第7話 7

「助けてくれ!? 同士よ!?」

「私たちも脅されているんだ!?」


俺とくまぴょんは、泣いている男と女の前に、泣きながら必死の形相で飛び出した。


「あなたたちも僕たちと同じなんですね!?」

「そうなんだ!? もう、こんな生活は嫌だ!? 元の生活に戻りたい!?」

「私たちと同じです! 自由に生きたいよ! うえええ~ん!」

「分かる! 分かるぞ! その気持ち! うえええ~ん!」

「うさぴょん!? おまえまで泣くな! ・・・私まで泣きたくなってきた・・・うえええ~ん!」

「・・・僕も泣くです。うえええ~ん!」


俺たちは初対面だが4人で泣き合った。友情とか絆って、こういう所から生まれるもんだろう。


「僕はキラ。」

「私はラキ。」

「俺は、うさぴょん。」

「私は、くまぴょん。」

「あれ? カトリーヌ・ねこぴょん様の奴隷犬じゃなかったんですか?」

「誰が奴隷犬だ!?」

「お二人は有名ですよ。詐欺を働いて罰として奴隷犬として罪を償っていると。」

「いったい誰がそんな嘘を!?」

「セーラお嬢様です。」

「クソ! セーラめ! 許さんぞ!」

「何がお嬢様だ!? 自分は人の弱みに付け込む悪党じゃないか!?」

「そうです! 凶悪犯罪者です!」

「もう、おうちに帰りたいよ!」


俺たちキラ、ラキの二人は仲良しになれそうだった。同じ悩みを共有する者同士。


「何とかして、セーラお嬢様を倒す方法はないのか?」

「無くない無いですが・・・。」

「おお! さすがだ! 何か方法があるんだな!?」

「これです。」

「これは!?」

「ミニ避雷針です。」

「おお! 避雷針!? ちっちゃ・・・。」

「これで裏切りがバレて、電流が流される時に避雷針で電流を受け止めている間に、セーラお嬢様を亡き者にするです!」

「おお! 具体的な計画じゃないか! 俺たちも乗った! 協力させてくれ!」

「ですが・・・問題があります。」

「問題?」

「僕とラキは戦闘系のジョブではありません。」

「私たちは夜空のお星さまのようなもの。軽く光るぐらいしかできません。」

「ガーン!? 俺たちとキャラ被り!?」

「違うだろ。うさぴょん。そこは4人いて戦える奴がいない、の間違いだ。」

「あ、そっか。すまんすまん。」


これは毎回のパターン化されるのだろうか? 戦闘系ジョブがいないという悲劇。


「どうする? ねこぴょんに真実を話して、セーラお嬢様と戦ってもらうか?」

「ダメです!? カトリーヌ・ねこぴょん様は親衛隊長のセーラお嬢様を信頼なさっています!? 逆に僕たちが殺されます!?」

「それは嫌だな。」

「じゃあ、どうすればいい!?」

「他に戦闘系の仲間を見つけるしか道はありません。」

「しかし、そんな奴、どこにいる?」


その時、道を歩く一匹のアリがいた。


「いた!? こいつだ!?」

「なんですか!?」

「誰もいませんよ!?」

「いるじゃないか! 地面を歩くアリさんが!」

「アリ!?」

「そうか! アリさんなら仲間を倒された恨みもある! つじつまが合う!」

「それに言葉も話せねえ。うってつけの敵ってことだ。」

「バカ言わないで下さい!?」

「そうですよ!? アリさんが戦える訳ないじゃいですか!?」

「大丈夫! なんたって、俺は天下無敵サイコロ士!」

「私は神とも交信できるシャーマン! アリさんを操るぐらい朝飯前です!」

「あなたたちも悪ですね。」

「なんて怖い人たちなの!?」

「おまえたちも変わらないよ。」

「それに、カトリーヌ・ねこぴょん様やセーラお嬢様の方が、もっと悪党だ。」

「そうです!」

「みんなで力を合わせれば、この世に悪が栄えたためし無し!」

「エイ! エイ! オオー!」


こうして結託した俺たちはサイコロをアリさんの前に置き、アリさんにサイコロを触れさせた。


「何が出るかな? 何が出るかな? ヤッホー! ヤッホー!」

「神様! 仏様! サイコロ様! 良い目をお出しください!」

「サイコロの目は・・・アリさんは巨大化して町のお菓子屋さんを襲う! さらに、ギミック付き。」

「おお! 巨大化だ! スゲー!」

「ギミックってなんだ!?」

「こんなサイコロの目でいったい何ができるというのですか?」

「期待した私たちがバカでした。」

「まあ、見てな。サイコロを振らせて、俺の右に出る者はいない。」

「神の祝福もあるからね。」


その時、小さなアリさんが巨大化する。


「おお! ありぴょんの誕生だ!」

「よし! セーラお嬢様を倒せ!」

「アリが大きくなった!?」

「この人たちはいったい何者!?」


キラとラキは俺とくまぴょんの姿に見とれていた。不思議がっていただけかもしれない。それでもアリさんを巨大化させて笑う俺とくまぴょんを見て、感動していたのは事実だ。


「キャアアア!!!」

「モンスターだ!?」

「アリの化け物が出たぞ!?」


町に響くありぴょん登場の人々の悲鳴。


「カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊は直ちに迎撃に当たれ! これは演習ではない! 実践である!」


親衛隊長のセーラお嬢様の声が響き渡る。カトリーヌ・ねこぴょん様とセーラお嬢様に忠誠を誓うものが、休憩を切り上げて、ありぴょんに向かって行く。


「これはどういうことだ? セーラ。」

「はい。カトリーヌ・ねこぴょん様。」

「おかしいではないか? 町の中に巨大モンスター出るなんて?」

「申し訳ありません。ただいま原因を調査中です。」

「そうか。あの巨大なアリに勝てそうか?」

「はい。全力で親衛隊が町の防衛に当たっています。」

「私が聞いているのは、勝てるのか? 勝てないのか? ということだ。」

「申し訳ありません。おそらく犠牲者は20人ぐらいは出るでしょうが、巨大なアリには勝てます。」

「この町に自警団や他の冒険者はいないのか?」

「はい。自警団といっても、まだまだ田舎町。おじいちゃんが5人いるぐらいで役に立ちません。他の冒険者といっても、カトリーヌ・ねこぴょん様のように親衛隊を100人もお持ちのお方はいません。精々5人グールプ前後の集団ばかりです。」

「そうか。親衛隊長。」

「はい。」

「おまえに極秘任務を与える。」

「ご、極秘任務ですか?」

「そうだ。親衛隊長のセーラにしかできない仕事だ。」

「私だけのお仕事!? セーラ感激!」


こうして親衛隊長のセーラだけは俺の思惑と違い、ありぴょんの迎撃に参加しなかった。


「あいつの相手は私がしようか?」


遂にカトリーヌ・ねこぴょん様が立ち上がる。


つづく。

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