一兵卒、レプラホーンに出会う。そして
深山鬱金
プロローグ
「トトト、トトト」
それはアダマンタイト探索の一日目を終え、野営している寝床に入るところだった。
茂みの奥から何やら物音がした。人の声にも似ているが少し違う。
南ライラック地方特有の生き物かと思い、俺は腰のダガーを引き抜いて、徐々に距離を詰める。
「トトト!」
暗闇の中空を漂うように淡い光が五つほど見えた。大きさはランプぐらいある。まるで蛍のように宙をふわふわと漂っている。
「言葉は分かるか?」
初めて港で会った異国の人に話しかけるようなニュアンスで接触を図る。
「トトト?」
どうやら向こうも戸惑っているようだ。未知との遭遇である。
「トトト! トトトッ、トトトトト?」
お互いに顔を合わせている。そして、意を決したように一人が口を開いた。
「…こんにちは! 私は妖精よ」
「妖精!? 初めて見た」
しかし、妖精か………。
妖精って、もっとスリムで美少女的なモノを空想していたが、だいぶ違う。
まず、小太りだ。
メスっぽいのだが、小太りだ。良く言えばマシュマロのような可愛さだ。
「何してるの? ここは妖精の土地よ!」
妖精にも縄張りがあるのかと思い、トラブル防止を兼ねて事実を打ち明ける。
「実はアダマンタイトという秘宝を探しているんだ」
「アダマンタイト!!」
他の妖精もざわめき出した。ぼんやりとした光が左右に散る。
「何か知らないか?」
「アダマンタイトで何をするつもりなの?」
「移動するのに使うんだ。なんでもアダマンタイトさえあれば、一瞬で違う場所に移動できると聞いてね」
「そうなの。…で、目的は?」
妖精に人間界の話をしても通じるか分からないが、試しに言ってみた。
「実は、クランベリー城にいるホロウィッツ枢機卿を倒すためなんだ」
「ホロウィッツ枢機卿! あいつは私たちの土地を根こそぎ奪い去ったのよ!」
「何!? 妖精にまで被害が及んでいるのか?」
「そうなの! 元々、私たちは別の場所に住んでいたわ。もっと広くて快適なね。でも、ホロウィッツ枢機卿が突然やって来て、私たちの土地を蹂躙したのよ!」
その妖精は銀色の髪を振り乱して抗議するように叫んだ。
「そう言えば、アダマンタイトを探してるって言ってたわね! 明日の朝、また会いに来るわ」
好きでもないのに一方的にデートの約束を取り付けられたような気分だった。
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