第6話 6
「やったー! ご飯だ!」
「水が飲めるぞ!」
俺たちは次の町、ニについた。まるでチュートリアルだったのか、カトリーヌ・ねこぴょんの親衛隊100人は全員無事であった。
「これより町で自由時間にする。みんな、カトリーヌ・ねこぴょん様の名前を汚さぬように行動すること。」
「おお!」
「飯だ! 飯だ!」
「ナンパだ! ナンパ!」
「日焼け止めを買いに行かなくっちゃ!」
カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊は現地解散し、各々に散っていった。そして誰もいなくなった。
「・・・あの・・・俺たちの首輪は外してもらえないのですか?」
「私たちが何をしたというのだ!? 休みくらいはくれてもいいだろうが!? このブラック企業め!?」
「おお! カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊はブラック親衛隊だ!」
「そうだ! 世界を悪に導く暗黒集団だ!」
「・・・あの首輪を外そうと来たのですが・・・聞かなかったことにします! さようなら!」
「ま!? 待ってくれ!?」
「私、何も聞いてません!? カトリーヌ・ねこぴょん様の心が黒く腐りきっているだなんて!? 私は聞いてません!?」
「俺たち・・・そこまで言ってないぜ。」
「十分、聞いてるじゃないか!?」
カトリーヌ・ねこぴょん様親衛隊の隊長セーラのメイドのバッキ―に、カトリーヌ・ねこぴょんのことを悪く言っているのを聞かれてしまった。
「お静かに!」
「親衛隊長!?」
「セーラお嬢様!?」
「ダメだ!? 殺される!? 俺の人生はここまでか!? ああ~!? もっと遊んでいればよかっ・・・。」
「黙れ!」
「ギャア!?」
俺は親衛隊長の長い足の蹴りをくらい沈黙した。
「あなたたち、ペットの分際で、よくもカトリーヌ・ねこぴょん様を侮辱したな。」
「お許しください!?」
「そうです!? つい出来心です!?」
「カトリーヌ・ねこぴょん様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
「おまえたち? その姿勢は本心か?」
「はい! もちろんです!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様のためなら死ねます!」
「・・・なら、死ね。」
「え?」
「ギャアアア!?」
親衛隊長セーラは首輪に繋がれて逃げることのできない俺とくまぴょんを剣で殺そうと迫ってくる。
「くそ!? ねこぴょんめ!? 俺たちを最初から殺す気だったのか!?」
「なにがカトリーヌ・ねこぴょん様だ!? ねこぴょんの分際で!?」
「それがおまえたちの本性か?」
「そうだ! 元々、この物語の主役は俺たちだぞ!」
「ねこぴょんなんかに忠誠を誓えるか!」
「はっはっは!」
突然、親衛隊長セーラが笑い出した。
「何がおかしい!?」
「気でも狂ったのか!?」
「おまえたちの命を救ってやってもいいぞ?」
「なんだと!? 本当か!?」
「助けて下さい!? 死にたくありません!?」
「条件がある。」
「条件?」
「何でも言ってください!」
「カトリーヌ・ねこぴょん様を・・・殺せ。」
「なんだ。そんなことお安い御用です。カトリーヌ・ねこぴょん様を・・・え!?」
「親衛隊長!? 何を言っているんだ!?」
「私は、私が主人公の物語に横から湧いてきた歪みを排除しようとしているだけ。あなたたちと目的が同じようなので、お声をかけさせてもらいました。」
「同じ目的!?」
「そうです。まずは邪魔なカトリーヌ・ねこぴょん様を、この世から消そうじゃありませんか? 素敵な提案でしょう?」
「ど、どうする!? くまぴょん!?」
「ねこぴょんもヤバイが、まさか!? 親衛隊長の方が、もっとヤバかったなんて・・・!?」
