誘惑の黒真珠
カゲトモ
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「綺麗な髪ですね」
つい、そう声を掛けたくなった。だってあまりも美しい髪だったから。艶やかで黒真珠みたいで、サラサラできっと触り心地が良いに違いない。さすがに触らせて欲しいなんて言えないけれど。
「ありがとうございます。一応、それなりに大切にしている髪なので」
切れ長な瞳が印象的な彼女は紅いリップがよく似合う。たまにふらりと飲みにやって来る女性だ。
「お手入れ、大変じゃないですか?」
腰まで長いってだけでも本当に大変そうなのにドライヤーとか一体どのくらいの時間掛かるのだろう。俺なんて一瞬で終わるぞ。
「そうですね、はい。ちょっと大変です。ドライヤーを当てているとシャワーを浴びた後なのに汗だくになってしまいますし」
「そうなんですね」
「そうなんです。ドライヤーって温風を当てて乾かすじゃないですか、だから髪も熱くなっちゃうし身体も熱くなっちゃうし。冬でも汗を掻くくらいなんですから、夏なんて最悪ですよ」
そう言ってネイルの行き届いた指先で髪を撫でる。
なるほど。それは大変だ。
「トリートメントや美容室でスパを受けるのにお金はかかりますが髪も綺麗になるし良いんですけれど、髪の維持で何が嫌って日頃のドライヤーですから」
「そこまでは思い当たりませんでした。髪の長い方は大変なんですね」
「好きでやっているから仕方ないことなんですけどね」
そんな日頃の苦労があってこそ、その髪は美しく輝くのかもしれない、なんてね。男だからとかじゃなくて俺には絶対に出来ないよ。
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