外つ歌:惨劇の山
ドローンや高性能センサーによる偵察が不首尾に終わった後、青の軍勢は情報収集方法を威力偵察に切り替えました。
実際に脚を踏み入れ、攻撃してみないと装甲兵器を運用する基礎になる地盤や相手の守備状況は分からないという判断です。
地盤も敵勢力も分からない中でのとりあえずの攻撃。危険どころではない状況に、草原の戦いでも主力を務めた装甲車部隊から一〇〇名以上が志願して部隊を編成しました。必要に応じて砲兵支援を受けつつ、とりあえず突入してみる、という計画です。
古いセオリーに従うならば十分な準備砲撃を行うところですが、弾薬が十分ではありませんでした。そして弾薬の不足は将兵の血であがなわれることになります。
威力偵察部隊は四合目までも届かずに各所に、そして綿密に設計されて配置された防御加点によって粉砕されました。空中を飛んで敵地に入ろうとしたホバー部隊は対空ミサイルで全滅、装甲車は軟弱地に脚を取られているところを十字砲火を食らって炎上、脱出したピロット族は背中を撃たれて遺体回収もままならない状況になりました。
発見された敵の抵抗拠点に砲撃を浴びせ、沈黙したあとに再度威力偵察を行うという行為は三度続き、そのたびに全滅が続いて将兵の士気は下がり続けました。五度目の偵察で敵が破壊したはずの一部の抵抗拠点を立て直して戦っていることが知れると、さらに士気は下がりました。
六度目の威力偵察は、ついに行われませんでした。
--大太郎法師を投入すべきかもしれません。
指示に動く兵がいない状況でそう発言したのは、詩歌という人物です。ピロット族としては変わり者で、商人ホンマと同じように氷の眠りにつくこと無く生きていた者で、年齢を数百年と言います。一カ所に留まらないでいいために年を取ったように装う必要も無く、年齢不詳の顔立ちをしていました。
--いや。まだだ。
苦々しい顔でそう応じたのはスモッグです。彼は詩歌の気持ちは分かる、分かるけれどもと言った後、苦しい胸の内を明かしました。
--確かに大太郎法師なら勝てる可能性はある。とはいえ、まだ整備が済んでいるのは五,六機。あれは集中運用しないと効果が弱い。なによりあれは決戦兵器、あれを使って勝っても、その後が続かない。
--後がないというなら、兵の士気も危険水域ですよ。
詩歌が言うと、分かってるとスモッグは顔をしかめました。
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