第3話:ミドルフェイズ09
◆ Middle09/Scene Player――美裂 ◆
――”ゾーン”深層部。
この一年余り、繰り返し砲撃と爆撃に晒され続けたこのエリアでは、建造物は軒並み破壊され、道路が抉られて土を剥き出しにしている。
軍用車両の走破性か、オーヴァードの身体能力を以てせねば前に進むことさえ困難な地形が形作られていた。
しかも厄介なことに、この地形を利用し建物の影や、道路の穴に潜んだジャームが妨害を行ってくる。
レーラ:「ちっ。この地形に加えて、抵抗も強いときてる。でも、せめてマーリャたちだけでも突入しないと。私たちは援護につく。そっちは突破を最優先に動いて」
イワン:「了解。一点集中で攻撃を浴びせて、穴に飛び込みますよ」
美裂:「全速前進! 何が何でもこじ開けるわよ!」
GM:ここからはFS判定「RZ深層突入」を行うよ。このFS判定は戦闘処理と同時進行になる。(本リプレイでは、FS判定のデータをページ最下部に表示)
FS判定――フォーカスシステムとは、段階的な作業を行うためのルールだ。
通常の戦闘処理と同じような流れの中で、PCたちは判定を行って「進行値」を累積し、「完了値」に到達したら成功となる。
詳しい手順は、サプリメント「インフィニティコード」を参照されたい。
GM:セットアップ時に敵が登場するけど、[退場していない味方ユニットの数×5」のHPダメージが敵に与えられる。これによってHPが0になった敵は、登場できない。
イワン:さて、ユニット数を数えてみましょう。
――ミドル中に「なるべく味方ユニットを多く残したほうがいい」という助言をしたこともあり、ユニット数は合計9体。
登場する予定のエネミーのほとんどはHPが40以下であり、壊滅的被害を受けることに……。
GM:今回は、障害を排して”ゾーン”中枢へ向かうための処理となる。まずは敵の攻撃に晒されながらの進軍だ。判定は<意志>で難易度は8。最大達成値は30、支援判定は【肉体】【感覚】【精神】だ。
一同:確認完了!
GM:では、処理を開始しよう。
◆1st Round
GM:1ラウンド目、セットアップ。敵が出現……するはずが、レーラたちの砲撃や銃撃で吹っ飛ぶ
アンゲリーナ:爆散!
イワン:その様はまるでワイルドハントの如く――。
GM:では武蔵、ハプニング表をロールしてくれ。
今回のFS判定では、専用のハプニングチャートを作成した。
ダイスロールの結果は10。
内容は「このラウンド中、PCが行うあらゆる判定のクリティカル値-1(下限2)」というもので、順調な滑り出しとなった。
イワン:ダメ押しに《戦術》お掛けしまーす。ダイス+8個。
GM:では、マーリャかイワンの手番から。
イワンは元々高い【精神】を生かし、達成値15を叩き出す。進行値は[達成値÷10(端数切捨て)+1]で算出されるため、2点を獲得した。
次はマリアンナの手番だったが、Dロイス「強化兵」で<意志>判定が苦手な彼女は待機を宣言。アンゲリーナにバトンが渡った。
アンゲリーナ:ではリーナいきます(ダイスロール)……23点!(コロンビアのポーズ)
美裂:凄いわね探偵……。
アンゲリーナ:探偵じゃない……名探偵だ!(キリッ)持ち前の反射神経で、敵が顔を出した瞬間に急所を撃ち抜いていくわ。
GM:それではここでイベントだ。
・進行値3:荒廃した市街地が道を阻む。以降の判定を【肉体】難易度8に変更する。
GM:次に立ち塞がるのは戦闘や爆撃で崩壊したノビンスクの街そのものだ
アンゲリーナ:支部長頼みます。
美裂:【肉体】判定行くわよ(ダイスロール)……18! 瓦礫なんて剣圧で吹き飛ばすわ!
