デスゲームに巻き込まれたようだけどこのゲーム作ったの俺でした
九蓮
四月一日 ゴブリン討伐ミッション
第1話 三年B組黒板先生
密室。
気がついた時にはここに立っていた。
真っ暗で視界はゼロ。
両手を広げようとしたが、壁にあたり半分も広げられない。
上に手を伸ばす。
同じように、すぐ壁に当たる。
ほとんど身動きできない。
どこかに閉じこめられたようだ。
諦めて目を閉じる。
どうしてこうなったか考える。
誰が何のために自分をここに閉じこめたのか。
何も思い浮かばない。
いや、どういうことだ。
自分の名前すら出てこない。
記憶喪失。
なにかのショックで記憶が飛んでしまったのか。
「おい、誰か」
自然と声が出ていた。
「誰かいないか」
返事はない。
正面の壁を叩く。
しかし、壁が少しズレて光が漏れる。
目が慣れてきて、壁ではなく、周りの素材がスチールか何かだとわかる。
どうやらここはロッカーの中のようだ。
ズレた前の扉を両手で押すと、
教室だった。
広い教室。
夜なんだろうか。電気はついているが窓から見える景色は暗い。
大きな黒板が正面にあり、その上にスピーカーと時計がある。時計は20時55分を指している。
椅子と机が20組以上並んでいて、そこに何人か座っている。
異様だった。
座っている者達の姿が、だ。
「転校生か、タイミングが悪いな」
目の前に座ってる女性がこちらに振り向く。
銀色の鎧を着ていた。
中世の騎士の様な格好で、腰に剣を帯刀している。
机の上には銀色の兜が見える。
金髪の髪は長く、軽くロールしている。
瞳の色はゴールド。どこか気品のあるお嬢様のような雰囲気がある。
まるで漫画から出てきたような美少女だ。
年は高校生くらいだろうか。
しかし、一番目立つところはそこではなかった。
胸がデカイ。
溢れんばかりの巨乳が鎧に収まりきれず、そこだけ盛り上がっている。
鎧の横の部位が切りとられたようになっており、そこからはみ出て苦しそうだ。
スイカが二つ鎧の中に入っているのではないか、そんなことを考えてしまう。
「胸を見るな、変態」
そう言われて慌てて視線をそらす。
「どうだ、コイツ。つかえそうか?」
巨乳の騎士が前の席に座っている女性に尋ねる。
また異様な格好だった。
狩人というのだろうか。
獣の皮で作った様な服を着ている。
背中には弓を背負っていて、腰に弓矢が入った筒がある。
顔はキリッとしており、宝塚の男形のような美人だ。
髪は黒髪で後ろで無造作に括っている。
こちらも高校生くらいの年だろう。
そして気になるのは右目にゴーグルのようなものが装着されているところだ。
格好は原始的なのに、そのゴーグルだけは近代的な機械のように見える。
狩人女がそのゴーグルを触ってこちらを見る。
ヴィン、という機械音がしてゴーグルが光った。
「ダメだ。スキルがない。能力も平均値。つかえない」
クールなハスキーボイスでひどいことを言われる。
「なに? ノースキルなの? ハズレきたね〜〜」
別な所から声がかかる。
教室の左前の方の席。
黒いスーツを着た男が、反対向きに椅子に座って、笑っていた。
銀色のメッシュが入った髪に、耳と鼻にピアスが付いている。
一見するとホストにしか見えない。
二十歳かそこらだろうか。
軽い感じで話しかけてくる。
「こりゃ下手すりゃ初日に退場だね〜〜、ご愁傷様」
「可哀想だよ、シュン君。助けてあげなよ」
ホスト男の隣に座る女が甘えた声で話す。
こちらの格好はセーラー服だ。
だが女子高生には見えない。
大人びた仕草がそうさせるのか、ホスト男よりも年上に見える。
髪は茶髪でセミロング。
化粧が少し濃い感じでギャルっぽい。
「めんどくさいなぁ、アイがサービスしてくれるなら考えてもいいけどね」
「えーー、どうしようかなぁ」
二人のやり取りに、イラっとする。
状況は分からないがこんな奴らに面倒見られたくはない。
教室にはこの四人以外にもう一人いた。
教室の右端の一番前に一人ぽつんと座っている人物。
その人物は、この中で一番異質な姿だった。
全身が機械のようなパーツで覆われている。
パワードスーツとでもいうのか、赤と黒を基調としたパーツは一つ一つが光ったり消えたり、呼吸するかのように点滅している。
顔も機械のマスクで覆われているため男性か女性か分からない。
こちらを振り向くことなく黒板をじっと眺めている。
黒板を見ると右端の隅に縦書きで 、
『四月一日 三年B組』
と書かれている。
そして真ん中に横書きで 、
『本日のイベント』
『ゴブリン討伐ミッション 』
『二十一時スタート』
と書かれている。
ここは何処だろうか。
ようやく自分が異常な何かに巻き込まれたという実感が湧く。
キーンコーンカーンコーン
唐突にチャイムが鳴る。
大きな音にビクッとなるが、皆平然としている。
慣れているのだろうか。
黒板の上にスピーカーがあり、どうやら音はそこからしたようだ。
「席に座ったほうがいい」
目の前の巨乳騎士が言う。
「席?」
自分の席があるのだろうか。
教室を見回す。
どれも同じに見えるが一つだけ真ん中に花が飾っている席がある。
この席だろうか?
そこに座ろうと椅子に手をかける。
「違う。そこは前に死んだやつの席だ」
不吉なワードをスルーして椅子を戻す。
巨乳騎士が無言で前の方を指差す。
黒板の目の前、一番前の真ん中の席。
そこにプレートが置かれていた。
「ハジメ」
プレートにはそう書かれている。
それが自分の名前だろうか?
まったく思い出せない。
「机の中に携帯がある。そこから初期装備を選べる。早くしたほうがいい」
巨乳騎士の言葉に従い席に座り机の中を探る。
言われた通り、中に携帯がある。
真っ黒いスマホ。ボタンに触れると文字が表示された。
『初期装備を選んでください』
確かに装備を選ぶ画面がある。
画面をタップすると三つの項目が現れる。
剣。弓。盾。
どれが正解なのだろうか。
悩んでいると再びスピーカーから音がした。
『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』
大音量と共に、黒板の文字が全て消える。人間の声ではない。機械で作ったような合成音声だ。
どうやらこれから始まるようだ。
異常な世界での異常なイベントが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます