第19話 ~小舟の上で起きたこと~
たぶん時間的にももうお昼なんだろうなと思う程に青い空には燦々と輝く太陽が普段よりも高い位置にあるように感じられて。
そんな太陽を眺めながら、わたしは波に揺られながらゆらゆらと海に背を向けて漂っていたんだけど。
「よっ、と」
流れる様に今の体勢から一回転。
ぐるっと回ってそのまま海の中に潜っていって。
ぶくぶくとそんな音だけが聴こえる静かな空間。
太陽の光に当たって少しだけ赤くなっていた身体に染み渡る冷たい水がとても気持ち良くて。
わたしはそのまますいすいと下まで潜ってみました。
深度的にそこまで深さはないんだけど。
湖や川とは全然違った光景が広がっているんだよね。
海底には見たことのない生き物がいっぱいいて。
なんか毛がわさわした虫がいてびっくりしたり。
岩穴の中から細長いおさかなみたいなのが飛び出てきたりと、地上では絶対に味わえない光景が広がっていて。
赤や黄色、緑色だったりとてもカラフルな色をした植物? みたいなのもいっぱい生えていてとっても面白いんだよ。
そんな感じで海底を思う存分堪能したら。
次はそのまま海底に背を向けて。
海の上を漂っていた時と同じ体勢で上を見上げてみたんだけど。
もうね。ぜんっぜん違うんだ。
海の中が一つの宝石みたいな光景がそこにはあって。
たくさんのおさかなさんが自由気ままに泳いでいて。
キラキラと水の中が光り輝いていて。
こうしてみると人ってほんとちっぽけな生物なんだなって思うんだ。
そんなことをぼーっと考えてたら。
こぽ……。口から小さな気泡が漏れてきて。
あ……そろそろかな。
「ぷはっ!!」
息が切れそうだったので海面へと急速浮上。
口の中に新鮮な空気がいっぱい入ってきて一安心。
ちょこんと水面から顔だけ出した状態できょろきょろと周囲を見渡してみると。
あ、浅瀬でココちゃんとエリオくんが手を振ってる。
ロジーくんは……あ。エリオくんの足元にいたんだ。
なんだかまたふざけ合ってるみたいだなぁ。
それにアレクくんとフィーゼちゃんは……。
ココちゃんたちの近くで二人してボール遊びしてるみたいなのかな。
あの二人ほんと仲が良いんだよねぇ。
そんなみんなの様子を見て。
ついつい泳ぐのが楽しくなってわたしだけ離れた位置で泳いでいたんだけど。
うん。そろそろわたしもみんなと合流した方がいいかな。
「せーのっ」
息を大きく吸い込んで。
また水中に潜ったわたしは、足を器用に動かして。
そのままみんなに向かって泳ぎ出すことにしました。
「お前……なんなの?」
「ふぇっ? なんなのって何?」
「いや、悪い意味とかじゃなくてさ。俺のせいでもあるけど、ついさっきまで溺れるくらい泳げていなかったのに、アレはあり得ないだろ!?」
「うーん? わたし何かおかしいのかな?」
戻ってくるなりロジーくんが詰め寄って来たんだけど。
あれ、わたしってそんなにおかしいかな?
「あははは。あの泳ぎっぷりを見ちゃうとさすがに今日はじめて海で泳いだって誰も信じないんじゃないかなぁ」
「リアお姉ちゃん凄いです!!」
わわ。なんだかとっても称賛されてるよ。
引率の犬耳のお兄さんたちもわたしを褒めてくれるし。
わたしってそんなに凄いのかな?
確かにエリオくんから再度泳ぎの練習を教えてもらったんだけど。
なんていうんだろうね。
慣れたと言えばいいのかな? こう動けばこうなるって水の中だとイメージ通りに身体が動くことが分かってね。
そこからはもうわたしのターン! みたいな?
おさかなみたいにすいすい泳ぐことが出来たんだよね。
っていうことを、みんなにも言ってみたんだけど。
「んだよ……。せっかくカッコイイところ見せようと思ったのに」
「これはさすがに僕も立つ瀬がないなぁ」
「リアお姉ちゃん、私にも! 私にも潜り方教えて欲しいな!!」
三者三葉と言うのかな。
いじけるロジーくんと、苦笑いをするエリオくん。それにキラキラした目を向けてくるココちゃん。
んー。さすがのわたしでも自分の上達速度が普通じゃないってことは何となく分かって来たんだけど。
わたしって実は泳ぎの達人だったのかな?