「どうしますか? 私に従うなら助けてあげますが、従わないなら、この場で、カトリーヌ・ねこぴょん様、反逆罪で処刑します。私は実質ナンバー2の地位にいますから、あなたたちを殺しても、誰にも疑われませんからね。ニコ。」
俺とくまぴょんは見つめ合い、お互いの意志を確かめ合いうなずいた。
「誓います! 親衛隊長様に忠誠を誓います!」
「私たちは生きたいです! 死にたくありません!」
「まあ! ありがとう! バッキ―。」
「はい。セーラお嬢様。」
「この人たちの首輪を外してあげなさい。」
「わかりました。セーラお嬢様。」
「ありがとうございます! 親衛隊長様!」
「セーラお嬢様! 万歳! セーラお嬢様! 万歳!」
「友情の印にネックレスをあげましょう。バッキ―。首にかけてあげなさい。」
「はい。セーラお嬢様。」
こうして俺たちの首輪は外された。
「やったー! 俺たちは自由だ! 自由を手に入れたんだ!」
「首輪が外れれば、こっちのものだ! 誰が親衛隊長なんかに従うものか!」
「そうだ! おまえの悪行をねこぴょんに告げ口してやる!」
「バッキ―。お見せしてあげて。」
「はい。セーラお嬢様。」
メイドのバッキ―は、ネックレスをしている案山子を準備する。
「セーラお嬢様を裏切る行動をしたり、自らネックレスを外そうとするとこうなります。」
案山子は100万ボルトの電流が流れ一瞬で燃え尽きた。
「ギャアアア!? 人殺し!? 案山子殺し!?」
「危ない!? もう少しで自分でネックレスを外すところだった。」
「どうですか? 面白かったですか?」
「面白い訳ないだろうが!?」
「誓います! 私はセーラお嬢様に忠誠を誓うことを約束します!」
「あ!? くまぴょん自分だけ!? 俺もセーラお嬢様に従います!」
「セーラお嬢様! 万歳!」
「セーラお嬢様! 万歳!」
「良かったですね。セーラお嬢様。」
「ありがとう。バッキ―。私を慕ってくれる方が、どんどん増えるわ。これも私の人徳かしら。あははっ。」
「人徳? 脅迫の間違いだろう?」
「やめろ!? うさぴょん!? 聞こえるぞ!?」
「しっー。」
こうして俺とくまぴょんは、カトリーヌ・ねこぴょん様の親衛隊長セーラお嬢様の飼い犬になった。
「ああ!? あの親衛隊員を見ろ!? くまぴょん!?」
「どうした!?」
「あ、あれ!?」
「あれは!? セーラの呪われたネックレス!?」
「見ろ!? あいつだけじゃない!? あそこにも!? あっちにも!?」
「うわあ!? 周りはセーラの手下ばかりじゃないか!?」
俺は気がついてしまった。カトリーヌ・ねこぴょん様の親衛隊の3分の1は親衛隊長セーラの手先になっていたのだった。
「可哀そうに・・・こいつらも俺たち同様、セーラに弱みを握られて脅迫されているということか!?」
「なんて恐ろしい親衛隊長なんだ!?」
「本当に倒さなくてはいけないのは、ねこぴょんではなく、セーラなのかもしれない!?」
「し、静かに!? 誰かに聞かれたらどうする!? もしセーラにバレたら、ネックレスが爆発して、私たちは死ぬことになるんだぞ!?」
「う!? 危ない!? 危なかった!?」
「とりあえず、人目につかないように路地裏に行こう。」
「おお。」
俺とくまぴょんは、カトリーヌ・ねこぴょんとセーラの目を気にして人気の少ない路地裏に移動した。
「うえええ~ん!」
「泣くなよ!? 誰かに聞かれるだろう!?」
「もう帰りたい! 冒険なんかしたくない!」
「仕方がないだろう!? 僕たちは、もう逃げられないんだ!? 死ぬまで奴隷として生きるしかないんだ!?」
「そんなの嫌!? うえええ~ん!」
路地裏で泣いている幼そうな男女を見た。
「見ろ。首にネックレスをしているぞ。」
「可哀そうに、こいつらもセーラお嬢様の被害者か。助けるか?」
「違うだろ? 今度は俺たちが脅迫する番だ。」
悪そうな顔をする俺。
つづく。
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