第2話:ミドルフェイズ08(2/2)
こうしてマリアンナ・アレクサンド=ライトは、UGNの一員となり、希望通りノビンスク支部へ配属された。
だが、彼女はUGNの掲げる理想に迎合したわけではなかった。
彼女を突き動かす理由はただひとつ――。
GM:回想を終了。RHOを公開してくれ(※リプレイではこのページの最下部に表示)
マリアンナ:「……これが、私が奴を追う理由のすべてよ。これで満足かしら、”始末屋”さん?」(RHOを公開しながら)
アリサ:「……そして”レッドラバー”は、ノビンスクに身を隠し……お前を殺すように依頼してきた、というわけか。どうやら、決まったようだな。トツカを使う相手が」
マリアンナ:「……」
アリサ:「お前を始末する仕事はキャンセルだ。そして……誇りなきオーヴァードには、粛清が必要だな」
マリアンナ:「……そう。お眼鏡にかなったのなら何よりよ」
無駄な
アリサ:「……ああ、そうだ。対価に、情報を聞かせるんだったな」
マリアンナ:「ええ、聞かせて頂戴。アンタのお話を」
アリサ:「実はな、あたしが聞いた”レッドラバー”の姿と、今のあいつの姿は、全く異なる。オールバックの男だって聞いてたのに、別モンだ」
アンゲリーナ:「――――!?」
吃驚するアンゲリーナ。”始末屋”の情報が確かならば、これまでの前提が覆る。
アリサ:「調べてみたほうがいいかもな。特に、UGNを騙していた軍人さんはご執心と聞くし」
マリアンナ:「……成程ね。確かに面白い情報だった。感謝するわ。おかげで、そこの頭でっかちと殺し合いをやらなくて済みそうだもの」
アリサ:「まっ、どうするかはそっちの勝手だが、いずれにせよあの戦車みたいな軍用車両への対抗策は準備したほうがいいぜ。ロケットランチャーでもありゃいいんだが」
マリアンナ:「ロケットランチャー……ね、確かに」
アリサ:「あるいは、お前の能力なら自力で突破できるかもしれない」
マリアンナ:「……私? なんでよ?」
アリサ:「あの車両――”テルミナートル”は、T-72戦車の車体を流用していてな……」
彼女の説明によれば、T-72戦車の複合装甲にはガラス繊維が積層されているため、マリアンナの能力ならばそこから崩壊を誘発させられるという。
ガラスと聞くと脆弱なように聞こえるが、鋼鉄よりもユゴニオ弾性限界が高く、HEAT弾が引き起こす装甲の塑性流動を阻害できる。こうした性質の異なる複数の装甲材を組み合わせたのが現代戦車の装甲――複合装甲なのである。
シナリオのデータ上はアイテム「ロケットランチャー」による攻撃か、マリアンナの《クリスタライズ》が命中することで、”テルミナートル”の無敵が解除され装甲値が低下する仕組みになっている。
GM:はい、GMです。アリサの話を元に、情報項目を追加しました。
▼”レッドラバー”の正体について <情報:FH>13
GM:今出てる情報項目がすべてだよ。
イワン:なるほど。なるほど。
アンゲリーナ:これは情報を抜くしかないわね。
マリアンナ:確認完了。大仕事ね。
美裂:情報収集がんばりたいけど侵蝕率的に一回お休みしたい……。(←侵蝕率102%)
アンゲリーナ:支部長は休んでもいいと思うの……。
美裂:すりゅ……。(←28歳)
イワン:回想シーンの話を聞いてる間コッソリ抜き取ってたって事で、「何かの実験データ」を調べに行きましょう。
GM:どうぞ。
イワン:もちろん《生き字引》、技能は<情報:軍事>で。(ダイスロール)13、成功。
GM:情報開示。
▼何かの実験データ <情報:軍事、FH>10
何かの実験の記録らしい。断片的な情報に留まっている。
201X年 人工レネゲイドクリスタル適合実験――結果
検体E01~E10のうち、E02デマントイドのみ適合。残りはジャーム化もしくは死亡。ジャーム化した検体は冷凍保存して備蓄。
検体E11~E20はすべて適合失敗によりジャーム化もしくは死亡。ジャーム化した検体は冷凍保存して備蓄。
検体E21~E30のうち、E27フナマタのみ適合。残りはジャーム化もしくは死亡。ジャーム化した検体は冷凍保存して備蓄。
検体E31~E40のうち、E39イリイーンのみ適合。残りはジャーム化もしくは死亡。ジャーム化した検体は冷凍保存して備蓄。
適合検体は、以降「選抜検体」と呼称。トリグラフ計画において、トリニティドライブ製造に使用する。
イワン:「ッ!? ……」
”フナマタ”の名前が記された書類を、慌てて丸めて仕舞い込む。
だが耳聡い彼女は、それを聞き逃さない。
アリサ:「おい、何してんだ」
イワン:「おや、如何しました”始末屋”。まさか私も粛清対象に選ばれているのでしょうか」
アリサ:「……誤魔化すな。何を隠した」
マリアンナ:「どうしたのよ」
イワン:「……実験データを漁っていたらとんでもない事実が判明しまして、つい咄嗟にね」
くしゃくしゃの紙を広げて見せる。
アリサ:「人工レネゲイドクリスタル適合実験……ねぇ。実用化できてたのか、あれ」
マリアンナ:「はぁ!? 人工レネゲイドクリスタルですって!? いや、そんなわけない!! あれは……あれはッ!!」
人工レネゲイドクリスタルは、”ジェムストーン計画”の最終目標。
数多の犠牲の果てに、何も掴めなかった無為で無意味な行い。そのはず、だった。
マリアンナ:「……あの実験は大した功績も残せずに頓挫した筈よ! よしんば仮に生産に成功していたとしても、適合者だなんて……そんな……」
アンゲリーナ:「マリアンナ。呼吸を深く、ゆっくりと」 肩に手を置く。
マリアンナ:「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
脳裏を過ぎる過去のトラウマ。彼女は震える体を自ら抱きしめながら呼吸を整える。
その一方で、意外な反応を示すのが――。
イワン:「いや素晴らしい功績だ。コードウェル博士が聞けばどのような称賛を送ってくれるのか……まったく以て、反吐が出ますね」 手近な机を蹴る。ガンッ!!