『というよりも水との親和性が高いからだと我は思うぞ』
ふぇ?
『たぶんだが、クーは元々水属性の魔法適正を持っているだろう? だから少なからず水に対する耐性があると我は思っているんだがな。だが、クーの元々の魔力量からして普通に過ごしていては気づかない程度だったのであろうな』
あーなるほど!!
その結果が海で泳ぐことで水の操り方を無意識に理解したってことなのかな?
『恐らくはな。クーはここ最近我の炎に加えて自身の水の操作も練習しているであろう? その結果がここでも現れたってことだよ。頑張っているようで我は嬉しいぞ』
おお。
えへへ。嬉しいなぁ。
「いきなりなにニヤニヤしてるんだ? なんかとても怖いんだけど」
「リアお姉ちゃん何か楽しいことでもあったの?」
わひゃ。わたしそんなに顔がにやけていたかな!?
顔をぐにぐにしてごまかしてみるけど意味ないよねこれ。
「あ、えっとね。――って、あれ? なにか美味しそうな匂いがしてくるような」
何処からか漂ってくるとてもいい匂いに気づいて。
「あ、そういえばそろそろご飯の時間だね」
「タイミングばっちりじゃん。おーい!! ほれ、俺の母ちゃんとココの母ちゃんが来たぜ」
ロジーくんの視線に釣られて鍾乳洞の方を見てみると。
そこには丁度鍾乳洞から出てきたクリネおばさんとロジーくんのお母さんがやってくるのが見えました。
二人の手には大きなカゴが抱えられていて。
あ、ちなみになんだけど。クリネおばさんは村の若い人たちみんなから何でか母ちゃん呼ばわりされてるらしいんだよね。
何でもみんなのお母さん的な存在らしくて。
まぁ、わたしもクリネおばさんを見てれば納得するんだけどね。
誰彼構わず怒るときは怒る。褒めるときは褒めるって感じでみんな平等に接してくれる姿は確かにみんなのお母さんって感じなんだよね。
わたしもクリネお母さんって呼んだ方がいいのかなぁ。
えへへ。自分で言ってなんだけど恥ずかしいからまだ暫くはクリネおばさんのままでいいかも。
と、そんなことを考えてるうちに。
「喧嘩せずに皆仲良く遊んでいたのかい?」
「おう、もちろんだ――」
「ロジー兄がまたリアちゃんのことイジめてたよ」
「あ、お前!! 今それを言わなくていいだろ!?」
クリネおばさんたちがやってきて。
ロジーくんとエリオくんが掴み合って転げまわって。
少しだけ離れて遊んでいたアレクくんとフィーゼちゃんが戻ってくると同時に二人の喧騒に巻き込まれちゃって。
その様子をあわあわ見てるココちゃんやわたしと違って。
ロジーくんのお母さんが容赦なくロジーくんの頭にゲンコツを落として、とっても痛そうな音がしたり。
まぁ、なんていうかとっても賑やかな光景が広がっていたんだ。
「「「「「「ごちそうさまでした!!」」」」」」
わたしたちが囲んだ中心に並ぶカゴの中は全部からっぽになっていて。
砂浜の上で食べるご飯はいつもとは違った新鮮さがあってとても美味しかったんだよね。
冷たい野菜のスープと、燻製されたお肉と野菜をパンに挟んだサンドイッチ。
それに同じく冷たく冷やされたジュースが乾いた喉を潤してくれてね。
自分でも気づいてなかったけど結構疲労していたみたいで。
疲れた身体が癒されていく感じがするくらい美味しかったんだ。
わたし以外の他のみんなも同じ感想みたいで。
満足そうな顔を見たクリネおばさんたちはカゴを片付けてまた村へと戻っていっちゃいました。
「んで。今からなにする?」
ロジーくんが膨れたお腹をさすりながら訊いてきたんだけど。
そっか。まだお昼過ぎなんだよねぇ。
普段は遊ぶ時はせいぜい二時間程度だったから、一日中遊ぶってこと今までになくて。
まだまだ遊ぶ時間は残っているんだけど。
