ワーカーレスホリック ~働くって、何ですか?~

赤鷹 熊

プロローグ

 二人の出会いは偶然だった。

 たまたま同じ日に同じ喫茶店に入って、満席で合席を店員が提案してきて、彼女が快諾し、彼も迷惑でなければと応じて、一緒にコーヒーを飲むことになった。

 二人はその日から、なんとなく色んな所で出会うようになる。

 けれども二人の距離は知人以上に縮まる事は無かった。

 少女マンガのようなロマンチックな恋愛にはならず、少年マンガのように世界をめぐる戦いが始まる事もなく、青年誌のように陰謀と策謀が渦巻く裏社会に巻き込まれるわけでもない。

 ただ会うたびに話すだけだった。

 話すテーマはいつも同じ。

 働くとは何か?

 二人は会うたびに、ただその事だけを話す。

 理由なんてない。

 強いて言うなら互いの状況や環境で、その話題にしやすかったに過ぎない。

 けれども幾ら話しても互いに納得できる答えには至らない。

 だから二人は話し続ける。

 一人は自分の道を見つける為に。

 もう一人は、より人生を楽しむ為に。

 二人は語り合う。

 二人が納得する答えを見つけ出す為に。

 特に約束もせず、偶然あった場所で。

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