ん坊と脳内だけ赤ん坊。『ヒロイン人形』は、完全な『小さい頃からいつも一緒で、たくさんの思い出を共有してきた、互いのことならなんでもわかる幼馴染の女の子』を作り出すため、ヒロシまで『これから成長する状態』にしてしまったようです。



 マルぼんは「ヒロイン人形」の効果は絶大だと思いました。

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