「うーん。少しゆっくりしたいかなぁ、って思うんだけど……。あ、そうだ」
そうだよ。
わたしアレに乗ってみたかったんだ。
わたしの視線の先にある物体。
「リアちゃんどうしたの? って、小舟? ああ、なるほど」
「なるほどな。船に乗って釣りの勝負をするんだな!!」
「え? 釣り?」
何がなるほどなんだろう。
小舟に乗りたいのは確かなんだけど、わたしとしてはゆっくり乗ってみたいんだけどなぁ。
そんなわたしたちの視線に気づいた犬耳のお兄さんがやって来たので。
事情を話してみるとなんと快く許可してくれて。
砂浜からずりずり移動した小舟が二隻、海の上に浮かぶ姿にわたしは大興奮。
そんなはしゃぐわたしを抱えた犬耳のお兄さんがゆっくりと小舟に乗せてくれたんだけどね。
思った以上にこれ……。
ものすっごく揺れるんだよ。
「わ。わわっ。わわわわわ!!?!?!?」
ぐらぐらぐらぐら。
右へと左へと。バランスを取ろうにもこれ無理じゃないってぐらいぐらいぐら揺れるから。
うん。立ってられない。ココちゃんみたいにわたしも大人しく座ってよう。
「こっからは絶対にはしゃぐんじゃないぞ? 特にロジー。お前が一番危ないんだからな」
「分かってるって。さすがに俺もちょっとだけだけど怖い……いや、怖くなんてないからな!?」
各小舟には犬耳のお兄さんが一人づつ立っていて。
器用にバランスをとりながら小舟を漕いでどんどん砂浜から遠ざかっていくんだけど。
わたしの隣にはココちゃんとロジーくん。
少し離れた小舟にはエリオくんとアレクくんとフィーゼちゃんが乗っていました。
えっとね。とっても凄いんだよ。
見渡す限りの海!!
わたしたちがいた砂浜もかなり小さくなっていて。
「うわぁ。おっきいねぇ」
わたしたちがいた陸地といえばいいのかな? もしくは大陸?
漕がれていく小舟から後ろへ振り返るとおっきなアザリア山脈が視界いっぱいに広がっていて。
町にいたときは遠くに見えていた山脈だけど。
こうして間近で見てみるとやっぱり凄さが伝わってくるんだよね。
陸から結構離れたって言うのに今いる場所から見上げても頂上が見えないぐらいおっきな山脈なんだ。
「ク、クーリア……。お前、怖くないのか……?」
「え? 結構揺れるけどちゃんとしがみついていれば大丈夫じゃないかな? ね、ココちゃん」
「えっと。腰にロープを結んでもらってるから。だから落ちても大丈夫って安心感はあるよ?」
あ、このロープってその為にあったんだね。
犬耳のお兄さんに小舟に乗せられた後、小舟から伸びるロープがわたしたちの腰に結ばれたんだけど周りの風景を見るのに夢中で気にしてなかったよ。
「だけどさぁ、この吸い込まれそうな深い青。怖くねぇか?」
「んー? うーん……確かに何も見えないね」
小舟から顔だけ出して海面を覗いてみると確かに何も見えない。
ふかーい青と言うよりも黒といってもいいくらい何も見えない空間が船の下には広がっているみたいで。
あ、確かにずっと見てると吸い込まれそうでちょっと怖いかも。
『熱が届かないからな。海面から少し程度なら捕捉は可能だが、海というものは広大だからな。場所によっては光すら届かずに本当の暗闇が存在すると聞いたことがあるぞ』
だって、どれだけ進んでも前も右も左も海面しか見えなくて。
今わたしたちがいる海の下だって真っ暗ってことはとっても深いってことなんだよね?
考えてたらロジーくんじゃなくても本当に怖くなってきたかも。
ほんと海って凄いんだねぇ。
あ、そうだ。
「お兄さん、お兄さん。この辺りっておさかなさんはいるんですか?」
「ん? そりゃもちろんいっぱいいるさ。中にはこの船の数倍はある魚もいるんだぜ?」
え。この小舟の数倍って……どういうこと!?
