脳内でJKを会話させ、私は知識欲を満たす

にとろげん

るつぼ


「ねえ、後輩ちゃん」


「はい。何でしょう先輩?」


「『るつぼ』ってあるじゃない?」


「ああ、『興奮のるつぼ』だとか言いますね。それがどうしたんです?」


「いやさ、ほら」



『るつぼって何?』



「るつぼ……るつぼ……『つぼ』って言ってますし、壺に関係あるんじゃないですか?」


「じゃあ“る”は?」


「うーん……。こういう時は漢字に直してみるのが定石ですよ」


「今では読みさえわかれば変換あるいは『○○ 漢字』で検索できるものね。便利な時代だわ」



坩堝るつぼ



「うわ何かキモいの出た」


「えっ、何そのセリフエロい」


「うわ何かキモいの出た」


「こっち見ながら言わないで! 先輩泣くよ!?」


「自分がJKだって設定忘れないでくださいね」



『で、坩堝って?』



「『坩』が土製の壺。『堝』が金属を溶かすための容器だそうですよ」


「つまるところ溶鉱炉ってことかしら」


「それだと語弊がありますね。あくまでも壺、容器であるみたいです」


「高温になって溶けた金属が流れ出ちゃうのを防ぐのね」


「身近な事で言うと、電子レンジで温める時に食材を容器に入れておく感じですかねえ」



『興奮の坩堝』



「この語は坩堝の中みたいに激アツって意味だったのね」


「その起源だと結構汎用性高そうですね」


「夏場にエアコン切った車中とか?」


「あー、それかなりますねー」


「強敵を前にして師匠キャラの死」


「良いですよー、坩堝展開ですよー」


「もっと熱くなれよぉ!」


「その人は坩堝どころか太陽レベルだから」



『坩堝の使われる慣用句』



「あっ」


「どうしたんですか? 小林○薬先輩」


「残念ながら筆者の脳内人格である私たちに名前なんて無いわよ」


「突然のメタネタ」


「……そうじゃなくてね、坩堝を使った慣用句をもうひとつ思い出したの」



『人種の坩堝』



「たまに聞きますね。海外旅行者が大勢居て人種の坩堝だー……って」


「意味合いとしては『色々な種が混在している』だそうよ」


「アツ……くはないですね」


「つまり別の側面に由来しているということね」



『The melting pot』



「調べた結果、戯曲が元ネタだそうです」

※戯曲……演劇の脚本・台本。人物の会話や独白、ト書きなどを通じて物語を展開する。また、そのような形式で書かれた文学作品。ドラマ。(デジタル大辞泉より)


「イギリスの作家、イズレイル・ザングウィル(Israel Zangwill、1864-1926)が書いた戯曲『The melting pot』。多民族国家であるアメリカを、様々な人種の特徴が溶けあって新たなひとつのアイデンティティを生み出している(文化多元主義)って捉えたものよ」


「調和だとか融合だとか、結構日本人好みな考え方かもしれません。クリスマスやハロウィンは他国の宗教観を上手く自国の文化に組み込んだ例ですよね」


「固いわねえ後輩ちゃんは。分かりにくい人はドリンクバーで色んな味を混ぜたオリジナルドリンクをイメージして頂戴」


「だいたい酷い味しかできないアレですか」


「そんなことないわ! カルピスコーラは人類最大の発明よ!」


「よくあんな甘ったるいの飲めますね……。ちなみに現在はそれぞれの文化が独立しつつも共存する『人種のサラダボウル(多文化主義)』の方が主流らしいです」


「イズレイルは文化多元主義を、坩堝の中で色々な金属が溶け合って合金になる様に重ねたのね」


「他にも彼は世界初の密室ミステリーと言われる『ビッグ・ボウの殺人』等も書いています。気になる方はぜひぜひ」


「ドリンクバーでも分からない人は『ねる○るねるね』を……」


「これ以上は逆に分かりにくくなるんでやめてください」


「あら残念」



『まとめ』



坩堝るつぼは金属等を溶かす時に用いる容器のことでしたね。そこから転じて高温な様を表す語として使われてもいます。戯曲『The melting pot』では様々な物が溶け合う場の意味でした」


「私も後輩ちゃんと坩堝で溶け合いたいわ」


「一人で勝手にシュワちゃんごっこしててくださいねー」


「I’ll be back !!」

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