ヨシュアたちの怒り
草原続く平野にまた煙が上がっていました。
--またか。
大跳躍して煙の元へ行こうとしたら、前の半分ほどの距離で後ろからついてきているグロリカから声が掛かりました。
--まて、本当はお前がやってるんじゃないのか。
怒りの目で見られていることに腹を立てたヨシュアはグロリカに手を伸ばしました。
--そんなに言うなら、着いて来るといい。ただ毒を盛られると困る。
グロリカは腹立たしそうな顔をして、上着を脱いで背嚢に入れました。
--連れて行け。
ヨシュアはグロリカをお姫様だっこして飛びました。
--目が!
--暗くなるのは直ぐに戻る。
ヨシュアは盛大な土煙をあげて着地。そこは既に焼けただれ、生き残る者など一人もいないようでした。
--ここもか。
--良く見せろ。
グロリカは恥ずかしそうにヨシュアから離れると、破壊され尽くした草原の村を見ました。人は皆、腹から裂かれてばらばらになっていました。
--異教徒であろうとも……
ヨシュアのつぶやきは、苦々しい怒りに満ちていました。
--宗教の問題か? 酷いことを。
--確かに、信教の問題ではないな。騎士として、討伐せねばせねばならぬ。
--職業の問題でもないだろう。
グロリカはヨシュアを睨んだ後、目線を逸らして小さく頷きました。
--だが、その通りだ。森の獣を虐殺していたのも、これかもしれない。そうでなくてもこんなことをするやつは倒すべきだ。お師さまもお許しになるだろう。
--師の問題か?
独り言を言ったらグロリカが睨むので、ヨシュアは目線を逸らしました。追放も悪い話ではない。こんな敵を倒して異教徒とはいえ人々や妖精のためになるのなら、喜んで追放されてやろう。
ヨシュアはどうやれば敵に近づけるかを考えました。
--どうすればこの敵に近づける。そもそも何が目的だ。殺すために殺しているとしか思えない。
グロリカは輪になって倒れる苦悶の表情の死体を検分し、目を閉じさせました。
--食事中に腹を内側から裂かれて死んでいる。
どういう殺し方だとヨシュアは悪態をついたあと、埋葬のために動きだしました。
数時間の陰鬱な作業の後、グロリカが仁王立ちで口を開きました。
--外側の人間は武器で殺されている。ほとんどは後ろから。逃げているところを後ろから突かれたり切られたりしている。一部は多分逃げおおせているな。賊はあまり多くない。多分二人。それと、一部の女性は辱めを受けている。
--わずか二人……だと?
グロリカは目を瞑って深呼吸した後、言葉を絞り出しました。
--二人だ。信じなくても良いが食事中の誰かの腹の中から出現して凶行を起こした後で自決している。
--死んでいる、だと。討伐する前に死んでいるとはなんと卑劣なやつらだ。
--それが何度も起きている。この死体だ。見覚えがないか。
--ないが……そうなのか。
--そうだ、この死体には見覚えがある。必ず村はずれで首を自ら裂いて死んでいる。
--不死者、とでもいうべきか。
--死んでいるから不死ではないな……何というか分からないが。
怒っているグロリカに、ヨシュアは鼻息一つのあと口を開きました。
--良い呼び方がある。敵だ。
--なるほど。敵と言われれば敵としかいいようがない。
ヨシュアとグロリカは互いを見て、敵を倒すぞと同時に持ちかけました。
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