「そんなおさかないたらわたし食べられちゃうよ!?」
「あっはっは。確かにこんなところで溺れたら食べられちゃうかもなぁ」
笑いごとじゃないってば!!
ほら、わたしだけじゃなくロジーくんまでぶるぶる震えちゃってるし。
あれ。ココちゃんはいつもと変わらないような。
「ココちゃんは平気なの?」
「えっと。そのお魚美味しいのかなぁって考えてました」
ここにわたし以上に食にこだわる子がいたよ!!
ココちゃん恐るべし。
「で、ロジーは釣り勝負するのか? 一応釣り具も積み込んでいるから何時でも可能だけどよ」
「あー……クーリアがどうしてもって言うんならやってやらないこともないかなーと。いや、俺は別にやってもいいんだぜ?」
「えぇ、なんでわたしなの?」
別にわたし釣りはやりたいと思わないんだけど……。
「くくっ。ロジーよ。一つ言っておくが、ここらの海の中にはな、お前が普段食ってる魚でもお前を簡単に海の中へと引き込むぐらい力が強い奴もいるんだぜ」
「うぇっ!? まじかよ……」
あ。ロジーくんがまた頭を抱えて震えだしちゃった。
犬耳のお兄さんはものすごく笑ってるけど……。
「それ本当なんですか?」
「ははっ。ああ、もちろん本当だよ。魚も簡単には捕まってやらねぇって逃げるんだから当然さ。本気で油断してると釣り竿ごと海の中にドボンってこともあるんだからね」
「こわっ。え、怖いよそれ!!」
「なら釣りは止めてこのままゆっくりと遊覧する感じでいいのかな?」
「「それでお願いします!!」」
「お魚食べたいなぁ」
ココちゃんが残念そうにしてるけど、おさかななら別にお兄さんたちが捕まえてくれるはずだからそれを食べよ? ね?
向こうの小舟もわたしたちの声が聞こえていたのか釣りは行わないみたいだし。
この広い海をゆっくりと船で漂うだけでも楽しいもんね。
そんな感じで小舟二隻が着かず離れずの一定の距離でゆっくりと海の上を移動していた時のことでした。
「おい、あれってなんだ?」
『クーよ。何か少し大きめの生き物がこっちに近づいてきている様だぞ』
ロジーくんの声と
指さす先を見てみると。
海面から……なんだろうあれ。角? みたいな何かが飛び出した物体が水しぶきをあげながらわたしたちの小舟に向かってきているのが見えて。
「あれは……おい!! 鮫が現れたぞ!!」
さめ? あの生き物のこと?
犬耳のお兄さんの怒声にびっくりしたけど、どうやら只事じゃない雰囲気だけは伝わってきて。
「まずいな。ガキ共は船にしがみついているんだ!! ちっ、逃げ切るのは無理そうだな……。おい、そっちに銛はあるか!?」
「あぁ。念のため準備はしていたから何時でも投げれるぞ! そっちはどうだ?」
「こっちも問題ない!! だが、あの大きさだ。船ごと引っ張られる可能性があるぞ」
「なら、捕まえるんじゃなく追い返せば問題ないだろう!?」
え。船ごとって……。もしかしてさっき言ってた船より大きいおさかなが現れたの!?
「な、何が起こったんだよ!?」
「リアお姉ちゃんどこー!?」
手をふらふらさせてたココちゃんをしっかりと握ってみるも。
わたし自身咄嗟の出来事に混乱してしまっていて。
『とにかく落ち着くんだ。悪いことは言わない。大人の言うことを聞いて船にしがみついているんだ』
う、うん、分かったよ。ココちゃんを抱き寄せて小舟にしがみついて。
そうこうしている内にわたしの視線の先にはあと数秒もあれば小舟にぶつかってきそうな大きい黒い影が迫って来ていました。
そして。
「同時に投射するぞ!! 3、2、1――今だ!!!」
頭の上から聞こえてくる犬耳のお兄さんの掛け声と同時に投げ放たれる槍のような細長い棒――銛が黒い影に突き刺る光景が目に映って。
その瞬間。
「ふあっ!!?!?!?」
身体が上下に反転したみたいな衝撃が襲ってきました。
なに? 本当になにが起こってるの!?
