恋水の花

きおり

1.冬

 あの頃はあって、今はないもの。

 あの頃は隣にいて、今はもういない人。


 失ったものを取り戻すことはできないから、募るばかりで哀しみは消えない。


 冷たく儚い雪が積もるばかりで。


 だからもう、無理だと思っていた。

 この心でまた、誰かを想うことなんて――。

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