GM:この段階もクリア。早いね。では次のイベント――
・進行値6:敵が市街地の屋上やビルの窓から狙ってくる。無用なダメージを防ぐために、道を選択して進む。以降の判定を<情報:ノビンスク>難易度9に変更する。
マリアンナ:ん、これならまだ何とか。「コネ:要人への貸し」を使って(ダイスロール)17点!
美裂:さすマリ!
GM:進行値2点を獲得ですね。
マリアンナ:邪魔な壁を硝子に変換し、破壊して道を作っていく。「こっちね。ついてきて!」
GM:ここで最後のイベントだ。何が待ち構えているかというと――
先導するマリアンナの後を追う一行が目の当たりにしたのは、黒い鱗に覆われた巨大な体表――
その正体は、世界最大のナイルワニ”ギュスターヴ”すら凌駕する巨大なワニ型ジャームだ!
・進行値9:いよいよ深層中心に近い位置まで来た。巨獣型のジャームが立ち塞がる。ここが最短ルートだ。巨獣型ジャームに攻撃を集中して道を切り開け。
以降の判定を<白兵><射撃><RC><交渉>難易度15に変更する。巨獣型ジャームにダメージを与えて撃破しても進行値が獲得でき、クリア扱いとなる。
GM:巨獣型ジャームを5m先のエンゲージに追加――ただし(黙々とHPを減らすGMの図)
イワン:……あっ。
GM:レーラたちの攻撃でダメージを受ける。フフフ、痛い。行動済みで登場したので1ラウンド目終了。2ラウンド目、セットアップ。ハプニングチャートをどうぞ。
美裂:南無天満大自在天神……(ダイスロール)83!
ハプニングチャートの結果は「このラウンド中、敵は攻撃を行わない。敵がいない場合、最大達成値+10」というもの。
演出上はレーラの面目躍如である。美裂がレーラのファンなので祈りが通じたのだろうか。
レーラ:「戦車前進! こっちが注意を引くわ! 頼むわよ、武蔵!」
美裂:「ありがとうございます! ガンガン行くわよォッ!」
マリアンナ:じゃあ、私から行くわ。《コンセントレイト》《砂の刃》でRC攻撃!
イワン:《支援射撃》でダイス+4個。
マリアンナ:真理の花も宣言して(ダイスロール)……ダメージは48よ。
GM:残りHP20、装甲10……。死にました。
イワンが巨獣の足元にワルサーを撃ち込み、気が逸れた一瞬の隙にマリアンナは硝子片を生成――。
「よそ見は厳禁」とイワンの忠告が飛ぶと同時、硝子片がその巨体に突き刺さり、結晶化していく。
マリアンナ:「ナイスよ一人」
GM:おめでとう。FS判定はクリアだ。道は開けた。しかし――なおも、無数のジャームが追いかけてくる。
レーラ:「このまま進んでも挟撃にあうのは確実、か」
マリアンナ:「……そうね。誰かがここで囮にでもならないと――」
レーラのT-14戦車が、その場で超信地旋回をして敵の集団に向き直る。
それに続いて、隷下のT-90戦車部隊も信地旋回。砲口を後方から迫るジャームに指向する。
彼らをここまで運んできたBMP-3歩兵戦闘車の100mm低圧砲も、BMP-2の30mm機関砲も、B-10装甲兵員輸送車の12.7mm重機関銃Kordもそれに倣う。
レーラ:「……私たちが、ここで敵を食い止めるわ。このまま目標へ向かいなさい。指揮は武蔵に任せる。いいわね?」
美裂:「……わかりました。総員、目標は最深部! このまま駆け抜けるわよ!」
イワン:「了解」
レーラ:「……マーリャ」
迫る敵集団を見据えたまま、背後のマリアンナを呼び止める。
マリアンナ:「何よ。遺言以外なら聞いてあげる」
レーラ:「情報漏洩の恐れから今まで黙っていたけど……不死身のシームボルを……トリグラフを倒せる可能性があるのは、あなたの能力よ」
マリアンナ:「……私? 何故?」
小首を傾げるマリアンナ。
レーラ:「いい? トリグラフは、擬似プライメイトの能力を運用するために、複数の形態を使い分ける必要がある。一つの形態に機能を集中させるのは、負荷が大きかったってことね。そして、トリニティドライブは連環した3種の人工クリスタルを順繰りに動力源にするんだけど……イワンに埋まっていた分は、回収が不完全で、性能不足なのよ」