「――――――――!!!!!!」
視界そのものがぐるぐると回っている中。
すぐ近くには何かが声にならない叫び声を上げていて。
海面には真っ赤な……これは血? そんな真っ赤な血が黒い影からいっぱい広がっていて。
もがき苦しんでいるんだ。
必死に銛から逃れようとわたしたちが乗る小舟ごと引っ張っていて。
だから小舟が傾く衝撃で身体が揺さぶられているんだ。
「くっ……。何でこんなにデカい鮫がここまで来てるんだよ!!」
「愚痴をこぼす暇があったら早く杭から銛を切り離せ!! このままだと転覆するぞ!!!」
もう本当にぐぐぐって小舟がほとんど縦に傾いてるって言ってもいいぐらい仰け反っていて。
「うわわわっ!!?!?!?」
「ううっ!! ロジーくん、わたしの手に捕まって!!」
海に落ちかけたロジーくんを必死に掴んだけど、これわたしももう無理だよね!?
右手にはココちゃん、左手にはロジーくん。
わたし小舟掴めてないよ!?
海に落ちる!! そう思った瞬間。
ガクン、と船が急激に反対へと揺れ戻りを起こして。
わたしたちは一瞬宙に浮いたものの、そのままお尻を船底に打ち付けるだけで海には落ちずに済んだみたいでした。
「あぅ、いたた……。って、え。なにがどうなったの!?」
お尻をさすりながらきょろきょろと周囲を見回してみるも。
さっきまでの激しい揺れが嘘みたいに船は落ち着きを取り戻していて。
すぐ側には息を切らしている犬耳のお兄さんが立っている以外平穏を取り戻しているように見えました。
「あぶねぇ。危機一髪だった……」
「あと一瞬銛を切り離すのが遅かったら全員海に落ちていたぞ」
銛……。
あ、さっきの黒い物体。さめ? っていうおさかなに刺さった銛に繋がっていたロープの先が船から無くなってることにわたしは気づきました。
そっか。わざと逃がすために銛ごと手放したんだ。
もし、あのままロープが小舟に繋がったままだとしたら。
本当に小舟ごとひっくり返るか、小舟そのものが耐えきれずに壊れちゃっていた可能性があるんだよね……。
なにはともあれ。
「ロジーくんもココちゃんも大丈夫?」
「こえぇぇ……。あれが海の魚なのかよ。俺もう船には乗りたくねぇよ」
「お魚さん行っちゃった……」
って、ココちゃんこんな時でもおさかなのこと気にしてるの!?
あれ、ココちゃんってこんな子だったっけ?
「とにかく。皆無事で良かったよ。あんなデカい鮫が現れるなんて思わなかったからな。怖がらせてしまってほんとごめんな」
「ううん。必死に助けてくれて有難うございました。だけど、もうあのおさかなは襲ってこないんですか?」
「ああ。たぶんな。ほら、どんどん遠ざかっていってるだろ。あの怪我だ。恐らくはもう長くはないだろうな……」
犬耳のお兄さんの言葉にわたしもさっきのおさかなの方を見てみると確かにどんどん視界から遠ざかっていっているのが見えるよ。
あんな大きなおさかな本当にいるんだね……。
海の怖さを思い知らされた気分だったよ。
でも。
そんな思いは。
『ッ――なん、だと……!? クーリア!! それに他の獣人たちもだ。今すぐに陸地へと戻れ!!!』
「「「「え?」」」」
わたしたちの小舟も。すぐ隣に位置する小舟に乗ったみんなも同時にわたしの方を向いてきて。
え、
それに陸地へ戻れ? そりゃ今すぐにでも戻りたい気分なんだけど。
と、そんな呑気な思いは一瞬で絶望へと変わっていって……。
『いいから早く戻れ!!!! 奴が……大海の魔物と恐れられた特級危険種がすぐ近くにいるぞ!!!!』
「「は……な、え――――!?」」
誰が指すでもなく。
全員が向いた視線の先。
それは唐突に海の中から現れたのでした。
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