1−14 予想外のステータス

 ガーランド高地を後にして二日目になる。たった今、十五時には国際港湾都市ナフタに着く予定だとわかった。

 なぜ到着時間がわかったのか? それは都市までの距離がわかるからだ。

 なぜ距離がわかるのか? それは俺が高いところに立ち今まで歩いた距離と比べているからだ。

 なぜまた山に登ったか? 山には登ってない。


「こんな贅沢な土魔法見たことねぇ!」


 やっておいてなんだが、作った自分自身に突っ込んでしまう。現在俺は高さ二十ジィのピラミッドの真上にいる。山には登っていない。作っただけだ。もちろん安全のために足は石の中に埋めて固定済みだ。目茶苦茶怖い。


 ふと空を見上げると、ワイバーン達がピラミッドの周りを回り始めている。なんかここ数日あきらかに魔獣との遭遇率が高い。

 たしかにこんな構造物は不審なんだけどさ。とにかく目的は達成したんだ。襲われる前に降りよう。

 ピラミッドを完全に消した後、丘の上から海をしばらく眺めることにした。大地の上に座るって素晴らしいのな。感動でさっきから膝が打ち震えている。


「そういやまだステータスカード見てなかったな。巨大構造物をつくれるとかどんだけ魔力があるんだ?」


 マジックバッグからステータスカードを取り出す。この世界のステータスカードは言ってみれば極薄のデバイスだ。

 目にかざせば半透明な視界に3D的なアレで情報が出てくるやたらハイテクな代物で、星の遺物と書いて星遺物と呼ばれている。高度な古代文明が複数あるので、『星』という言葉でくくってしまったらしい。特定の施設にあるセットの大型星遺物に血液を登録すれば発行される。


 3Dなアレに表示される情報は「世界標準時・位階・LP/SP/MP・魔法を含めたスキル・称号」だ。

 所々にロックという表示があり学者の知的好奇心をくすぐっているけど、結局解析するだけの技術がないためいくつもの仮説があるだけだ。


「で、ステータスは、と」


位階:56

SP:300

MP:LOCK《閲覧制限》(位階到達により解放)

LP:−(マイナス)

称号:外来種、全属性適性者、無尽の魔石、学院(退学)、ハンターギルド(除名)、職人ギルド(除名)、錬金ギルド(除名)、料理人見習い(退職)、シーフギルド(除名)、軍(除隊)、野良ハンター(プラント)(スキルの死蔵者、(以下略)


スキル:中位土魔法(限定消滅)、水・火・風下位魔法(下位限定)、各種技能スキル(魔法習得による解放済み)


 おもわず眉間をつまんだ。


「……ちょっと整理しよう」


 まじで、ちょっと整理しよう。


 ……まずロガーの話では、俺のアプデされた恩寵は魔力の増加、全魔法適性の部分的な限定解除、最も練度が高かった魔法の完全限定解除だ。

 しかし現実、それ以外にもいくつものステータスが変化している。これはどういうことか推測してみよう。


 まず、MPだ。なぜか閲覧制限がかかっている。以前はSPと同じく三百あったはずだけど、魔法使用後の疲労感がほとんど無い事からすると桁外れに増えているのは確かだ。気持ち悪いけどいったん保留にしておこう。


 SP、スタミナポイントは以前と同じ三百だ。

 この世界のスタミナは地球のゲームでいうHPに近い。スタミナは疲労やけがで減り、ゼロになるまでは万全の状態で動ける。SPがゼロになると前の世界と同じように、打撃一発で動きは鈍るし腕を切られれば動かせなくなる。

 ただ即死はしない場合がある。LPという概念があるからだ。


 LPは死ににくさ、と言える。

 大抵の人間は致命傷をうければLPも一気に削れて死ぬが、位階、レベルが上がるとLPも増える。そうすると、LPが残っている間生きていられるのだ。

 その間に回復魔法なりポーションなりで回復すれば生き延びられる。

 LP五十とかになれば、かなりの無茶ができる。

 だというのに。


「マイナスって! アップデートしてLP上限がマイナスになるってダウングレードにもほどがあんだろ! おいロガー! 契約の説明にステータスがマイナスになるなんて聞いてねぇぞ!」


 空に今もいるだろう鳥にむかって叫ぶ。なんか天使の下っ端みたいなのが本体らしいけど聞こえているならどうでもいい。

 当然返事は返ってこない。波の音が聞こえるだけだった。

 LPがマイナスなのになんで生きてる? マイナスの定義ってなんだ? SPがつきた状態なら転んだだけで死ぬとか? 

 冗談みたいな展開だけど、真面目に考えると笑えない。SP三百なんて油断していればあっという間に削れてしまう。はやく防具やSP増加魔導具を装備しないとまずいな。


    ――◆ ◇ ◆――


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