マリアンナ:「そういえば、アイツがそんな事言ってたわね。それで?」
レーラ:「恐らくトリグラフの形態の中で著しくレネゲイド出力の低いものがある。それを狙ってあなたの最大限の攻撃をぶつけてやれば……」
レーラは、そこで一拍の間を置いた。心して聞くように、と。
レーラ:「トリグラフのトリニティドライブを……つまり人工レネゲイドクリスタルを”ただの硝子”に変えてやることができる!」
マリアンナ:「……なぁるほどね」
実に愉快そうに笑む。
マリアンナ:「いいじゃない。最高にクールよ、それ! ……わかったわ」
レーラ:「……じゃあ、行きなさい。そして、全員生きて還ること! これは命令よ!」
T-14戦車の125mm砲が、敵集団の先頭に榴弾を撃ち込む。
他の装甲戦闘車両も、それを皮切りにありったけの火力を発揮し始める。
恐らく、ノビンスク最後となる激しい防衛戦が始まった。
マリアンナ:「
アンゲリーナ:「……ご武運を」
簡素な言葉を投げかけ、彼らはレーラたちに背を向けて走り出す。
背筋にじんと響く爆音が段々と遠ざかっていく。
マリアンナ:「……まさか、こんな形であの時の約束を果たすことになるとはね。あの賢者の石は、あんたの一部とも言えるわけだし」
イワン:「色々と、複雑だけどね……」
マリアンナ:「形は違うけれど、それで約束を果たす……という事でいいかしら一人」
イワン:「いや、改めてお願いしよう。僕を……僕を、君の一部にしてくれ。アンナ」
じっとマリアンナと視線を絡め、静かに願う。
マリアンナ:「……わかったわ。その願い、確かに承った。あとで後悔しても、聞かないんだからね?」
イワン:「……後悔なんて、死ぬほどしたよ」
マリアンナ:「フフッ、そう。じゃあ、今度は後悔しないように、ね?」
前を進む美裂が倒壊した建物を一閃して道を切り開くのを認めると、ふたりは同時に走り出す。
”ゾーン”の中枢、すべての元凶はすぐそこに待ち構えている。
決戦のときだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【FS判定】
名称:RZ深層突入
終了条件:3ラウンド経過
判定:<意思>
難易度:8
進行値カウンター:~13
最大達成値:30
経験点:3点
支援判定:【肉体】【感覚】【精神】
内容:市街地の各所から激しい攻撃が飛んでくる
余力を残すために反撃をせず、耐えて前進するしかない。揺ぎ無き意思を以って進軍せよ。
専用ハプニングチャート
01~30:レーラの適切な指示がキミたちを導く。このラウンド中、PCが行うあらゆる判定のクリティカル値-1(下限2)。
31~60:リディアの援護射撃。エネミーを2体まで選んで戦闘不能にする。敵がいない場合、PC全員のダイス+5
61~90:レーラの戦車が敵を引き付ける。このラウンド中、敵は攻撃を行わない。敵がいない場合、最大達成値+10。
91~99:敵の激しい抵抗。PC全員に2d10のHPダメージ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・イベント
進行値3:荒廃した市街地が道を阻む。
以降の判定を【肉体】難易度8に変更する。
進行値6:敵が市街地の屋上やビルの窓から狙ってくる。無用なダメージを防ぐために、道を選択して進む。
以降の判定を<情報:ノビンスク>難易度9に変更する。
進行値9:いよいよ深層中心に近い位置まで来た。巨大な獣型のジャームが立ち塞がる。
ここが最短ルートだ。巨獣型ジャームに攻撃を集中して道を切り開け。
以降の判定を<白兵><射撃><RC><交渉>難易度15に変更する。ただし、攻撃できる武器やエフェクトがない技能は判定に使用できない。
なお、巨獣型ジャームにダメージを与えて撃破しても進行値が獲得でき、クリア扱いとなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます