第19話 人を拾いました
新しい防具も武器も手に入れて、そこから仕事してね!というギルドからのメッセージは透けて見えたものの、予想以上にいい品物を手に入れることができて楽しくお買い物を終えた。
市場にある果物屋さんで、りんごみたいな果物をいくつか買った。お弁当屋さんでお弁当を買って、デザートに果物を食べよう。ちょっとした贅沢が人生の幸せの7割を占めているに違いない。
「あれ?」
道の端に人が倒れていた。カエルが潰れたみたいにべっちゃりと地面と仲良くしている。真っ黒な髪の毛と装備のせいで影かと思った。
「イアン(デミヒューマン) lv.42」
のぞき見で見たが詳細は見れなかった。
私よりもレベル高いのになんで生き倒れてるのだろう。lv5で冒険者ランク1、lv8で一般的な庶民、lv15からランク2、lv30からランク3になれる。ランク2からは生計を立てるのも楽になって、3になればちょっとした小金持ちになれるのに。それに装備からもお金に困ってそうには見えない。地面を見ても血が流れているわけではない。謎だ。
そこまで観察してから周りを見渡すが遠巻きにするだけで近寄ることすらしない。こんなに道が混んでいるのに倒れている人の周りだけ結界がはってあるかのようにみんな避けていく。
チラチラ見ている人もいるから見えていないことはないのだろうけれど、みんな見て見ぬ振りだ。私のお人好しな部分が仕事をしてしまい、倒れている人に話しかけた。
「大丈夫ですか?聞こえてますか?」
「……え?」
「がっつり聞こえてるね」
しかも意識もある、虚ろで眠そうな感じではあるが叩いて話しかけたら反応があった。水でもあげたらいいんだろうか。
彼の服装は魔法使い仕様の黒いローブで帽子はなくフードが大きめだ。シンプルな緑の石がはめこんである
「水飲む?」
「眠い」
「いや、ここで寝るのまずいって。宿紹介するから、移動しよう」
「私が行くと迷惑になる…」
「お金なら払うから!ここで寝るのは倫理的にダメだって」
「そうではなくて…」
ちょっと困ったように私を見る青年を担ぎ上げた。レベルが上がり、魔法を一切使えない代わりに会得した筋肉だ。魔法が使えないせいで消えて行くお金があるんだ、その分、こういうときは存分に筋肉が働いて欲しい。
抵抗することなく担がれた青年を背負って星の夜亭に行って、パーティになった!と女将さんに言えば私の部屋の隣をあけてくれた。意識もあったし、医師はいらないはずだ。そのまま布団に投げ捨てると幸せそうに布団に包まって寝ていた。
濡らしたタオルで顔を拭いたりしてみると美貌が露わになってきた。薄汚れてたときでも、あれ?この人、凄く美人?と思っていたが、予想よりもはるかに美しい人だ。綺麗すぎてちょっと背筋がぞくっとする。でも、幸せそうに寝ている。
害はなさそう。睡眠で切羽詰まっていただけみたいだ。気持ちはわかる、二徹辺りから常識とかモラルとかどうでもよくなってどこでも寝たくなるよね
レベルが上がっても睡眠は大事らしい。
私もみんなに親切にしてもらってなんとかなったし、誰かに還元してもいいと思う。起きたら睡眠は大事だから身体が求める分は寝なさい!と教えてあげよう。
そう決意して女将さんの特製スープを啜った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます