大灯台の盗賊達
埃まみれと呼ばれる遺跡専門の盗賊たちがたどり着いたのは、今は用を足していないウルクの大灯台という場所でした、土台にはめ込まれた碑文を見ることもなく、また読むこともできずにゆっくりと武器を抜いて、灯台の中へ入っていきました。
大灯台は高さにして四〇〇〇キュビト、すなわち肘から手のひらの長さにして四〇〇〇個分と言いました。今ではもう再現できない技術で作られており、歩く者を不安にさせるような、無機質な材料で覆われていました。
--こいつは……いや、お宝なんか本当にあるのか。
先頭を歩くエノクが、身を震わせて言いました。
--あるって、表の碑文見たろ。あれにはいつまでも光輝く宝石の話が書いてあるんだよ。
後ろを着いてくる盗賊が、笑いながらそう言います。実のところ彼も殺した旅人から聞いた話なのですが、彼は正直に言いませんでした。
エノクは肩をすくめて、歩き出します。暗い灯台の階段を上る間、彼は牛を飼うことと、あまり美人でもない妻を貰うことばかりを考えていました。
どれだけ歩いたか、エノクが分からなくなる頃に不意に足が止まりました。大きな裂け目に突き当たったのでした。
--行き止まりだ。
--松明を掲げろ。
松明で照らされたのは裂け目の向こうにある傾斜の続きでした。三〇歩はあるでしょう。縄を引っかけるに向いた棒もないように見えました。
--どうすんだ。
--誰かが跳んで掴まるしかなかろうよ。
エノクがそうだなと返事をしようとしたところで、短剣が腹に向けられました。
エノクは鼻で笑ってそんなことだろうと口にすると、他の連中の動きを見ました。他も、エノクを行かせようと考えているのは明白でした。
このままでは、一人で一〇人は相手にしないといけない。裂け目を跳ぶのとどちらがいいか。
エノクは跳ぶことにしました。なんの危険もなくお宝にありつけるなどとは最初から思っていませんでした。
皮鎧を脱ぎ、サンダルと短剣、ロープだけの姿になると、助走を付けて叫びながら跳びました。
手は、届かず。しかし最初からそんなことは分かっていました。エノクが狙っていたのは崩れずに残っている途中の基部でした。危ういところで指の先が引っかかり、エノクは宙に揺られました。
--心配したぜ。
ちっともそういう風には聞こえない声で、盗賊の一人が言いました。エノクは無視して腕の力だけで自分を引っ張り上げると、基部から基部に飛びついて、ついには傾斜の続きに来ました。
--んじゃ、俺はここから勝手にやる。
エノクはそう言いました。そんなことはお見通しだとばかりに、短剣を向けた盗賊が言います。
--おいおい、出入り口はここしかないんだぜ。食い物も水もなしでどこまでいくつもりだ?
--やれるだけやってみるさ。
エノクはそう言うと、闇を歩き出しました。彼とて最初から仲間を殺して宝を独り占めするつもりでしたから、ちょっとやそっとでは追いかけられないこの状況は好機とも言えました。
後ろで小競り合いが始まったことを薄い笑いで聞き流すと、エノクは一人、傾斜を登っていきました。
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