幕間 それでも噛み合うのならば歯車は回る。
絵を見ている時のそーちゃんは、まだ見た事の無い表情をしていた。
自分には今まで見せてくれなかった表情。
かれこれ二年以上付き合っているが、未だに何処か一線を引かれている気がする。
周りに壁を作って、人と関わる事を恐れている。
でも、他人の為には動ける人。
誰かに優しくしたり手を差し伸べる事が自然に出来る人。
ただ自分が触れられるのが非常に苦手。
彼に触れる時には繊細な飴細工に触れる時のように、慎重に丁寧に優しく触れないといけない。
そうしないと簡単に壊れてしまうから。
どうして私はこんな面倒な人と付き合っているのだろう?
単純な話だ。
今にも壊れてしまいそうなその心を守ってあげたいと思ってしまったのだ。
けど、この気持ちは母性や保護欲なんてプラスな気持ちなんかじゃない。
私は彼の事を、青柳総士を私に依存させて、独占したかった。
自分無しでは生きていけないようにしたかった。
我ながら陰湿で歪な感情だと思う。
けれどもそれが私の愛の形。
こういう形でしか私も誰かを愛せなかった。
私を縛る「守れ」という言葉のせいで。
そしてこんな私だから、総士も恋人になってくれたのだと思う。
私達には一つだけ、でも決定的な共通点がある。
それは私も彼も大切な家族を失っている事。
私は兄を。
彼は妹と母親を。
それを互いに打ち明けた時、私達は本当の意味で分かりあえたのだと思う。
だから、あんな顔をしていたそーちゃんを見たとき驚いたのだ。
私以外のものに、何か希望を見出したようなその顔を。
私以外のものに、頼り所を見出していた事に。
悔しかったからその日はめちゃくちゃギューってした。
彼が他の女の所に行かないようにする為に
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