美裂:「落ち着いて。取り乱すのもわかるけど冷静に」
イワン:「僕は落ち付いてますよ?」
美裂:「隠しきれてないわよ。いいから深呼吸して」
場が、本当の意味で落ち着きを取り戻すのには数分を要し、それを見計らって彼女が切り出す。
アリサ:「まっ、そっちの突っ込んだ事情はあたしには関係ねぇ。けど、支部長さんよ」
美裂:「なんでしょうか。”始末屋”さん?」
アリサ:「ここはひとまず”休戦”と行きたい。あたしの目的とそっちの目的は、特にバッティングするもんじゃない――とどめも譲ってやる。いいか?」
そう言う彼女の目は、まったく油断の色を宿しておらず――言外に「気に入らなければ相手になる」と告げていた。
イワン:「……いや、いいや、願ってもない提案だ、”味方”が増えるのは嬉しい」
美裂:「うちの子たちに手を出さないっていうならとりあえずはいいわ。別にここでやりあうつもりなんて毛頭ないしね」
アリサ:「言っておくが、馴れ合う気はないからな」
美裂:「それで結構。あなた、ずいぶん血の気が多そうだからお友達になんてなったら大変でしょうしね」
GM:ではこれで全員の行動が終わったので、そろそろシーンを切りましょうか。
資料を纏めて、次の端末に向かう。
その途中、マリアンナはイワンを振り返った。
マリアンナ:「アンタ、本当にあいつが”味方”だなんて思ってないでしょうね?」
イワン:「ハハッ……彼女の目には義しか見えない。互いの利の為、せいぜい協力すればいいでしょう?」
マリアンナ:「……」
イワンの柔らかく、穏やかな様子に変化はない。
なのに――彼の表情から、何か黒いものが滲み出る気配を、マリアンナは感じ取っていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●PC②用Rハンドアウト
ロイス:”レッドラバー” 推奨感情 P:任意/N:殺意
公開条件:以下の条件を満たす。もしくはGMの指示
①”レッドラバー”の痕跡・情報を見つけた。
②PC2人以上にロイスを取得し、かつポジティブ感情が表になっている。
③上記の条件を満たした上で、その対象がすべてシーンに登場している。(他PLの協力を得て、事情を話すシーンを作成しても良い)
キミの本当の目的は、”レッドラバーを殺す”ことだ。そのためにキミは、裏切り者になった。
――かつて、キミのいたFH支部は古い任侠的気質を持ち、堅気には手を出さず、配属されてきたキミを家族同然に受け入れる……そんな場所だった。
普通のFHの態度や方針からすれば”生温い”と言えるかもしれない。それでも、キミはその環境が嫌いではなかった。
だが……あの日、全てが奪われた。
傷つき、帰還してきたFHチルドレンの体に爆弾が埋め込まれており、それが炸裂したのである。
セルで生き残ったのは、ただキミ一人だけ。
キミは、手がかりを求め――そして、FHエージェントの”レッドラバー”という名前に行き当たったが、ノビンスクで行方不明となっていた。
しかも、現在のノビンスクは軍とUGNによって封鎖されている。
悩んだ末に、キミは裏切り者になることを決断した。仇を討つため、本心を隠してUGN入りしたのだ。
そして、今のキミに至る。
【特殊効果】
あなたはPCにロイスを取得する際、ネガティブ感情を表にして取らなければならない。
この効果はRハンドアウトが公開された時点で取り消される。
【これまでに得たレッドラバーの情報】
・FHで兵器開発を行っていた。同じFHからも非難を受けるような研究をしていたようだ。
・エグザイルを応用した肉体埋め込み型の爆弾を開発した。埋め込まれた相手には星型のアザがある。
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