リフティング
@yorozu1
リフティング
サッカーボールが宙に舞っていた。そして地に向かって落ちる。落ちる瞬間に膝がサッカーボールを跳ね上げまた宙に舞う。金田里美はサッカーボールでリフティングをしていた。
「リフティング。上手いな」
坂江圭太はサッカーボールを目で追いながら言った。
「そうでしょ」
サッカーボールがまた地に向かって落ちるが膝がまた跳ね上げる。
「さすがだな」
圭太は笑う。
「私の腕はさらに上がってるわよ」
里美はサッカーボールを高く上げてタイミングを合わせて思いっきりとサッカーボールに蹴りを入れ込む。
サッカーボールは勢いよくゴールポストの網に入る。
「ナイスだな」
「そうでしょ。私のシュート!!」
里美は圭太にVサインをする。
「そして白かったなあ。お前のパンツ」
「は!!」
里美は下を見た。制服のスカートが見えた。
「圭太ーーー」
里美はズカズカと圭太の前まで来て頬をつねった。
「痛いーーー」
「忘れなさいーーー」
「分かったから頬をつねるのは止めてくれー」
圭太の哀願に里美はつねるのを止める。
「ラッキースケベできたんだから今日は何か奢りなさいよ」
「はいはい。俺のお小遣いで払える中でな」
圭太はそのまま歩き始めてゴールポストにあるサッカーボールを手にする。
里美は圭太がじーとサッカーボールを見てるのを見ていた。
圭太と里美は小中高と同じ学校で腐れ縁の中である。
高校の帰り道。いつも通る広場にサッカーボールが転がっていた。なんとなく触っていつの間にか里美はリフティングをしていた。
「圭太......」
里美はゆっくりと圭太の近くに寄った。
「俺はこのサッカーボールに人生をかけようと思ってたんだよな」
「......」
圭太の言葉に里美は何も答えれなかった。
二人は小さい頃からサッカーをしていた。男の子の中に里美も混じり朝から晩までサッカーをしていた。小学校も二人はサッカー部に入っていた。
二人とも上手く双璧と呼ばれた。しかし中学校では圭太は当たり前のようにサッカー部に入ったが女子にはサッカー部はなく仕方なく里美はサッカー部のマネジャーになった。
二人は暇さえあれば二人はサッカーをしていた。中学では必然的に噂になったが二人は全然その気はなかった。
そして高校へ。そこは男子サッカー部と女子サッカー部があり二人は自動的に入部した。
二人は一年で選手として抜擢され地区大会・県大会と勝ち続けてきた。しかしニ年の時に圭太は試合で足を怪我をしてサッカーが出来なくなった。
「しかし、まあ里美のお蔭でなんとか立ち直れたけどな」
一時は不登校になったが里美が強引に学校に行かさせていた。
「そりゃあ、圭太が落ち込んでると私は面白くないからね」
里美は圭太が持っているサッカーボールを取り、またリフティングを始める。そこからだ。二人は自然と付き合い始めたのは。
「なぁ、里美、覚えてるか?」
「なにが?」
「里美はサッカーを続けてくれと」
「覚えてる」
里美はリフティングを続けながら言う。圭太が学校に再び行く時は条件を言った。【里美はサッカーを続ける事】と
そして里美は選手として部活の部長までなり引張っている。
「里美は悩んでるだろう」
「うん」
サッカーボールが激しく宙に舞う。
里美には女子サッカーとしての選手としてのオファーが来ていた。しかし里美はそれをすぐに受け入れる事はできなかった。いくらサッカーに自信があるとはいえプロとてやっていく自信まではない。
「悩んでる。でもそれは圭太から見れば贅沢な悩みかな?」
「里美」
サッカーボールが高く宙に舞った時に里美は圭太に抱かれていた。
「俺のあの時に約束を頑と守れとは言わない。それは里美の人生の選択であり俺はとやかく言える立場ではない。でも、もし里美がサッカーを続けるなら俺は全力でお前を応援する。俺の夢を繋げてくれる為に」
「夢......」
サッカーを続ける夢。圭太はもうできない。でも。
「私は」
里美は圭太の近づいてくる顔を見る。まだ迷ってる。でももう少しその悩みも無くなるだろう。里美の耳にサッカーボールが地面に落ちる音が聞こえた。
リフティング @yorozu1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます