たとえ偽善になろうとも

@parkman

第1話 夢への第一歩

 「やっと始まるのか。俺の夢への第一歩が」


 クダンが今いるのは、アイランド王国首都『レイクヴィーク』。人口30万人で、多くのギルドが集まってできている町だ。彼は今日行われるある試験に受けるため、わざわざ辺境の村から王都にやって来ていた。


 「すいませーん。ギルド入団試験の申し込みしたいんですけど」


 「あぁ、入団希望ね。ここに名前、年齢、入団場所、志望動機を書いてくれ」


 俺と同い年ぐらいの職員に紙を渡され、俺はすらすら書き、渡した。


 「えぇ~と。名前 クダン 家名無しか、

年齢 十六 入団場所 『ロイヤルナイツ』

・・・・・・ロイヤルナイツ!!? あの『騎士王』のいる王国お抱えのギルドか、お前、すごいな、最後に志望動機か、何々『正義の味方になって人々を救いたい』か」


 俺はこの時少し後悔した。相手は今日会ったばかりの見ず知らず人。今時こんな妄想を馬鹿正直に喋っても、笑われて、一蹴されるのが落ちだろう、何故なら今まで会った誰に言っても馬鹿にされ、笑われてきた経験があるからだ。


 「お前、本当にこんなことが今の世の中で通じると思っているのか?」


「あぁ、笑いたきゃ笑えよ。馴れてるから」


 また、俺は夢を否定されるのかと自嘲気味に思いながら、職員の口からの嘲笑を待ったが、


 「笑うわけねえだろ、この世の中でそんなこと言う馬鹿を。俺の名前はルイス・フォーサイスだ、受かって俺に可能性を見せてくれ。クダン」


 「受かるさ、じゃあなルイス」


 俺は顔を伏せたまま、足早に職業斡旋所を後にした。


 「あんなこと言って貰えたのは初めてだったな」


 クダンは涙を拭い、試験会場へ急いだ。


 

 クダンが斡旋所を出た後。


 「クダンか・・・・・。あいつ、面白いな」


 そう言ってルイスは碧眼の目で彼の姿を思いだしながら、呟いた。


 「この世界に救う価値なんてないのに」


 その言葉はどこか哀愁漂う声音だった。

 


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